
最初に注意が必要なこととして、物語の時間軸が交錯していて途中で迷ってしまうと思われますが、これは気にしなくて良いことです。と、言い切ってしまいます。理由は、ホストの受ける感覚を観客にも理解してもらおうとの演出で、実際に起きた事柄の前後関係がわからなくなってしまった状態でいたほうが、より楽しめると僕は思うからです。同じ理由でループするセリフの不自然さも、全裸で「モノ」として扱われる屈辱感も、ホストたちの見せる表情に違和感を感じるのも演出です。
そして、目をそむけたくなるような暴力シーンも必要以上に感じるかもしれませんが、これも計算されたものだと思います。というのは、作品が「リメイク物」で、現代の状況に照らし合わせると「こんなもの」じゃないかという製作者からのサジェスチョンだと思うからです。
例えば、モンスターを倒しまくって爽快になるゲームがありますが、あれは対象が「人間ではない」だけで、大量殺戮に変わりはないと思います。相手が人間でなければ、「残酷ではない」という解釈です。あるいは、乗り物(ロボットを含む)を破壊したり、建物が倒壊すれば、必ずそこで負傷・死亡する人間がいるはずなのですが、直接の描写がなければ問題がないのが、現在(2019年)のエンターテインメントの作り方で、そういうものばかりだと言っても過言ではないと思うのです。
特殊メイクでホストを演じていた1973年の映画の頃より、CG全盛の現代はそういう意味で残虐性は驚くほど増していると思われ、更に先に進んだロボットがエンタテインメント事業に進出する頃はもっと残酷なものが喜ばれるようになっている可能性は否定できないと思います。繰り返しますが、相手が「人間でなければ」タガが外れてしまう現象はすでに起きているのです。
そういうものをふまえて、「では、A.I.側はどういう反応をするのか」と問いかけをする前に、観客にA.I.の体験を共有してもらう必要があると考えられるのです。ですから、この作品を視聴して、途中から気分を害されたり不愉快な思いをされたなら、それは製作者の意図する通りの反応で、その状態のママ最後まで視聴されることをおすすめします。