「信用して下さい」系メディアと「検証して下さい」系メディア

史上最大の「悪政の自由」を享受した権力システムの崩壊というエントリに次のブクマコメントがありました。

本題と外れますが、はてなブックマークには非公開ブックマークがあるので、はてなの中の人が情報操作しようとすれば、ある程度は可能ではないですか?

そこで、ちょっとスクリプトを書いて、人気エントリの中の非公開ブックマークの割合を調べて見ました。

3日分しか調査してなくてサンプル数は足りないと思いますが、非公開の割合は平均して20%くらい、最大でも35%くらいです。

このブログの人気エントリーに同じスクリプトを走らせて、非公開の率の高い順に並べるとこうなります。

http://b.hatena.ne.jp/entrylist?url=http%3A%2F%2Fd.hatena.ne.jp%2Fessa%2F&sort=count

public total
4570
private total
861
private ratio
15.85
30.30 アンカテ(Uncategorizable Blog) (69/30)
22.73 2的空間+ブログ+炎上耐性の一般教養化=最強! (51/15)
22.34 岩田社長は一日にして成らず (73/21)
21.43 「スモールビジネスの国」と「強者と弱者の国」 (132/36)
20.00 組織には厳しく人には優しい「垣根の無い世界」 (64/16)
19.67 「オオヤケ」的階層化のYahooと「Public」でフラットなGoogle (49/12)
19.39 働かなくても食っていける社会がもうすぐやってくるよ (291/70)
18.75 日本の情報鎖国を映し出す名エントリ5本 (130/30)
18.57 ハヤオの息子学序章 (57/13)
18.52 ようつべ買収はグーグルの世界政府β版=日本政府2.0への序曲 (110/25)
18.42 「再帰的グーグル八分」の時代の「グーグル八分術」の本 (62/14)
18.33 残業代を払えない経営者は無能である (205/46)
18.32 複雑さに金が落ちる時代は本当に終わるのか? (107/24)
17.95 RailsとYouTubeは「自転車創業」だ (64/14)
17.86 <帝国>とは共産主義者が書いたもうひとつの悲観的な「WEB進化論」かも (46/10)
17.86 「あちら側」にハミ出すアイデンティティ (46/10)
17.72 政策的にEXCELからWikiへの置きかえを誘導せよ! (65/14)
17.24 Less is More -- 身軽なことはいいことだ (96/20)
17.11 福岡いじめ自殺の背後に教育行政にからむ公金横領がある可能性 (126/26)
16.87 人はネットの言葉から受ける影響を自己管理できるか? (69/14)
16.67 史上最大の「悪政の自由」を享受した権力システムの崩壊 (100/20)
16.52 TBS「朝ズバ」捏造は「あるある」よりはるかに悪質! (278/55)
16.42 人権を失ったまま生き続けても、そんな命に意味はない。 (112/22)
16.18 「問題 VS. 私たち」で考える人たち (57/11)
15.83 グーグルは世界最大の有限会社である (101/19)
15.71 デュープロセスと2ちゃんねるは限りなく頼りなくても絶対必要なもの (59/11)
15.62 新聞社のエイプリルフールネタには脱帽 (54/10)
15.12 映像表現の「作品」性と「商品」性を制作コスト低下を前提として調和させるには (73/13)
14.75 つたない英語だろうがなんだろうが、彼らにとっては日本語よりも65536倍わかるんだから。 (52/9)
14.66 不二家捏造報道問題: バッシングでつぶしてしまえばテレビ局の勝ち? (99/17)
14.53 永田議員はハメられた! (147/25)
14.29 村上ファンドの破綻から「成長」ということを考える (78/13)
14.29 グーグルの閉店大セール=全てのサービスの有料化 (54/9)
13.89 負けず嫌いの慈善 (62/10)
13.21 Googleがしている明白に邪悪なこと (92/14)
13.04 孫請け制作会社→下請け→キー局→YouTube→Rimo→視聴者、さていらないのはどれ? (60/9)
12.99 この国で政権が取れない左翼政党って何? (67/10)
12.70 わかることから書き始めてわからなくなるまで書く (55/8)
12.50 談合社会の崩壊の中で「お母さん」たちが担っているもの (91/13)
12.07 ホリエモン判決で東大生はどちらに向かうか? (51/7)
11.94 Web2.0の中の無知の知 (59/8)
10.94 マスコミ性善説の瀬戸際 (114/14)
10.47 シフトチェンジのある権力論 (77/9)
10.17 物証がある捏造報道をなおも正当化するTBS井上社長 (53/6)
10.00 mixiが2ちゃんねるを駆逐できない理由 (54/6)
9.75 AppleがJASRACに払った2億5千万の行方は? (250/27)
9.46 検察出身者がライブドア捜査を批判し司法の構造的問題を明解に指摘する本 (67/7)
8.96 Googleの特異な「垂直統合」思想に「文系が悪いメソッド」を見る (61/6)
7.84 Twitter化する公明正大な早漏化社会 (94/8)
5.43 Winnyが残したもの (87/5)

