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もうすぐ消えるウィルコムが見せてくれた夢、初の国産スマホ「W-ZERO3 WS003SH」レビュー


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2014年6月1日のワイモバイル発足を機に、法人としての存在が消えてしまうウィルコム。今でこそ音声通話に特化したキャリアとして展開していますが、かつては日本のスマートフォン市場の最先端をひた走っていた会社でした。

そこで今日は、同社が初の国産スマホとして2005年に発売した「W-ZERO3 WS003SH」のレビューをお届けします。

◆初代W-ZERO3を振り返ってみた
これが2005年12月14日に満を持して発売された「W-ZERO3」。業界初となる3.7インチVGA(640×480)液晶やIEEE802.11b準拠の無線LANを搭載した国内初のWindows Mobile 5.0スマートフォンです。

背面。本体サイズは約70mm×約130mm×約26mm、重さは約220グラムと重量級でした。

カメラは133万画素

そして同モデルの大きな特徴だったのが、スライド式のQWERTYキーボード。横画面での利用を強く意識していました。

スライド時は背面にウィルコムのロゴが出てくる仕組みでした。

バッテリーは1500mAh。2010年12月に発売されたKDDI初のシャープ製Androidスマートフォン「IS03」が1020mAhだったことを考えると、意外と大容量です。

W-ZERO3はPHS通信機能を搭載した独自のSIMカード「W-SIM」に対応。ウィルコムはかつて、W-SIMを差し替えるだけでさまざまな端末を使い分けられ、端末メーカー各社が低コストで端末を開発できる「WILLCOM SIM STYLE」と呼ばれる製品群を展開していました。

W-SIM本体。ただしこれは003SH付属のものとは別です。

左側面。左から電源端子、USB端子、miniSDスロット、シャッターボタンです。

電源端子にはPSPと同じ丸型端子、USB端子はmini-Bを採用。今ならmicroUSB端子1つで済むと思うと、時代を感じざるを得ません。

右側面には平型イヤホン端子、画面回転ボタン、音量ボタン

縦利用時に大半の操作ができるよう、画面左側には各種ボタンがあります。

キーボードは数字キーまで独立したQWERTYキーボード。ほぼパソコンそのままの入力環境を実現していました。

感圧式ディスプレイを操作できるスタイラスも標準搭載。

のちにMarvellに事業ごと売却されることになる、Intelのモバイル向けプロセッサ「PXA270(416MHz)」や64MB RAMを搭載。今年春に発表された「Xperia Z2」がSnapdragon 801(2.3GHz、クアッドコア)や3GB RAMを備えていることを考えると、モバイル端末の成長っぷりには目を見張るものがあります。

Windowsらしさを感じさせるスタートメニュー。2007年にWindows Live Messengerをはじめとする各種サービスを統合したソフトが世界で初めてW-ZERO3シリーズに提供された際は、「どこでもMessngerでやりとりできる!」と胸が熱くなったものです。

設定画面などもWindows感バリバリ。少なくとも今のWindows Phoneのような洗練された感はありません。

本体の操作に合わせて自動で画面回転する機能も。

こんな感じで回転します。

W-ZERO3の画面回転 - YouTube


実際にブラウジングしてみました。なお、ネットワーク接続のために「ActiveSync」改め「Windows Mobileデバイスセンター」をインストールしたパソコンとのUSB接続を利用しています。

W-ZERO3でブラウジングしてみた - YouTube


ウェブページを表示した状態で画面回転すると、レンダリングに時間がかかることもしばしばでした。

今となってはウィルコム公式ページを表示するのも一苦労で、表示できても快適な閲覧は困難。いかにウェブのコンテンツがリッチになったのかを思い知らされる一幕です。

◆W-ZERO3はどうして生き残れなかったのか
このように当時としては異例の高精細液晶やスライド式QWERTYキーボードを備え、今までの携帯電話とは大きく異なる、パソコンライクな操作を実現するなど、国内初のスマートフォンとしてパイオニア的存在だった初代W-ZERO3。

しかしマイクロソフトの元CEO、スティーブ・バルマー氏が「Windows Vistaの開発に焦点を当てすぎるあまり、『携帯電話』という新たなデバイスに着目することができなかったことを最も後悔している」と自身の失敗を認めたように、W-ZERO3発売後もWindows MobileのUIが抜本的に改善されることはなく、対応ソフトも貧弱なままでした。

その結果、初代W-ZERO3発売から2年半後の2008年6月に、第4世代にあたる「WILLCOM 03」が発売されたものの、ほぼ同時に国内発売された「iPhone 3G」に操作性やアプリケーション環境など、あらゆる面で追い抜かれる結果に。

そしてiPhoneが順当に進化を進める中、1年半後の2010年1月にようやく発売された新型「HYBRID W-ZERO3」は初のPHS+3G対応でテザリングも可能、さらに独自UIを採用するなどの努力を見せたものの、当時最先端のプロセッサ「Snapdragon S1」が搭載されることはなく、処理能力が足りずにガクつくなど、お世辞にも快適とは言えないレスポンスでした。

極めつけに「HYBRID W-ZERO3」の発売後、すぐに発表された次期OS「Windows Phone 7」へのアップデートが提供されないことも判明。iPhoneの隆盛やAndroidの胎動を尻目に孤立無援で戦ってきたW-ZERO3ユーザーに対し、マイクロソフト自らが引導を渡す形となりました。

ソフトバンクの孫社長が興味がないことを明言するなど、携帯電話各社が積極的な姿勢でなく、iPhoneやAndroidほど登場を待望するユーザーが多くないように見えるWindows Phoneですが、実は一番消極的なのは、このような手酷い仕打ちを長年にわたって受け続けてきたW-ZERO3ユーザーかもしれません。

気が付けば最先端をひた走っていたはずのマイクロソフトがiPhoneやAndroidの後塵を拝し、W-ZERO3が提唱した横画面+スライド式キーボードスタイルは縦画面+タッチパネルに移行するなど、大きく変わってしまったスマートフォン業界。

しかし当時、iPhoneに圧倒されてもなおW-ZERO3シリーズを使い続けていたユーザーの中には、いまでも同様のコンセプトを採用した後継機の登場を待ち続けている人がいるのではないでしょうか。

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