映画感想「ドラゴンボールZ 復活の「F」」
TOHOシネマズ海老名で「ドラゴンボールZ 復活の「F」」を視聴。前作は公開から少し経っての視聴でしたが、今回は初日に見ることができました。「名探偵コナン」や「クレヨンしんちゃん」の劇場版と同日公開だったようで映画館はなかなか盛況。前作が素晴らしい出来だったので今回も期待していたのですが……
■納得出来ないパワーバランス
今回の敵はナメック星編のボスであるフリーザ。悟空をスーパーサイヤ人に覚醒させたドラゴンボールを代表する名敵役ではあるのですが、最終的には完全にインフレに置いて行かれたキャラでもあります。人造人間編では復活したものの同じスーパーサイヤ人のトランクスのかませとしてあっさり死亡。そのトランクスも人造人間には手も足も出ない。その後、人造人間編ではスーパーサイヤ人の壁を超えたスーパーサイヤ人2が登場し、更に魔人ブウ編ではスーパーサイヤ人3にパワーアップ。おまけに前作「神と神」でその上のスーパーサイヤ人ゴッドが登場するに至っており、どうやってそのレベルまで引き上げるのか、というのがフリーザ復活と聞いて最初に興味をもったことでした。
答え:フリーザは天才ゆえにこれまで努力なんてしたことなかったので、4ヶ月ほど死ぬ気で修行して悟空達に迫る強さの新形態を獲得
え……( ゚д゚)
いや確かにドラゴンボールのレベルアップの基本は修行だし、フリーザが更に強くなれる理由としては納得できるのですが、これが通じるのはせいぜい人造人間編まででしょう。少なくとも魔人ブウ編で戦力外の界王神ですら「フリーザ程度なら一撃で倒せる」とまで指標として使い切った後では強さの次元が違い過ぎる。今回の劇中でも魔人ブウに言及していましたが、これじゃフリーザの方がよっぽど化け物だ。
またフリーザが率いる兵士も1000人という数、そして悟飯達が「殺さないよう手心を加える」というハンディを背負うことで悟空達が来るまでのアクションシーンを担当しているのですが、彼らの中で最強のシサミとタゴマですらソルベいわく「ザーボンとドドリアに匹敵」という程度。つまりナメック星序盤程度のレベルなのに、シサミはスーパーサイヤ人1より強いピッコロとそれなりにやりあってしまうのだから困ってしまう。ソルベ、お前のスカウター旧式だから故障してるんじゃないのか。
■フリーザというキャラの悪い意味での変わらなさ
またフリーザは前述するまでもなく強烈な悪役であり、アニメでは演じる中尾隆聖の演技もあって(パンフのコメントではキャラ作りとして「公家っぽい嫌らしさ」をイメージしたことが書いてあって納得www)とても魅力的なキャラなのですが、原作で出てきた描写で既に全てを出し切っているキャラでもあります。「私の戦闘力は53万です」に代表される帝王としての貫禄、複数段階の変身を残した上でベジータ達を圧倒する驚異的な戦力差、そしてスーパーサイヤ人という存在に自分の強さというアイデンティティを破壊される完全な敗北。これだけ描いてしまうと、もはや方向性を変えない限りはできる役なんて人造人間編で見せたかませ犬しかない。
で、この「復活のF」でフリーザが新たなキャラクター性を獲得したかと言えば、ぶっちゃけ特にないのですよね。修行はしたし悟空相手に罠も仕掛けたけど「そこまでして悟空に勝ちたいんだ」という執念はまるで描かれない。これだと強さは水増しされていても、キャラとしては出涸らしに過ぎないのではないかと思うのです。
■強者が足元をすくわれるストーリー
そんなフリーザが相手なので、今回のバトル自体は見ていて苦戦という要素はほとんど感じられません。ゴールデンフリーザにしても悟空達が今回の映画開始時点で獲得している「スーパーサイヤ人ゴッドのパワーを持ったサイヤ人のスーパーサイヤ人(ややこしいなオイ)」よりちょっと強い、という程度で、それもエネルギーの消耗が激しく持久力負けしてしまう始末。劇場版の敵で1番戦力差が無いんじゃないだろうか……ただ、そんな彼が最後の悪あがきとして地球破壊とベジータ殺害という戦果を上げてしまうのは驚きではある。しかもそれを始めとしたピンチは、序盤にウイスが指摘した悟空とベジータの欠点がそのまま現れたもの。前作ではビルスという「上には上がいる」のを示すことで悟空達の発展の余地を見せていましたが、今回は逆にフリーザに足元をすくわれることで発展の余地を示しているのかな……と思いました。とはいえ、それが娯楽映画として面白いかと言われるとぶっちゃけノー。
■ゲストキャラ・ジャコ
さて、今回フリーザ陣営とは別に新たにアニメに登場しているキャラとして、「銀河パトロール ジャコ」からゲスト出演しているジャコの存在があります。実はあまりちゃんと読んだことがなく、ドラゴンボールと繋がった作品らしい……と聞いてはいたのですが、いざアニメに出てみるとジャコのトボけた感じが実にハマっている。悟飯達とフリーザ軍兵士のバトルの中で1人光線銃を使ったり罠を活用したりとトリッキーかつコミカルな動きをしており、戦闘パートが単調になるのを避けてくれていました。演じているのが若手の花江夏樹ということもあり、見ても聞いても終始新鮮だった印象。
……というわけで、インフレの極地に達していた原作を更に容赦なくインフレさせていっそ気持ちよく突き抜けたり、悟空が負けることのできる珍しい敵としてビルスという個性的なキャラが登場していたり、ベジータの地球での変化が上手く描かれていた前作「神と神」に比べると、さほど興奮できなかったのが正直なところではあります。声優陣の演技や肉弾戦に気を使った映像美、フリーザ襲来までを始めとしたコミカルさなどは不満がなかっただけに残念。
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