かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

大学図書館所蔵率調査続編-ライトノベルはどこにもない、ミステリーはどこにでもある


前回のエントリはこちら:ケータイ小説はどこの大学にあるのか? -あるいは、ブックハンティングの副産物? もしくは、GO! WEST- - かたつむりは電子図書館の夢をみるか


「ケータイ小説を所蔵している大学図書館を『所蔵図書館マップ』を使って調べる」という企画を昨日やったわけですが。
その中で、自分はこんなことを言いました。

しかしやっている最中にサーバ落ちたのかアクセスできなくなってしまったので(悲)、本当はライトノベル編もやりたかったけど今回はとりあえずケータイ小説編だけでやってみようと思います。

今日あらためてやったら接続出来たので*1、早速、昨日の補完としてライトノベルについても調べてみることにしました。
さらに、ライトノベルやケータイ小説同様にエンターテイメントとしての性質を持っていそうなもの、ということでミステリー小説についてもあわせて調べてみます。
ケータイ小説のときは「関東には全然ない!」という地方間での格差がうかがえたわけですが、さて今回はどんな結果になるやら。


ライトノベル編

今回、所蔵を調べるライトノベルを選ぶにあたって使ったのは以下の3つ。

1.カテゴリ-ライトノベル | KADOKAWA

とりあえずざっと傾向を見るために使います。
対象は各部門で受賞した5作品。

2.ライトノベル書店売上ランキング

『このライトノベルがすごい! 2008』に掲載された書店売上ランキング(読者による投票で決められる「作品部門ランキング」とは別物)。
最近出版されたライトノベルの所蔵傾向を見るのに使います。
対象は上位10作品、ただし同一シリーズのタイトルが複数掲載されている場合には最初の1タイトルのみ対象とし、残りは飛ばしていきます。

3.このライトノベルがすごい! - Wikipedia

上のランキングだと最近出版された作品がメインになるので、Wkipediaに掲載されているこれまでの作品部門ランキング第1位作品(シリーズ)についても所蔵を調べます。
本当なら『このライトノベルがすごい!』自体を参照すべきところですが、まあご容赦。


で、結果はそれぞれ以下の通りと相成りました*2。

1.ライトノベルアワード2007

「らぶコメ部門」受賞作:『とらドラ』

とらドラ!1 (電撃文庫)

とらドラ!1 (電撃文庫)

  • 所蔵状況
地方 全数 4大 所蔵率*4
北海道 0 0 0.0%
東北 0 0 0.0%
関東 0 0 0.0%
中部 0 0 0.0%
è¿‘ç•¿ 0 0 0.0%
中国 0 0 0.0%
四国 0 0 0.0%
九州 0 0 0.0%
沖縄 0 0 0.0%
合計 0 0 0.0%
「学園部門」受賞作:『鋼殻のレギオス』

  • 所蔵状況
地方 全数 4大 所蔵率*5
北海道 0 0 0.0%
東北 0 0 0.0%
関東 0 0 0.0%
中部 0 0 0.0%
è¿‘ç•¿ 0 0 0.0%
中国 0 0 0.0%
四国 0 0 0.0%
九州 0 0 0.0%
沖縄 0 0 0.0%
合計 0 0 0.0%
「アクション部門」受賞作:『レンタルマギカ』

  • 所蔵状況
地方 全数 4大 所蔵率*6
北海道 0 0 0.0%
東北 0 0 0.0%
関東 0 0 0.0%
中部 1 0 0.0%
è¿‘ç•¿ 0 0 0.0%
中国 0 0 0.0%
四国 0 0 0.0%
九州 0 0 0.0%
沖縄 0 0 0.0%
合計 1 0 0.0%
「ミステリー部門」受賞作:『文学少女と死にたがりの道化』

  • 所蔵状況
地方 全数 4大 所蔵率*7
北海道 0 0 0.0%
東北 0 0 0.0%
関東 0 0 0.0%
中部 2 0 0.0%
è¿‘ç•¿ 1 1 0.7%
中国 0 0 0.0%
四国 0 0 0.0%
九州 1 0 0.0%
沖縄 0 0 0.0%
合計 4 1 0.1%
「ノベライズ部門」受賞作:『モンスターハンター 狩りの掟』

