Baatarismの溜息通信

政治や経済を中心にいろんなことを場当たり的に論じるブログ。

相続税がかからない無利子非課税国債について

相続税がかからない無利子非課税国債の発行が与党・自民党で検討され始めたらしい。パッと見では「異説の類い」な感じがするけど、実際のところどんな効果があるのだろうか。


相続税かからない「無利子非課税国債」構想とは(読売新聞) - Yahoo!ニュースより引用:

利子が付かない代わりに相続税がかからない「無利子非課税国債」を発行する構想が、政府・与党内で浮上してきた。

タンス預金をはじめ、100兆円以上に上るとみられる「眠れる民間資金」を掘り起こし、それを財源に、社会保障や雇用などで大胆な景気対策を打ち出すのが狙いだ。


「相続税かからない「無利子非課税国債」構想とは(読売新聞) - Yahoo!ニュース」


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090207-00000015-yom-pol



政府としてのメリットは利子がかからないことか。ただ、新発国債の入札の状況とか詳しく知っているわけではないので確証はないが、このご時世、政府の資金調達コストは既に充分低いだろう。景気対策としては民間が消費を控えて貯蓄に走っている分を政府が代わりに消費・投資する効果と将来の相続税の減税の効果があると思う。


国債を発行して財政拡大するという部分については効果は薄いだろうと思う。今後1年の間に予想される大規模な不完全雇用下において、国債発行による財政拡大が民間消費を完全にクラウドアウトさせるとは思えないが、これをやるなら日銀が長期国債の買い切りを行ったり、インタゲをセットにして直接引き受けを行う方が遥かに効果は高い。なので、この案に対して反対ではないが諸手を挙げて賛成というわけでもない。


相続税を非課税にする、という部分はなんだか怪しい。これは将来の減税になるから、どのように効果が現れるのかがわからない。この国債を買った人が相続人に譲渡し、相続人がそれを担保に金を借りるとか、売り飛ばして消費するっていう構図を期待しているのか、なんだかよくわからない。多少の信用創造が期待できるのかしら。1年ごとの相続税の税収はそれほどでもないけど、この国債を発行すれば金融資産という形で資産をたくさん持っている人はなだれ込むだろうから恒久減税の効果があるとも考えられる。全体としてはなんとなく政治的な臭いがするんで気持ち悪いけどね。


この件についてあちこちで議論や考察が進むことを希望する。

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最近政府通貨と一緒に政府で取りざたされているのが、相続税が免除される無利子非課税国債ですが、政府通貨には肯定的な僕でも、こっちはどうもまずいのではないかという気がしています。


「徒然なる数学な日々」の上の記事で取り上げられている読売新聞の記事には、以下のような解説があります。

 ◆タンス預金など100兆円以上◆


 日本には1467兆円もの個人金融資産があり、これが消費や投資に回れば、経済は活性化する。ところが、将来への不安から、高齢者などが当面支出の予定のないお金を貯蓄として抱え込んでいるのが現状だ。


 日本銀行によると、14兆円分の旧1万円札がいまだに回収されていないなど、手元に現金を置くタンス預金は30兆円に上る。また、総合研究開発機構(NIRA)は、65歳以上の世帯の貯蓄残高558兆円のうち、実際に老後に必要と思われる額を上回り、家計に眠っているお金が最大179兆円に上ると指摘している。


 こうした「眠れる民間資金」を掘り起こし、有効活用する方策として、無利子非課税国債に注目が集まってきた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090207-00000015-yom-pol



このようにタンス預金などの「眠れる民間資金」を集めるのが、この「無利子非課税国債」の狙いのようですが、相続税が免除されるというインセンティブは非常に大きいため、従来の株や民間債券、あるいは既存の国債、さらには土地などからも、「眠っていない」資金が流れ込んでくる危険性があると思います。
そうなってしまうと、株価や地価の下落に拍車をかけたり、債券価格の下落=金利の上昇やそれに伴う円高を招いてしまい、却って景気に悪影響を与えてしまう可能性があると思います。財政政策による効果があるとしても、そのような副作用と相殺されてしまうのではないでしょうか?


もちろん、財政政策による効果と僕が指摘したような副作用が、具体的にどのようになるかはさらに調べてみないといけませんが、無利子非課税国債」を発行することで既存の民間投資を冷え込ませてしまい、一種のクラウディングアウトが発生する可能性について、誰も指摘していないことについては不安に思います。