2005.11.06 (Sun)
金門橋から飛び降りる前に
こちらを先に紹介すべきだったかもしれませんね。
警備や検死に携わる職員それぞれの、これまでに印象に残った仕事など、全部では長くなりますから、最初の部分だけ訳してみましょう。
深まりゆく秋。 ここ、フォート・ベイカーにも朝晩のみならず寒気が忍び寄ってくる時節となりました。 遠慮がちに浜に打ち寄せる小波に手を浸してみると凍えるように冷たく、ひっそりとした流れに小さな波紋を映し出します。
金門橋から飛び降り自殺を図った人間の遺骸は、沿岸警備隊員の手によって例外なくこのフォート・ベイカーに運ばれ、マリン郡の検察事務官のもとで検死にかけられます。 そこで死んだことが確認されると、身元の調査が行われ、告示されるのです。
フォート・ベイカーのドックには二隻のモーターボートが繋がれています。 これは橋から飛び降りた人間の許へと急ぎ、水面から引き上げて救命処置を施す必要があるからです。 しかしながら、大抵の場合は無惨な様相のために、いったんコンテナに収容され、黄色の覆布をかけられて検死に送られるのを待つことになります。
橋から飛び降りた場合、ほとんど死は確実ですが、稀に助かることもあります。 運よく、かどうかわかりませんが、足から水に潜れば僅かな確率で命を落とさずに済むかもしれません。
水を打つ衝撃は凄まじく、一瞬間に時速75から80マイル(約120km/h)の落下速度がゼロになるのですから、推して知るべしでしょう。
人間の体はこの衝撃に耐えられず、まず動脈網がこなごなに引き裂かれて、肝臓や膵臓、心臓などの内臓が損なわれます。 折れた肋骨が肺に突き刺さり、骨盤は割れ、頸骨は打ち砕かれます。 また、遺骸で共通しているのは頭蓋の損傷です。
死因としてはこれら水面から受ける衝撃によって死ぬ場合と、即死には至らなくとも出血多量で死ぬ場合、また溺死が主因と判断される場合もあります。
検死を任務とするマリン郡の検察事務官ケン・ホームズは、こう語ります。
「橋から飛び降りるということを、まるで天国への跳躍のようにイメージしている人もいるかもしれない。 だが、決してきれいな死に方じゃあないんだ。 そのことに気が付くべきだよ。 車で轢かれたのとたいして変わりゃしないってことをね」。
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