宝のスピーチ

このスピーチ、すばらしかった。。(追記:公開期間は終了したようです)

 → “孫正義 LIVE 2011”


ソフトバンクの孫正義氏が先日、2011年の新卒採用説明会で行ったスピーチのustream録画です。 2時間ちかい長いスピーチですが、小学校5,6年生か中学 1年生くらい、義務教育の間に全員に見せるべきビデオだとさえ感じました。

スピーチの公開期間は終わりましたが、聞きながらメモをとったので書いておきます。

また、下記の本の内容はスピーチに近いです。

志高く 孫正義正伝 新版 (実業之日本社文庫)
井上 篤夫
実業之日本社 (2015-01-31)
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以下は、私の個人的メモです。孫社長の言葉の他、自分が感じたこと、考えたことをまぜて書いてます。ご注意下さい。


<退路を断ちたい>

15歳の時に1ヶ月語学留学したアメリカで強い衝撃をうける。(当時1972年の日本とアメリカでは相当の格差があったでしょう)翌年、高一の一学期で高校を退学して渡米。校長先生が「退学ではなく休学して行ったらいい。1年行ってみて、退学するのはそれから考えてもいいことだろ」と言ってくれた。孫氏は「いや退学していきます」と答えた。

なぜ?

「自分は弱いから、アメリカで英語もわからず一人で大変だったら、戻るところがあれば戻ってきてしまう。“退路を断たないと困難に立ち向かえない”、だから休学ではなく退学して行きたい。」


「退路をたたないと困難に打ち勝てない」

凄すぎ。

「リスクヘッジをしていけ」という“師”である高校の先生に、「リスクヘッジをすると、勝てないのですよ」と言った16歳。もっといえば「リスクヘッジをするから勝てない」のだよね、多くの人は・・


<登りたい山を決める。そうしたら人生の半分が決まる>

・登りたい山、とは、「人生で達成したい志」ということ。

・登る山を途中で変えるのは時間が無駄

・登る山を決めずに歩くのは“さまよっている”のと同じ

・一生懸命歩くだけではだめ。みんな一生懸命歩いている。大事なのは、どの山に登るか決めて歩いているかどうか。(←「オレは一生懸命やっている」ではダメだということ)

・登る山を早く決めることが大事。決めるのが遅くなると、人生の中で、その山に登ることができる可能性(志を実現できる可能性)が減ってしまう。人生は一回しかない。早く志を決めた方が(者が)強い。


<志:何を成すために自分は生まれてきたのか、生きているのか>

一生をかけるにふさわしい仕事を探すために、40以上の事業を考えて検討した。多くの人の役に立つことは何か、人がやっていないのはどれか、一番になれるのはどれか、継続して自分の好奇心や意欲をもてる仕事はどれか、儲かるのか、と毎日それだけを考えた。「何をやって生きるか」を考えつくした。

多くの人々に役立つことで、常に何か技術革新がある業界じゃないと、自分の心が熱くならない。情熱がさめてしまう。冷めない情熱を一生持ち続けられる、それって何だろうと考えた。

そして、「デジタル情報革命を起こす」のが自分の志だと確信した。


<勝負師>

この人は勝負する人だ。退路を断つのと同じ。賭ける。負けた時のダメージをできるだけ少なく、とは考えない。勝った時に一番でかくと考える。

最初に日本で作った会社の資本金1000万円の使い方は、800万円で大阪のエレクトロニクスショーに参加、200万円でソフトカタログを作った。「ソフトバンクがなにをできる会社か」を分からせる資料を作って、ビジネスショーにでてアピールする、それだけに資本金全部を投入

→1年後に30億円の売上になった。

その後のM&Aもほぼすべて同じ。「ここだ」と思った分野に、会社の規模に匹敵する資金を投入する。


<地図とコンパス>

勝負の一つ。アメリカのコンピューター関連の見本市、コムデックスの運営会社を買収。あと、同分野の情報誌ジフデービスにも資本を入れる。これを孫氏は、「宝を見つけるための地図とコンパス」と表現。

いずれもコンピューター関連の情報が一手に集まる場所(見本市と情報企業)。それを押さえれば、将来をかけるべきものが見える、と判断した。自社の時価総額が2900億円の時にコムデックスの買収金額は800億円。この時、38歳。

見本市のキャッシュフローなんてたかがしれている。普通にバリュエーションをやったら、見本市を800億円で買うなんて話にはならない。これが「地図だ」とわからないと出せない額だよね

そして、その地図で彼は何を見つけたか?


地図を手に入れた彼が見つけたのは、“従業員が5名しかいなかった頃のヤフー”だった。彼は100億円を投入してその会社の筆頭株主になり、ヤフージャパンを設立。

すごいのはヤフーを見つけたことじゃない。すごいのは「宝を見つけるには地図が必要」という発想。その地図が手に入るなら800億円は決して高くないと判断できるセンス。


<ヤフーBBを始めたこと>

NTTはISDNをやるとアホみたいなことを言っていた。日本のネット接続は先進国で最も高くて最も遅かった。これではシリコンバレーの仲間に恥ずかしいと思った。自分の志は、デジタル情報革命を起こすこと。NTTがやらないなら自分がやる、と決めた。世界一のブロードバンド環境を日本に作るぞと。

できるだけ多くの人の役に立ちたいという志があった。これなら国民全員が喜んでくれると思った。安くて早いブロードバンドが普及したら、子会社のヤフーも儲かる。でも、実はライバルのネット企業もみんな喜ぶ。