  • 所蔵状況
地方 全数 4大 所蔵率*8
北海道 0 0 0.0%
東北 0 0 0.0%
関東 0 0 0.0%
中部 1 0 0.0%
è¿‘ç•¿ 0 0 0.0%
中国 0 0 0.0%
四国 0 0 0.0%
九州 0 0 0.0%
沖縄 0 0 0.0%
合計 1 0 0.0%

・・・ない。
予想はしてたけど、全然大学図書館に所蔵されてないよライトノベル。
5タイトル中、大学図書館での所蔵があったのはわずかに『文学少女と死にたがりの道化』1冊きりという・・・地方による傾向の差もへったくれもあったもんじゃない。

『このライトノベルがすごい! 2008売上ランキング』

これは若干、あんまりおもしろくないことになりそうだぞー・・・という予感を持ちつつ、続いて『このライトノベルがすごい!』上位10タイトルについて。
しかしここは10タイトルもあるってことでちょっと全部の値を集計するのが面倒なので、とりあえず所蔵図書館マップでの検索結果と所蔵大学のあった地方と大学数のみ。
(同一シリーズで複数タイトルランクインしたものは最上位の1タイトルのみカウント。また、前回の注でも書いたが短大は大学にカウントしない。短大と大学で図書館が共通の場合もノーカウント)

1位:涼宮ハルヒの分裂(asin:4044292094)

 所蔵図書館マップ:http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4044292094
 所蔵大学・・・中部:1、近畿:2、九州:1

2位:彩雲国物語―青嵐にゆれる月草(asin:4044499136)

 所蔵図書館マップ:http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4044499136
 所蔵大学・・・中国:1

3位:キノの旅(10)(asin:4840235805)

 所蔵図書館マップ:http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4840235805
 所蔵大学・・・関東:4、中部:1、近畿:5、中国:2、九州:3

4位:フルメタル・パニック つどうメイク・マイ・デイ(asin:482911911X)

 所蔵図書館マップ:http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=482911911X
 所蔵大学・・・近畿:1

5位:グイン・サーガ(110) 快楽の都(asin:4150308632)

 所蔵図書館マップ:http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4150308632
 所蔵大学・・・北海道:2、関東:1、近畿:2

6位:時をかける少女(文庫新装版)(asin:4041305217)

 所蔵図書館マップ:http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4041305217
 所蔵大学・・・北海道:1、東北:1、関東:4、近畿:6、中国:1、四国:1

7位:灼眼のシャナ(14)(asin:4840237190)

 所蔵図書館マップ:http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4840237190
 所蔵大学・・・近畿:1

8位:今日からマ王!?(asin:4044452172)

 所蔵図書館マップ:http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4044452172
 所蔵大学・・・なし

9位:創竜伝(13) 噴火列島(文庫版) (asin:4062754258)

 所蔵図書館マップ:http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4062754258
 所蔵大学・・・近畿:1

10位:ゼロの使い魔(10) イーヴァルディの勇者(asin:4840117667)

 所蔵図書館マップ:http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4840117667
 所蔵大学・・・なし


5位、6位、9位が「ライトノベル」か否か、というのは怪しいところだが・・・まあ、ライトノベルの定義問題なんてややこしいところは回避したいので、あまり深く突っ込むのはよそう。
いやそれにしてもやっぱ「時かけ」はちょっと違うと思うので勘案しないとして、他については基本的には全然入っていないなあ・・・。
例外的に妙に所蔵されているのは『キノの旅』。
全体で14大学、そしてケータイ小説が全然ないとされていた関東でも4大学が所蔵。
それ以外のタイトルについてはほとんど所蔵がなく、特にやはり関東・東北での所蔵が目立って少ない(東北は『キノの旅』もないのでここまで所蔵1件もなし)。


『このライトノベルがすごい!』作品部門歴代1位受賞シリーズ

最後に『このライトノベルがすごい!』の歴代作品部門1位受賞作について。
本当はシリーズに対して与えられる賞なのだが、今回は各シリーズ第1作についての所蔵を確認。
結果は同じくマップと所蔵地方・大学数のみ掲載。

