大手ゲームメーカー、ゲームの同性愛要素への抗議に屈せず


同性愛者のキャラクタが登場する作品について大量の抗議を受けた大手ゲームメーカーEA(エレクトロニック・アーツ)が、「作品を検閲する気はない」「ゲームに同性同士の恋愛関係というオプションはつけるが、フォーラムでのヘイトスピーチは許さない」と語っています。

詳細は以下。

EAが2007年に買収したBioWare(バイオウェア)のゲーム、『マスエフェクト3(Mass Effect 3)』や『Star Wars: The Old Republic』には同性愛者のキャラクタが登場します。EAによると、同社にはそのことについて抗議する手紙やメールが何千通も届いており、その多くはゲイキャラを引っ込めなければEAをボイコットすると主張しているとのこと。にもかかわらず、同社はゲームのLGBT要素を検閲するつもりはないそうです。

同社のJeff Brown副社長が、非常に重要なことを言っています。


「EAのゲームはどれもESRB(エンターテインメントソフトウェアレイティング委員会)の内容説明が表示されているので、ゲームの中身に驚く人がいるとは信じがたい。これ(訳注:EAに抗議が殺到していること)は子どもを守ることについての話ではなく、政治的ないやがらせに関する話なんですよ」
"Every one of EA's games includes ESRB content descriptors so it's hard to believe anyone is surprised by the content. This isn't about protecting children, it's about political harassment,"

今オフィシャルサイトで実際に調べてみたところ、『マスエフェクト3』のレイティングはM(Mature)17+でした。『Star Wars: The Old Republic』は、T(Teen)でした。エンターテインメントソフトウェアレイティング委員会 - Wikipediaによると、まずM(Mature)17+というのはこういうレイティングです。


M (Mature):ESRBレイティング別対象ソフト一覧・M (17歳以上)
対象年齢は17歳以上とされ、年齢が満たない場合、購入には保護者の同意が必要となる。強い暴力表現や非直接的な性的表現などが含まれている場合。

で、T(Teen)はこう。


T (Teen): ESRBレイティング別対象ソフト一覧・T (13歳以上)
対象年齢は13歳以上とされ、年齢が満たない場合、購入時には保護者の同意が必要となる。「E」・「E10+」区分より若干表現の度合いが強い。何らかの暗示的な物が含まれている場合もある。

EAへの抗議には、同社がLGBT団体から圧力を受けているのだとか、子どもたちを強制的にLGBTテーマに曝しているのだといったものがあるのだそうです。しかし、上記の通りこれらはそもそも子ども向けのゲームではないし、LGBTコンテンツも強制的なものではなく、単に実生活の性的指向を反映できるようにしたオプションにすぎないとのこと。また、公式フォーラムでLGBT要素に反対する書き込みが消されるという苦情もあるとのことですが、実際にはヘイトスピーチについての規約違反で消されているだけなんだそうです。以下、ふたたびBrown副社長のことば。


「EAはいかなる団体からもゲームにLGBTのキャラクターを入れろという圧力を受けていません。しかしながら、当社はLGBT団体と面会したり、ゲームの内容やオンラインフォーラムでのハラスメントについて討議する業界フォーラムを支持したりはしています。要するに、当社はたしかにゲームに同性同士の恋愛関係のオプションはつけますが、当社のフォーラムでのヘイトスピーチは許容しないということです」
"EA has not been pressured by any groups to include LGBT characters in our games. However, we have met with LBGT groups and sponsored industry forums to discuss content and harassment of players in online forums. In short, we do put options for same-sex relationships in our games; we don't tolerate hate speech on our forums,"

こういう話題を見ていつも思うのは、「子ども」を持ち出してLGBTコンテンツを下げろと要求する人は子どものことなんて考えていないということ。まず「ゲームにLGBT要素を出してはいけない」という結論ありきで、それから理由をくっつけてるんでしょうね。性交同意年齢が16〜18歳の米国で、17歳以上対象(レイティングM)のゲームで今さら「非直接的な性的表現」を見せたからって何がどう悪影響になんのよ。「ヘテロの性的表現はいいが、LGBTの性的表現はダメ、そんなの見たらLGBTになっちゃう!」っていう理屈は通りませんよ、だってあたしらLGBTは生まれたときからシスヘテロの性的表現に「強制的に曝され」続けているにもかかわらず、シスヘテロになってないんですからね。EAの毅然とした態度に、ただ拍手です。