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音楽力をアップする「耳コピのすゝめ 」第二回 準備編

厳しい暑さが続いておりますが、皆様くれぐれもご自愛くださいね。
ということでこんにちは。サカウエです。

さて前回よりスタートいたしました
音楽力をアップする「耳コピのすゝめ」いかがでしたでしょうか?

前回の記事はこちら

さまざまな楽器のフレーズを耳コピすることで、聴き取るチカラが培われて、演奏技術、コード進行やアレンジなどの音楽理論、センス・・等々が向上するかもね・・という話で前回は終わってしまいましたが、今回からは「耳コピ上達のヒント」もお話していきたいと思います。

突然ですが「耳コピ」クイズです

次の二種類のピアノ演奏の違いがわかりますか?

でわどうぞ。

a [file:shimamura-music:110812-01_Piano1A.mp3:sound]
b [file:shimamura-music:110812-02_Piano1B.mp3:sound]

右手は和音で四分音符打ち、左手はベース音(最低音)をオクターブでなどるという、典型的なバラード・ピアノ・バッキングパターンです。一番有名なのは The Beatles の「Let it Be」ですね。

C-G-Cというコードをサカウエが弾いて、DAWにリアルタイム録音したものなんですが、気づきましたか?

そうです!(b) は左手のベース音が移動するときに、(a) では弾いていない装飾音を演奏しています(ちょっと大袈裟に入れてますが了承下さい)

(b) の演奏をDAWのピアノロールで見てみるとこんな感じになります。

ちょうど○で囲んである矢印で示した部分が (a) にはありません。よくわからなかった人もこの図を見ながらもう一度聞き比べてみてください・・・

どうでしょう?今度は「なんとなく」違いがわかったのではないでしょうか?

ここで大事なのは「なんとなく」ということ。覚えておいてくださいね「なんとなく」、これが重要なんです。そして、こうした細かい違いってのは、何度も何度も繰り返し聞いているうちに、ある日突然気になってくるものなんです。

そんな細かいことはよいから、和音とかコード進行とか「耳コピ」するコツ早く教えてー!
というご意見は重々認識しておりますが、スミマセンもう少々お付き合いください。

音楽のエッセンスとは?

先ほどのピアノ・バッキングの違いってのは、細かいことなので普段は軽視されがちなんですね。この装飾音などは、採譜の際に大抵は省略されてしまう部分ではないかと思います・・C-G-Cというコードがわかればよいじゃんかって・・・

確かにC-G-Cというコード進行や、ドミソ、ソシレといった和音を聴き取ることは、モチロン重要です。でも、それだけじゃなくて、こうした細かい演奏のニュアンスにこそ実は「音楽のエッセンス」が含まれているのでないかとサカウエは思うんですね。

ではそんな気持ちで、原曲を聴いてみてください!

どうですか?前よりぐっと感動がこみ上げて来たのではないでしょうか?
ピアノのイントロ、装飾音符が無かったらイマイチですよ・・たぶん。

さてさて感動したところで、話はガラッと変わります。

耳コピに絶対音感は必要なの?

コレよく聴かれます。確かに絶対音感を持っている人の中には、楽器を使わずに聴いた音を直接楽譜に書き込んだり、即座に演奏することができる達人もいます。うらやましいですね。

さて、結論から言うと絶対音感は絶対に必要ということではありません。楽器で確認しながら耳コピできる環境さえ作れば、耳コピは誰にでもできます。かくゆうサカウエも絶対音感はありません。

絶対音感を持っている人の中には、原曲の録音が古くて微妙にチューニングが低い(高い)といった場合は逆に気持ち悪くてダメ*1、、というハンデもあったりします。

また、サカウエの友人にはギターのディレイ音(エコー)が実際の演奏に聞こえてきて混乱して音が取れないという人もいました。耳が良すぎるというのも場合によっては不便なことがあるようですね。

そーいえば絶対音感のある犯人が、犯行現場の水槽のモーターの音が気になり、それがきっかけでトリックが見破られるというミステリー・ドラマもありましたね・・古畑任三郎だったか、全然関係ないですが。

耳コピしたものはどうやって記録する? その1「採譜」

耳コピしたものは何か形に残しておいたほうが良いです。
暗記するってのもまあそれはそれでよいですが、これから耳コピ達人になって、音楽理論なんかも身につけたいなあと思っている人は必ず「採譜」の習慣をつけましょう。

「自分は譜面なんか読めないし、必要ない!」っていう方もいらっしゃると思います。
なにを隠そうサカウエも譜面は大の苦手なんです。中学生の頃は授業中、ずーっと紙に鍵盤の絵を書いて、押さえるキーに○付けてコード覚えてましたから。

こんな感じです

コレ、直感的で見やすいのは良いのですが、悲しいかな演奏の一瞬のキャプチャーに過ぎないんです。
コード覚えるのには向いてますが、時間軸の変化を表現できなくて・・つまりソロフレーズとかには対応できないんです(グスン)。
悩みました(・・・遠い目)

人に伝える為には

さて、たとえばあなたが某アーティストの完コピバンドを組んだとしましょう。メンバーが耳コピできないのであなたが全パートの耳コピしてあげることになりました。

もし楽譜という伝達手段を使わない場合、耳コピしたものを暗記して「ここはそう、そこはこう」って、まるで民族音楽の伝承のごとく手取り足取り教えてあげるのは・・・まあそれもまた意義ある人生ですが・・・結構大変そうに思えたりします。

という訳で、楽譜にはいろいろと面倒な点もありますが、今も使われてるってことはそれなりに効率的で便利な訳です。

ま最初は自分だけが理解できるメモ程度から始めて、徐々にそれらしくしていけばよいんじゃないかと思います。

さて実は、ここで一番重要なことは、譜面をスラスラ読み書きできるということよりも、

「耳コピ」→採譜というプロセスは、コード&音楽理論を楽しく学べるきっかけになる

ということだと思います。さて、それは何ででしょう?

