プロローグ
愚痴がたいへん言いづらい世の中になってまいりました。
誰かに言えば、「こうすればいいんじゃないの?」と求めてもない解決策を示され、積極的に解決に乗り出さなければ「やる気もないのに、なんでそんなこと言ったんだ?」と不満顔をされるし、Twitterで垂れ流せば「それってもしかして私のこと? ごめん、そんなに不愉快にさせてると思わなかった……友達失格だね」と、「いや、あんたじゃないし!」という相手からリプライが送られてきて、そっとフォローを外されるこのご時世。ただ愚痴を愚痴として吐き出したい、そんなささやかな願いすら叶えられなくて、何がSNSだ、何がインターネットだ……! と、やるせなさに震える毎日でございます。
愚痴ぐらい、自由に言わせてもらえませんか。「仕事が忙しくて疲れた」と言うと、「忙しい自慢ですか? 仕事があるだけいいですよね」「仕事がなくて苦しんでる人の気持ちも考えて下さい!」というリプライが飛んでくるような世の中が、私たちの望んだ未来なのでしょうか? よく考えてみてください。「彼氏にふられてつらい」と嘆き悲しんでいる人に向かって、「彼氏がいただけいいじゃないですか! 私なんて人生で一度も彼氏ができたことなんてないんですよ!?」と言ったところで、誰も幸せにはなれないですよね。もともと誰も幸せじゃない組み合わせを例に出してしまいましたが、今の世の中って、だいたいそんな感じですよね。愚痴を言うと、「こっちのほうが大変なのに、その程度のことで泣き言を言うな!」という圧力がすごい。
逆に、幸せに対する圧力もすごいとよく感じます。幸せであるようにふるまわなければ哀れまれてしまう、と怯えている人も多い。「Facebookでみんなリア充な写真ばっかり上げてて、自分は何も書けない雰囲気を感じる」とか、そういうことに近いですよね。別に、家でひとりでのんびりしてて、それが幸せなのだとしても、人から見て幸せかというと、どちらかというと「かわいそうな人」だと思われそうだから言えないとか、「幸せに見えるようにふるまわないと、自分は幸せだと周りから認めてもらえない」という気持ちを、ほんの少し抱えている人も多いことと思います。別に認めてもらえなくても自分は幸せなのだけど、幸せだと理解されずに不幸な人扱いをされるのは、まぁ、それなりにつらいですよね。
またはお金があって、結婚していて子供もいて……というような、人から見て幸せな環境にいるだけで、愚痴を言いづらくなるということもあります。「○○はいいよね~、素敵な家に住んで、旦那さんも優しくてさ~」などと、ホメられればホメられるほど、愚痴を言うタイミングを逃してしまう、というような状況もよくお見かけします。
ただの愚痴なのに、すごくシリアスな不幸話だと捉えられてしまったりするのも、なかなかキツいものですから、こうしてまた、ますます愚痴が言いづらくなっていくのです。
そんなみなさんのために、心おきなく匿名でいくらでも愚痴が言える場をご用意いたしました。それがこのコーナーです。
気が済むまで、心に溜まった愚痴をながながと書き綴って下されば、別に解決はできないかもしれませんが、その愚痴にそっと私が寄り添います。そっと水割りのグラスを差し出すスナックのママのような気持ちで……。
個人情報は死守いたしますし、私にも通知されませんので、安心して、誰もいない山の中に深い穴を掘って叫びまくるような気持ちで、愚痴を吐き出してください。
溜め込んだ愚痴が、怒りや憎しみや絶望に変わる前に、さっさと吐き出して、楽になりましょう。そして、心が軽くなればそんなにいいことはないと思うんです。
みなさまからの愚痴、心よりお待ち申し上げております。