やはり、35%を超えることはなく、だいたい20%以下になるようです。

現在のはてなブックマークで、非公開の部分を利用して運営者がランキングを操作しようとした場合に、操作できる範囲は多く見ても1〜2割で、それ以上に大きな操作を行なうと、このような調査をした時に突出して非公開の割合が高いエントリーになってしまうと思います。

私は、この調査用のスクリプト(使い捨ての小さなプログラム)を1時間ほどかけて書きましたが、慣れている人なら5分から10分くらいで書けるでしょう。これを毎日走らせたり、改造して非公開の絶対数等のランキングを取れば、また違う面から調査することができます。

Web上の目立つメディアは、常にこのような形で、機械+人力の検証を受ける可能性があるわけです。

もし、こういう調査をすることで、メジャーなサイトから何か不正な操作の痕跡を発見できれば、それをブログで報告することで、大きな注目を集めることができるでしょう。

これを一般化して考えると、「注目を集めるサイトの『編集方針』はそれ自体がコンテンツである」ということになるだろう。グーグル八分問題に関心が集まるのも、同様のメカニズムではないかと思う。

そして、「編集方針」がアテンションを集めるのは、大多数のユーザとその「編集方針」が乖離している場合であり、その乖離は、潜在的にまだ生まれぬ競合サイトへのアテンションでもある。「思想的偏向がないオーマイニュース」「より開かれたWikipedia」「八分がない検索エンジン」が常に出番をうかがっている。元のサイトが乖離を持ったままアテンションを集めたら、乖離の無い同種のサイトが立ち上がり、アテンションを奪い取る可能性が高くなる。

(中略)このように、アテンションエコノミーにおいては、「編集方針」に対する潜在的な圧力が存在する。それは、透明度、公開性、ユーザと乖離しないこと、を要求する圧力である。

従来のメディアにおいては「編集方針」の正当性を担保するものは、メディア側の良心と専門性しかなかったわけです。そして、それを疑う者に対して納得させることは難しい、言わば「信用して下さい」系メディアです。実際、不祥事を起こしても事実関係とそれに対応した再発防止策を報告することが無くて、「もうしませんからとにかく信用して下さい」と言うだけのメディアが多い。上記の人気エントリの中にもそういうネタがたくさんあります。

ソーシャルブックマークのような「分解可能」なメディアは、「信用して下さい」と言う必要はなくて、プロセスを開示して「検証して下さい」と言っているのだと思います。

もちろん、「検証して下さい」系メディアと言えども(はてブのプライベートブックマークのように)非公開で検証できない部分は残ります。「分解」できない部分をどこにどのように持つかという「味付け」によって、それぞれのメディアの個性が競われるでしょう。そこにはまだまだ創意工夫の余地があると思います。

ただ大きな流れとして、「信用して下さい」系メディアから「検証して下さい」系メディアに、権威が移行しつつあるのは間違いありません。そしてそれと同期して、その背後にある権力のシステムが動揺している、ということではないでしょうか。

たとえば、これなんか、最近はてブに関連ネタがたくさん出て来ていますが、なぜ大手マスコミが報道しないか不思議です。

ネットでも従来メディアでも、こういう不可解な「編集方針」が見過ごされることはなくなっています。アテンションが「編集方針」を「分解」していき、「分解」できない特異点を見つけると、そこにはさらにアテンションが集まるわけです。

アテンションを主体として別の言い方をすれば、「僕たちはURLの無いものはもう信じない」ということでしょうか。

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