
■制作: セントラル・アーツ
監督:深作健太
脚本:山岡真介 (原作:葉田甲太)
撮影:鈴木一博
照明:岡元みゆき
編集:洲崎千恵子
音楽:津島玄一
出演:向井理、松坂桃李、柄本佑、窪田正孝
村川絵梨、黒川芽以、阿部寛
05年8月、医大に通う大学2年生のコータは、友人の芝
山や矢野とそれなりに楽しい日常を過ごしていたが、何か物
足りなさを感じていた。そんなある日、偶然、海外支援案内
のパンフレットで、150万の寄付があればカンボジアに屋
根付きの学校が建てられることを知る。
ありふれた毎日に刺激を求めて、「カンボジアに学校を建
てる」夢を実現させた大学生4人組の活動を描く物語。ごく
普通の平均的な青年・向井理、軟派な外見とは裏腹に純粋な
松坂桃李、気は良いが些か投げやり気味の皮肉屋・柄本佑、
優等生ではないが堅物で寡黙な窪田正孝。
映画はストイックな作劇で、彼ら4人の姿をひたすら捉え
続ける。事実に基づいたストーリーということもあり、主演
の4人はいずれも、格別に際立ったところのない、等身大の
キャラクターを自然体で好演している。
ドキュメンタリ的なテイストをドラマ部分に有機的に組み
込んだドラマは、ひりひりとしたリアリティをつねに含んで
いるが、カンボジアロケ部分ではさらにドキュメンタリ色を
強め、この国の歴史と現状を生々しく伝える。フレームのブ
レ、ズームの繰り返し、画面が揺れるその中に、想像を越え
た史実と現実の重みに揺れる4人の心情がダブる。カンボジ
アの人々の表情、とりわけ子供たちの純粋な瞳が印象的であ
る。
ボランティアという看板を掲げつつ、彼らの活動はそのほ
とんどが「資金集め」であり、実際に彼らが現地で汗を流す
訳ではない。彼らはクラブを貸し切ってパーティーを開催し、
その収益を費用に当てる。それは現実的かつ有効性のある手
段ではあるものの、果たしてそれでいいのかどうかという問
題意識に4人は直面する。彼らは「傍観者」の誹謗中傷や批
判、嘲笑を浴びつつ、彼らなりの煩悶と自問自答を繰り返し
ていく。
主人公コータが、たまたま見つけたパンフレットに載って
いたカンボジアという国。勢いでだけで走り出してしまった
彼らは、現実の「カンボジア」という国と対峙する事になる
が、それは彼らにとって(おそらくは観客にとっても)予想
以上にリアルなものだった。現実の前に無力な自分の存在を
確信した時、なおもそこから踏み出す一歩を模索する過程、
ただその一点のみを映画は描き出していく。自分のいる場所
で、世界の問題を自分の問題として考える姿は、真摯であり
誠実である。
「僕たちは世界を変えることができない。But,we wanna build
a school in cambodia.」
一見、否定的かつ諦観的にも思えるこのタイトルは、つい
略してしまいがちな英文部分(だけど、僕たちはカンボジア
に学校を建てることが出来る)までを含めて、はじめて本来
の意味を成す。このあまりにそのままの、愚直なまでの誠実
さが、この映画のすべてを的確に表現している。確かに「わ
たしたちは世界を変えることができない」かも知れないが、
私たちなりにできることは、きっと沢山あるのだから。
本作は、現代に生きる若者たちの、熱くてカッコワルくて、
でもだからこそ清々しい等身大の青春物語が全編にわたって
貫徹された、爽やかな好篇である。
さぁ行く先なんかどこでも良いから、とりあえず一緒にこ
の映画という「バス」に乗ってみないか?
(2011/10/26 天動説)

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