アマルティア・K・セン (Amartya K. Sen), 1933-

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Photo of A.K.Sen

 「福祉経済/厚生経済」というのがアマルティア・センの別名にすぎない、とまで言うとちょっと言い過ぎかもしれないけれど、でもこの分野をセンほど大きく、真剣に、深遠な形で広げた経済学者はほとんどいないだろう。ノーベル賞候補には必ずあがるセンは(もう数年にわたり、経済学者の下馬評では常にトップだ――そしてやっと 1998 年にノーベル記念賞を受賞)、知的世界のあらゆる方面から敬意と認知を受けているという点で現代の経済学者の中でも希有な存在だ。

 センはケンブリッジ のジョーン・ロビンソン 門下だけれど、そのルーツを乗り越えて、社会選択 理論と経済開発の両方を扱った。そして数学化した「高等理論」経済と「現実世界」経済との間の障壁も突破した。これはセンにとっては論理的な結合だった。かれが研究した農民たちや地方の世帯は、経済理論を支配している「合理的享楽主義者」の想定とは矛盾する経済行動様式を持っていることが多い。特に一部の集団組織(たとえば収穫期の組織)は個人の合理性とは矛盾することが多い。この面でセンは ゲーム理論 的な発想を使って、こうした集団行動を説明しようとした。

 それでも、センが研究で明らかにした問題は、比較不能な個人同士の効用という福祉経済学における共通の想定にもなっていた。かれの有名な 1970 年の論考 Collective Choice and Social Welfare はこれがまさに有名な "アロー の不可能性定理" の鍵となるものだと指摘している。この想定がなければ、不可能性定理は成り立たない。でもこの想定があるなら、不可能性定理は無意味だ、とセンは論じた。

 別の有名な論文 (1970) で、センはその入念な視線をパレート最適基準に向けた――福祉理論におけるパレート最適性の想定は、価値中立ではなく、むしろ古い J.S. ミル 的な「リベラリズム」の発想と矛盾するものだ、という。なぜならパレート基準は「個人空間 (personal space)」に対する安全策がないからだ。

 でもセンは現実離れした思想家なんかじゃない。1972 年には、開発プロジェクト評価に関する有名な国連ガイドラインを共著し、これは多くの機関にとって実に有用なものとなった。かれの貧困に関する研究は、無数の理論的な洞察も含んでいると同時に、応用面でもきわめて大きな成果を挙げた。

アマルティア・センの主要著作

アマルティア・センに関するリソース


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