2005年第1位:涼宮ハルヒシリーズ(涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫))

 所蔵図書館マップ:http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4044292019
 所蔵大学・・・東北:1、中部:2、近畿:5、中国:1、九州:1

2006年第1位:戯言シリーズ(クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス))

 所蔵図書館マップ:http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4061822330
 所蔵大学・・・北海道:1、関東:3、中部:3、近畿:7、中国:2、四国:2、九州:5

2007年第1位:狼と香辛料(狼と香辛料 (電撃文庫))

 所蔵図書館マップ:http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4840233020
 所蔵大学・・・関東:2

2008年第1位:フルメタル・パニック!(戦うボーイ・ミーツ・ガール―フルメタル・パニック! (1) (富士見ファンタジア文庫))

 所蔵図書館マップ:http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4829128399
 所蔵大学・・・中部:2、近畿:1


『クビキリサイクル』(23大学)以外はやはり所蔵少なし・・・『涼宮ハルヒの憂鬱』ですら全部で10大学にしか所蔵がない、っていうんだから、やっぱりライトノベルは大学図書館には基本的に所蔵されていない、って感じ。
いわゆる「ライトノベルレーベル」に属する文庫の類は、まあ基本的には大学図書館には入らない(『キノの旅』は例外。他にも例外があるかも)、って感じか。
一方で、読者に「ライトノベルである」と認識されるものでも、ノベルスなど文庫以外の形式をとっているものについては大学図書館でも、少なくともケータイ小説と同程度には所蔵される様子・・・以前のエントリ(ベストセラーは普通に大学図書館に所蔵されている - かたつむりは電子図書館の夢をみるか)で調べた『空の境界』なんかもそうだったしなあ。
まあ、形態がノベルスの場合、それが「ライトノベル」なのか否かの判断も人によって変わるところなのでやや扱いが難しいが・・・


とりあえずライトノベルについてざっと調査した結論としては、日本全国どの地方にいってもいわゆる「ライトノベルレーベル」から出てるライトノベルについてはほとんど所蔵されていません。
ほとんどのタイトルは所蔵率0.1%未満。
読みたい人は地域の公共図書館にリクエストするか、買って読めって言うことだね。
あるいは立ち読みするとか*9。


ミステリー小説編

ミステリー小説については、ライトノベルと同じく『このミステリーがすごい!』の、2001年以降の作品部門1位受賞作(このミステリーがすごい! - Wikipedia)について所蔵状況を調べました。
で・・・まあ、なんだ。
所蔵冊数云々とかを見る以前に、とりあえずマップを見てほしい。

2001年:奇術探偵曾我佳城全集

 http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4062101890

2002年:模倣犯(マップは上巻)

 http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=409379264X

2004年:葉桜の季節に君を想うということ

 http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4163217207

2005年:生首に聞いてみろ

 http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4048734741

2007年:独白するユニバーサル横メルカトル

 http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4334925103

2008年:警官の血(マップは上巻)

 http://myrmecoleon.sytes.net/map/?isbn=4104555053


数えてられるか!
『模倣犯』とか『半落ち』とか『容疑者Xの献身』とか、普通に日本地図が真っ赤じゃねえか!
『恋空』がどうこうってレベルじゃねえ!


これは完璧に、一般文芸書(特にミステリー要素を含まない文学系)の所蔵状況と対して変わらん。
大ざっぱに地図眺める限りでも、「首都圏」、「名古屋近辺」、「大阪湾近辺」、「北九州」の4か所位にマークが密集しているので、単に都市圏に所蔵数が多いだけでケータイ小説のような地域間の格差がありそうにも思えない。
・・・ミステリーは大学図書館でも市民権を得ていて、ケータイ小説とライトノベル(特に文庫系)には与えられていない、ってことか・・・まあ、なんとなくわかる気はするが、何が違うんだという気もする・・・
特にラノベの場合は一般ランキングで上位には来ないが、ケータイ小説はランキング上位に来ててもミステリーとの間には越えられない壁がありそうだな、これは・・・


