唯一の公式liveアルバム。口煩いSteely Danファンから文句を言われる本作、まずはジャケット。
『The Royal Scam』以前の混沌調に戻ったと思えば特段変でもなく。このゾンビは10曲目「Sign In Stranger」歌詞からのインスパイアかとも私は考える。
次に選曲。ここまでのキャリアから万遍無くセレクトするとまあ妥当なところで。あれがないこれがないと言いたくなる気持もわかるけども、
「Deacon Blues」「Hey Nineteen」「FM」も入れてたら1曲1曲が長いだけに後期の曲ばかりになり、それは彼らの望むところではないのだろう。
ただ、ソロとはいえ「I.G.Y」が入っていたら一般受けはグッと上がっていたとは思う。この辺はプロデューサーDonald Fagenの判断で他者を立てるというか、
Gary Katzプロデュースだったらまた様子は違っていたかも。「Book Of Liars」でのWalter Beckerの歌は世間がいうほど悪いとは思わない。
本作の弱みは、ブート盤や非公式CDで聴ける生のフルセット音源と比べて演奏の色気・しなやかさが、どの曲がというのではなくトータルで失われている点。
音楽誌の評で使われるような表現をするならば、「息苦しさ」「ガチガチな音の壁を構築した」ような印象を受ける。
本作は1曲ごとに収録日が異なるが、「Green Earrings」「Book Of Liars」「Third World Man」が93年9月であとは全て94年8~9月の録音。
この94年の際にドラムがPeter ErskineからDennis Chambersへ、ギターがミュージカル・ディレクターDrew ZinggからGeorg Wadeniusに交替。
多く流布している93年の生音源を聴き込んでしまった人には少々違和感はあるだろう。
しかしliveとしての魅力を削いでしまった原因はそこよりも、82年『The Nightfly』を出した後にアナログに替わるデジタルの時代が訪れて、
ツール変化の対応に試行錯誤するも彼らとて昔のような音が出せず、本作しかり『Two Against Nature』 までは緻密過ぎるサウンドに陥ったのではと想像する。
普通の感覚でみれば全然良いliveアルバムなのは言うまでもなく、繰り返しになるが未加工フルセット音源があまりに素晴らしいので実にもったいない。
彼らは狭いスタジオ・オンリーのミュージシャンでは決してない。本盤は06年の「Forever Young」シリーズ・リイシュー。ピクチャー・レーベル仕様。