突然ですがここで再び「耳コピ」クイズ

お待たせしました(待ってない?)次のピアノの耳コピをしてください。

第2問 [file:shimamura-music:110812-05_PF2_CGC.mp3:sound]

これは簡単でしたか? とりあえず一番低い音を聞き取るのが良いですよ。

一番低い音(ベース音)だけ聞くと、ド→ソ→ドと動いていることがわかりますね?

実は今回冒頭のクイズと同じコード進行(C-G-C)で、
「起立( C )」→「礼( G )」→「着席( C )」のコード進行ですね。

実際には

というハーモニーで弾いてます。

では、続いてはコレです。

第3問 [file:shimamura-music:110812-07_PF2_CGC_tension.mp3:sound]

ぎゃーす!コレ採譜できた人はこのコーナーなんて読む必要ないだろなあ・・という感じのハモでございますね。

実際にはこの様なハモになっています(手が大きくないと弾けませんね)。


※コードネームはC69 - G7(b9,#11,13) - CM7(6,#11,13)・・・パトラッシュ、もう疲れたよ・・・


さて、とても言いにくいことですが、ここで皆様に驚愕の事実をお伝えしなくてはなりません。

実は第2,3問のどちらも「同じ」コードなんです・・・ぜんぜん響き違いますけれども。

機能和声という和声学の基になる考え方があるんですが、そこでは両者は「役割」としては同じで、

C(ナントカ)= トニック(トニカ)I
G (カントカ)= ドミナント V

(ここではこの言葉を覚える必要はまったくないです・ご安心ください)

ということになりまして、コレをさらにシンプルな響きにするとこうなります。


[file:shimamura-music:110812-10_CG_min.mp3:sound]

「ウッソー」と思われるかもしれませんが、事実なんですスミマセン。

さて、なんでこんなクイズを出したかというと、たとえ第3問のような変態和音を聞き取れたとしても、そこで終わってしまうと、あまり意味がないということを言いたかったからなんです。(採譜するお仕事に従事するというなら別ですが)

今後、おいおいご説明していきたいと思いますが、ポピュラーミュージックにおいては、この部分のコードとハモがどんな意味を持つのか?という機能和声の観点で逐一理解することが、音楽スキルをアップする為には必要だからなんですね。

アドリブやアレンジが出来るようになりたいなあという人にとっても、採譜して分析するという習慣はとても重要だと思いますよ。

耳コピしたものはどうやって記録する? その2「採譜直接DAWへ打ち込み(上級者向き)」

最初にお断りしておりますが、この方法は、どうしても時間がないとか、楽譜はもうバッチリ〜という人向けかなあと思います。「耳コピ」ビギナーは出来るだけ楽譜を書く習慣をつけたほうがよいと思います。

さてこの方法は「耳コピ」して楽譜書く替わりに、直接DAWに演奏データを打ち込んでいってしまうんです。ペーパーレスですのでエコなのかも知れません・・。
前回通信カラオケ製作者のお話をしましたが、あの方たちはやはり現在はこの「直接DAW派」が主流だそうですね。

話は飛びますが、パット・メセニー大先生は、バンドのスコアは「Siberius」というソフトを使って完璧にデジタル化してるようです。

勿論、作曲の段階では手書きのコード、メロ譜面でしょうが、アレンジが固まってきた段階でソフトに移行するんじゃないかなあと思います。

プリプロ(プリプロダクションの略) の段階では、遠方に住む相棒のライル・メイズとは、演奏データをメールでやり取りしながらアレンジを進めていくという手法を採用していたようですね。

なお、ここ数年パットはアルバムをリリースする直後にスコアが発売されてますが、あれは誰かが耳コピしたんじゃなくておそらくSiberiusのデータを元にしているのではないかと思います。(スコアでこの金額ということは、採譜する人の人件費は掛かっていないのではないかと思います)

Orchestrion CD Orchestrion スコア
Orchestrion

Orchestrion

Pat Metheny: Orchestrion: the Complete Score

Pat Metheny: Orchestrion: the Complete Score

WAY Up CD WAY Up スコア
THE WAY UP

THE WAY UP

Pat Metheny Group: The Way Up (Pvg)

Pat Metheny Group: The Way Up (Pvg)

自筆で文字を書くのは年賀状の裏面の「ことしもよろしくお願いします」くらいのサカウエですが、譜面もいずれ書けなくなったら・・と心配してます。

というわけで今回も具体的な「耳コピ上達のヒント」を紹介できずに終わってしまいましたが、次回は必ずや・・・・それではまた。

*1:ビートルズはバリピッチという手法を使い意欲的に音程を変化させています。

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