均衡財政乗数への根拠無き熱狂

David AndolfattoがブログでシラーのクリスマスNYT論説「Stimulus, Without More Debt」をそう批判している(原題は「Irrational exuberance over the balanced budget multiplier」*1)。


そのNYT論説でシラーは、財政支出を増やすと同時に同額だけ税金も増やせば、均衡財政乗数効果により、財政赤字を悪化させることなく、その額だけ国民所得を増やすことができる、と主張している。


それに対しAndolfattoは、以下の3点を挙げて、シラーの唐突にも映るオールド・ケインジアン的な提案を批判している*2。

  1. 財政支出の用途が適切とは限らない
  2. 国民所得のそういった形での増加が必ずしも社会的に望ましいとは限らない
  3. 税金の歪み効果が無視されている


その上でAndolfattoは、財政支出はやはりプロジェクトごとの費用便益分析やNPV分析に基づいて決められるべきである、と主張している。


一方、Economist's ViewのMark Thomaは、本当は財政支出という正のショックを先に実施し、増税という負のショックを後回しにするのが良いのだが、議会が将来に然るべき増税をすると信じることが難しいので、シラーの提案は次善の策としては良いのかもしれない(赤字拡大を恐れるあまり不十分な規模となった刺激策と同様、政策効果を犠牲にすることにはなるが…)、と評している。

*1:これはもちろんグリーンスパン発言を元にしたシラーの以下の著書のタイトルのもじり。

Irrational Exuberance

Irrational Exuberance

*2:例によって文章はねちっこい悪態がちりばめられている。