ライバルが喜ぶことをやるべきなのか?と問う部下に「ばかもの」と怒鳴った。日本のできるだけ多くの人に喜んでもらえることをやるんだ、それが自分の志なのだ、生きる意味なのだ、と。(・・・政治家と官僚のみなさん、ここんとこ、繰り返して聴いた方がいいですよ)


ところがNTTが邪魔をする。回線をつないでくれない。総務省に乗り込んだ。机をばんばん叩いて言った。「焼身自殺するぞと言った。殺せ〜と言った」(ほんとかな??)総務省の担当者に言った。「NTTの社長に電話して言ってくれ。“フェアにやれ”と。それだけでいい。具体的な指示はいらない。一言言ってくれ、“フェアにやれ”」と。

西郷隆盛が言った。「名も要らない、金も地位も名誉も要らない。命さえ要らない。そんなやっかいな奴でないと大事は成し遂げられない」

その通りだ。「何も要らない」という人に勝てる人はいない。何も要らない人は何も怖いものがないから、誰が何を言ってきても日和らない。迷わないで済む。


無料のブロードバンドモデムを配りまくった。料金はNTTの料金の80%引きにした。4000億円の赤字を出してヤフーBBをやった。儲けさえ考えない企業家には誰も勝てない!

日本に世界一速くて安いブロードバンドを!という気持ちだけしかない。そうしたらNTTも対抗して頑張ってきた。e-accessも頑張ってきた。みんな同じ志を持っていたからだ。「誰かが池に石を投げ込めば、波紋が起り、事が動き始める」


<モバイルインターネット&アジア>

携帯ユーザーは2000年から2010年への10年で、7億人から50億人になった。モバイルインターネットをやっている人は2010年で10億人だ。(日本の人口は1億人・・・)

これからはモバイルがインフラになる。そして、アジアを征するものがインターネットの世界を制する。この二つを合せて言えば、つまり、「アジアを征する者が、インターネットを征する」ということだ。


インターネットがモバイルにうつることでもう一度チャンスがきた。(世界一のネット企業になるチャンス)
産業革命(英国)→近代工業化社会(米国)→第一次IT社会(米国&PC)→第二次IT社会(アジア&モバイル)


<合脳>

コンピューターは人間を超える。


<ツイッターで目が覚めた>

次の段階に進むため、今2兆円ある借金を数年でゼロにする計画をたてた。しかし、ツイッターで目がさめた。ソフトバンクの電波がつながらない、という声がダイレクトに届いた。衝撃だった。

今、自宅の電波カバー率が98%、ドコモが99%。

山の中の一軒家に電波が届くようにするコストと、その家との通信で払われる通信料は比較にならない。計算したら、あと1%のために大きな投資をするのは経営的に間違いだ。しかし、
「計算で決めたら、だめ」
「銭金で考えたらいかん」
「なんのために、生きているのか?」
「デジタル情報革命のために生きている、日本に世界一速く、安いネットを。それが志」

→だったらやることは決まってる。


これから、基地局を倍にする!
(殿、ご乱心、と言われている・・)


<会場にいる学生達>
孫さんがたずねると、iPhoneを85%程度が持っている。twitterは98%が使ってる。これがソフトバンクの新卒説明会に来ている学生の姿・・・!

ヤフージャパンを始めて1年目の時、ヤフーなんてまだ日本人のほとんど誰も使ってない時、やはり孫さんが受けに来た学生にきいた。「ヤフーを使ったことがあるか?」と。そしたら、98%が使っている、と答えた・・。


<15000人の経営者を育てたい>
今、ソフトバンクには800社のグループ会社がある。これからそれを5000社にしたい。CEOの他に、CIOやCFOも必要だから、5000社には15000人の経営者が必要になる。

この15000人の経営者を“ソフトバンク・アカデミア”で育てる。それが60代になったら自分がやるべきこと。

金ではなく、志を残したい。


<病気>
起業した直後、26歳の時に病気が見つかる。その後29歳まで重い慢性肝炎の治療のため、3年以上入退院を繰り返す。すべてを失う。当時「もってあと5年」と言われている。


★★★


ちきりんはほとんどのことを“ながら”でやる。このスピーチも最初はバックグラウンドで流しながら他の作業をやっていた。でも途中でいろんな“ながら”をやめた。音楽を消して、つまみ食いをやめて、他のブラウザを閉じて、これはメモを取らなくちゃと思った。

韓国ドラマの録画が溜まっているから、それをみようと思っていた。でもこれを見始めたら、そのことは忘れた。すごいコンテンツだよね、と思った。ちきりんに韓国ドラマより優先させるなんて・・これよりいい本(コンテンツ)も雑誌も番組もブログも今は思いつかない。


彼の名前は“孫”さんという。“ソン”さんです。
このスピーチを、英語がわからなくても母語で聴くことができる日本人はものすごく幸せだと思った。この人が、日本語で話してくれることの価値はあまりにも大きい。

移民に反対し、また、この国で生まれ育った人を仲間と認めない(地方参政権を与えることさえ忌避する)人達ってのは、何を考えてるんだろ、って思う。

(追記:今も、16歳の第2の孫正義氏が日本のどこかにいるはずだ。もちろんまだ無名の16歳だ。その人も将来、日本国籍を選んでくれるだろうか。そして日本に残って日本で働き、日本のデジタル情報革命などのために仕事をしてくれるだろうか。

私たちはそういう人に「是非日本に残ってほしい」というメッセージを伝えているだろうか。と考えると忸怩たる思いがする。将来のこういう人が、“シリコンバレーで英語で”はなく、“東京で日本語で”スピーチしてくれるよう、ちょっとでも努力をしたい。)

・・・


最後にひとつ、スピーチの中の言葉から。
「愚痴を言うな。愚痴をいうと自分の器を小さくする。」


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