『まどマギ』『タイバニ』テレビ局から見たヒットの背景【前編】」を読んだ。
毎日放送(MBS)のプロデューサー、丸山博雄氏のインタビューだ。


こういう一文があった。

僕はアニメ担当になってある時期から、毛色の違う作品同士をあえて交互に編成することを意識しました。深夜番組枠が4つあるとしたら、その4段編成で男性向け、女性向けと、交互にやってみたり。一般的な考え方としては、同じ傾向の作品を固めて編成するほうが、お客さんの層が同じだから相乗効果が高いと言われていますけれども、そこをあえてシャッフルして。


今回は、これまでのラインナップからTBSとMBSの方針の違いを見ていきたい。
この記事を読む前に、最初に挙げたインタビューのほうを読んでもらうことをおすすめする。

これが10春~12春のノイタミナ(フジ)、TBS木曜深夜枠、MBS木曜深夜枠、アニメシャワー(MBS)のラインナップだ。 

アニメ枠2


(1)ターゲットを絞らないMBS
インタビューで取り上げられていたのは11春のアニメシャワー。

タイバニのときに僕が組んだ編成は、関西のタイムテーブルなんですけど、タイバニ、「DOG DAYS」、「よんでますよ、アザゼルさん」で、一番下が「灼眼のシャナ」の再放送。男子向け・男子、女子・男子という風に組んだつもりでした。フタを開けてみたら、女子・男子、女子・男子みたいになっていたという。

タイバニが意外に女性人気が高くなり、結果として女性向けと男性向けが交互になったのだという。
一方で、アザゼルさん/変ゼミを当初から女性向けで狙っていたというのが意外だったが・・・ 

アニメシャワーは主にTBS製作またはUHF系の作品が入っていることが多く、自社製作の作品は少ない枠。そのせいかクールによっては男性向けばかりのようなクールもあったりするが、来期だといきなりジャンプ原作の黒子が最初に入ってきているのが印象的。

木曜深夜枠は1枠目は全部自社製作。2枠目はえん魔くんから全て自社製作になった。こちらはアニメシャワーより女性向けと男性向けが交互に混ざっていることが多く見られる。

「男性向け」「女性向け」だけでなく、えん魔くんやモーレツ宇宙海賊のような、若干ターゲット年齢が高そうな作品も混ざっている。

最近は月曜深夜枠が新設され、萌え系一辺倒なTBS製作の作品を月曜深夜に回すようになったことで、男性向け・女性向けを交互にやるという編成が達成しやすくなるのではないかと思う。

インタビューによれば、この交互の編成によって、本来とは違ったターゲット層が食いつくという「偶然の出会い」を狙っているという。


(2)ターゲットを絞るTBS
一方、TBS木曜深夜枠(2つともずっと自社製作)は萌えアニメが非常に多い。

例外はある。10春はおお振り2(MBSと共同製作)、メイド様と女性向け作品が2つ固まった。表にないところでは「xxxHOLiC」「Pandora Hearts」など、たまに女性向けと思われる作品を打ち出してきていた。

しかし11年以降のラインナップを見ると見事に萌えアニメ一辺倒。推測の域を出ないが、これはノイタミナが10春から2枠化したことが原因かと思っている。ノイタミナの2枠目とTBS木曜深夜枠の1枠目は放送時間が被るため、それとの差別化を図ったものではないか(※1)。10春は2枠化していきなりだったから対処できなかったが、ノイタミナ2枠目が定着するにしたがって、TBS木曜深夜1枠目はライトな萌え系に絞ってやっているという印象。

一方でMBSアニメシャワーもTVOの作品群と被ることが多いのだが、TVOは関西の中でも視聴地域が狭いのでそういうラインナップの被りは考慮しないでやっているのだろうか。

TBS編成方針


また、放送枠の順番についても意識しているという。

そういえば、ひだまり・キルミー・あっちこっちと、きらら系4コマアニメは大抵上段に配置しているのに対して、けいおん一期は下段に配置されていた。「京アニ作品だから注目度が高く、それを目当てに上段の作品も見てくれる」ということを意識していたのだろうか。



このように、同じJNN系列でもTBSとMBSでラインナップのとりかたが大きく違うことがわかる。他の局についてもまた見ていきたいが、それはまた次の機会に。


(※1)
「でも最近のノイタミナも萌え要素多くなったよね」とよく言われている。確かに「あの花 」などは10春以前のノイタミナなら無かったであろう作品だが、かといってTBS木曜深夜枠であの花やBRSやギルクラをやれるか、といったらまた違うと思う。多少美少女要素を含んでいても、ノイタミナ作品はTBS木曜深夜の作品と明確に方向性が違うものになっている。