「WHO YOU ARE」はリモートワークを躊躇しているリーダーに読んでほしい本
新型コロナウイルス感染症で急激に広まっている在宅勤務(リモートワーク)。成功させるには、技術的な課題だけではなく、社員がサボらずに仕事してくれるかという問題もありそうです。
立派な社訓を掲げた会社でも、上司が「リモートワークにしたら社員はサボるんじゃないか」と心配したり、社員が「どうせばれないからさぼっちゃおっと」と思うとしたら、それは、企業文化がうまく形成されていない証拠。
では企業文化はどうやって築けばいいのか? そのヒントを示してくれるのが、著名VCのベン・ホロウィッツ氏の新著「WHO YOU ARE──君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる」(日経BP)です。
原著タイトルは「What You Do Is Who You Are:How to Create Your Business Culture」で、「あなたの行動があなたという人物だ:企業文化の造り方」という意味です。企業文化はリーダーであるあなたそのもの。言葉ではなく、行動と一致させてこそ、あなたの企業にふさわしいほんものの文化になる、というところです。
企業文化というと、なんとなく「Googleは自由な企業文化でカフェが無料なんだよね」とかそういうのを思い浮かべちゃいますが、例えばGoogleがカフェを無料にしているのは、優秀な社員が思い切り仕事に集中できるようにするためという背景があり、その、さらに根っこの部分のことです。
カフェを無料にすれば自由な文化ができるわけじゃありません。この本では、そもそも文化って何だっけ? というところから、リーダーが自分が作りたいと思う文化を作るための心得までが、面白いエピソード満載で描かれています。
ホロウィッツさんの前著「HARD THINGS」は、「どうやって危機を乗り越えるか」を体験に基づく実践的なアドバイスで示すリーダー向けハウツー本でした。
本書は、すぐに役立つハウツー本というよりも、もっと根っこというか、心構えについての本です。今回も実体験エピソードがたくさん出てきますが、成功した文化創造の例として、米国の刑務所で服役者をまとめた人物、シャカ・サンゴールや、あの"蒼き狼"チンギス・ハンなどを紹介していて、これが読み物としても面白いです。特にサンゴールの章は感動ものです。
もちろん、シリコンバレーのCEOたちのエピソードもたくさん出てきます。例えば、
- ラリー・ペイジがAlphabet構想をまとめるためにホロウィッツさんのところに"壁打ち"に来たときのこと
- NetflixはCDレンタル屋さんからスタートしたけど、そのとき既にストリーミングを視野に入れていたこと
- ダイアン・グリーンのVMware時代の武勇伝
- Uberの文化規範について(コスロシャヒCEOの「正しいことをする。以上。」はなぜだめなのか)
- SlackのバターフィールドCEOが大切にしていること
- ホロウィッツさん自身がHPの事業部長になった2007年当時のだめだめ状態
HPのエピソードは、「HPウェイ」を誇ったHPがマーク・ハードCEO時代に「文化が死んでしま」い、在宅勤務社員の「多くはまったく働いていなかった」のがなぜだったのかを説明していて印象深いです。
私はリーダーではないので、一介のシリコンバレー本好きとして楽しみましたが、ここに書かれていることは何も企業だけではなく、あらゆる組織、例えば家庭にも当てはまると思いました。
在宅勤務で家族とずっといることになってしまったお父さんもお母さんも、わが家の文化をどう形成していくかの参考にひとつ、いかがでしょう。