もっとも、『このミス』上位作品でも大学図書館の所蔵がさっぱりなのもけっこうあるので、別にミステリーが厚遇されているわけでなく、世間的にヒットする作品がミステリーの中に多いからこういう結果になったんだろう、とも考えられるが。
宮部とか東野とか特に。
ライトノベルがどんだけ流行ってても、ここら辺みたいに広く一般受けする形で普及することはなかなかないからねー・・・
・・・まあ、そうなるとあんだけ文芸ランキング上位に食い込んでるケータイ小説が、なぜ所蔵されないのかって気もしてくるが・・・出版して年が浅いのが多いから、ってだけでもなさそうだしなあ。


まあとりあえず、結論:(ミステリファン以外の間でも)話題になったミステリー小説はわりとどこの地域の大学図書館にもあります。
探している本があったら、大学にないかどうかも確認してみてもよいかもよ?
まあ筑波大には上記タイトルは1つもないけれどね。




ふーむ、しかしこうして見ると、単に「軽めの読み物の有無」程度の意味合いで使う指標としてはケータイ小説は割と使いやすかったんだなあ・・・。
ベストセラーになるような大衆小説(含むミステリー)は、すでに普通に大学図書館の所蔵の対象となっているので指標としては使いづらい(地域で見るよりはそれこそピンポイントに「旧帝大での有無」とかに絞った方が良いかも)し、かと言ってライトノベルだと逆に大学図書館になさすぎて指標として使い勝手が悪すぎる。
ただ、ライトノベルの中でもノベルス版のものは(文庫系に比べれば)所蔵があるので、そこら辺は使えるかも・・・と思ってノベルスもちょっと見てみたが・・・これも入ってるのと入ってないので差があるなあ。
凄い直感的に言って、メフィスト賞受賞するような、この後ミステリーになるかラノベになるか純文学になるかわからんカオスなノベルスが、けっこう売れてるケータイ小説と似たような所蔵状況(ただし地域差は未確認)。
でも世の多くの人に『メフィスト賞受賞作使います』って言ってもなんのことだかわからん気がするので、説明の簡便さの意味でもケータイ小説は便利だねー。


そんなわけで、ライトノベルは大学図書館にはほとんど所蔵がなく、ミステリーは世間的にもヒットしていればけっこうある、といったところ。
・・・しかし、web上でケータイ小説叩いてるラノベ読み的にはこの結果はどうなんだ・・・?
別にラノベくらい自分で買って読むだろうから別にどうでもいいか?


この後はどうすっかなあ・・・学術書とかもやりたいところだが、ランキング上位に上がるような学術書をどう捉えればいいのか・・・よく売れてるってことは入門書である可能性が高く、専門性が上がるほど当然売れなくなる。ってことはケータイ小説の対極にあるような「専門性の高い学術書」の抽出は意外とめんどいわけで・・・
各分野の専門誌の書評でも見るか?
そこまでやり出すとそれはもうブログってレベルじゃねえぞ?

*1:時間帯によって差があるのか、たまにつながらなくなります

*2:表の見方については前回エントリ:ケータイ小説はどこの大学にあるのか? -あるいは、ブックハンティングの副産物? もしくは、GO! WEST- - かたつむりは電子図書館の夢をみるか参照。

*3:webcat版だけにしようかとも思ったんですが、今回は都道府県立図書館や国会図書館の結果も入れてます。・・・でないと、真っ白な日本地図になる本がいくつもあるので(苦笑)ちなみに、赤いマークがWebcat検索結果、黄色は都道府県立や市立等の公立図書館と国会図書館

*4:小数点以下2桁で四捨五入

*5:小数点以下2桁で四捨五入

*6:小数点以下2桁で四捨五入

*7:小数点以下2桁で四捨五入

*8:小数点以下2桁で四捨五入

*9:ちなみにmin2-flyは『ネコソギラジカル』以外の戯言シリーズは全て立ち読みで済ませました。毎日本屋に4時間くらい居た。今はもう、西尾維新は「とりあえず全部買う」作家だけど