雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

Doblogが学ばなかったこと

長期的には皆死ぬように、どんなサービスもいつか終わる。会社ごと終わるときもあれば、採算に合わず事業から撤退することもある。だから企業が経営判断でコミュニティ・サービスから撤退すること自体は仕方がない。だがDoblogは今からでも遅くないから、グループへの風評リスクを最小限に抑えた撤退戦略を考えた方がいい。

復旧作業の終了を受け、今後のDoblogについて検討した結果、Doblog開設時の目的である、ブログシステムを構築するための技術的知見、およびコミュニティサービスを運用・運営するためのノウハウの蓄積については十分に達成できたものと考え、サービスを終了するという判断をいたしました。

無償だから、実験だから、データが消えても構わない、リンクが死んでも構わない、登録していたRSSフィードが死んでも構わないと考えたのだろうか。これから企業情報システムでもSaaSやクラウドの隆盛で課金モデルが多様化しようというご時世に、Doblogにホストしている2000〜3000人だけでなく、その数百倍はいる読者に対して「私たちは予告なくサービスを何ヶ月も止めた挙げ句、全てのデータは復旧できず、唐突な撤退を表明する会社です」と宣伝することの風評リスクは考えなかったのだろうか。
サービスが無償であれ有償であれ、データは利用者のものである。そしてデータとはビット列でダウンロードできるか否かではなく、これまで通り検索から辿り着けるか、リンクを辿れるか、といった文脈に大きく依存している。だからこそお客様のデータを預かるのであれば事業継続性に関わらず、お客様のデータが生き続けるよう最大限の配慮をした方が良い。
具体的には例えばYahoo!がYahoo Photosを閉鎖した時の対応や、最近だとSONYがEyeVioをスプラシアに営業譲渡したときの対応から学ぶべきではないか。まずは営業譲渡でドメインやサービスを維持できる可能性を模索し、それが難しくとも他社サービスへの円滑なデータ移行をサポートすること等が考えられる。gooはじめブログを引き続き提供するグループ企業はあるのだから、その気になればグループ内で助け合うこともできるはずだ。
吹けば飛ぶベンチャーであれば万年ベータでサービスを立ち上げて、採算が合わないと分かるなり撤退するなり会社を畳めばいいが、名の知れた会社でやる場合には会社の本業を含めた信頼を損なうことがないよう、損益に見合わない損害賠償リスクを負うことのないよう、リスクを管理する必要がある。費用構造や信頼性確保のための追加コストを考えると小回りの効くベンチャーと比べて大きなハンディとなるが仕方ない。
サービスを終了する理由についてブコメ界隈では嘘とか言い訳と書かれているが当人たちに悪気はないのだろう。後知恵ではあるが、もう少し配慮して利用者目線のアナウンスと幕引きを考えれば火に油を注ぐことにはならなかった。重箱の隅を突けばデータを失わない構成で採算を取ることも含めて「ブログシステムを構築するための技術的知見」だし、システムトラブルがあっても利用者への迷惑を最小限に抑えるのが「コミュニティ・サービスを運用・運営するためのノウハウ」だろうから、何がどう「蓄積については十分に達成できた」と結論づけたのか興味深いところではある。
この不景気でDoblogに限らず数年前のWeb 2.0の掛け声に踊って立ち上げたサービスも優勝劣敗が明らかとなって、どう考えても投資を回収できないので出血を止めたいと考えているIT企業は少なからずあるのではないか。
Webサービスが運用保守にカネがかかり続ける上に利用者から請求できないのは、消費者向けWebサービスに限らず企業向けSaaSやクラウドも同様で、所有からサービスへのシフトが進めば進むほど、利用者に迷惑をかけず風評リスクを回避した不採算サービスからの撤退戦略は事業計画の勘所となるだろう。
今からでも遅くはないからDoblogは上手にダメージ・コントロール・ダンスを踊ることを考えた方がいい。それは必ずしも既にうんざりさせられている利用者や閲覧者のためではなく、トップマネジメントがSaaSやクラウドの重視を表明しているグループへの風評リスクを最小化するために必要な投資ではないか。うまくやればDataPortabilityの実現へ向けたノウハウ蓄積を図ることもできる。

Yahoo Photosのユーザーは写真をFlickrに移行することができる。またGarlinghouse氏によると、Yahoo Photosの既存ユーザーが必ずしもFlickrを好むとは限らないため、ShutterflyやKodak Galleryに写真を移行するオプションも提供する予定。

2007年4月より運営してまいりました動画共有サービス“eyeVio”(アイビオ)につきまして、2009年5月29日(金)12:00(正午)をもちまして、ソニー株式会社による運営を終了し、高いアプリケーションプラットフォーム技術を有する株式会社スプラシア(http://www.sprasia.com/)による運営に変更となり、新たに“eyeVio”サービスがスタートする運びとなりました。