ポイントとなる日付は2つある。2月14日と3月末だ。
2月14日には、東京電力が債務超過に陥る可能性がある。それを回避するために、東電は国から6900億円の追加支援を受けようと必死だ。もちろんこの追加支援の資金源は国民が支払った税金だ。
3月末には、東電の今後の経営方針を示す事業計画が発表される。この事業計画で、東電は国から1兆円の資金を引き出そうとしている。
ここ数日、この2つの日付を巡る、東電と政府の対立が報じられている。
▼新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか (PHP新書)
被災者への賠償金のための援助金を、支払わうず、決算に計上して債務超過を逃れようとする東電
2月14日の決算で債務超過となることを避けるために、10日に東電は国から6900億円の資金援助を受ける予定だった。だが枝野経産大臣は、東電側の態度を批判し、援助の日付を先送りしている。
この6900億円は、賠償に当てるためのお金だ。
だ が、東電はこれまで国から賠償のためとして受け取った8900億円のうち、わずか4000億円に満たない金額しか、まだ実際に支払っていない。残り約 5000億円はまだ東電の金庫の中にある。今度、東電が国から6900億円を受け取った場合、およそ1兆2000億円が東電の金庫に貯まることにな る。
もちろんこの1兆2000億円は被災者への賠償に当てなくてはいけないお金だ。そしてこれは、国民が支払った税金だ。
だが、東電はこの金額を未だ支払わず、浮いているお金として、決算に計上し、債務超過を避けようとしている思惑があると、報道各紙は受け取って報じている。
被災者に支払うべきお金を、支払わず、それを利用して、債務超過を回避しようなどということが事実ならば、言語道断ではないか。なぜ被災者が手に入れられるお金を手に入れず苦しみ続けている中で、そのお金を利用して東電が生き延びることなど、許されない。
これは、政権と東電の戦いではない。国民と東電の戦いだ。
3月末の「事業計画」に盛り込む、国の東電への出資を巡る、経産省と財務省の責任のなすりつけ
3月末は、東電の今後を決める、もっとも重要なポイントになることは間違いない。
3月末には、東電と原子力損害賠償支援機構が共同で作成する「事業計画」が発表される。このブログでもずっと取り上げ続けているのでみなさんはもう耳にたこができているかもしれないが、繰り返し書かせていただこうと思います。
この事業計画は、東電を復活させるために行おうとしているものです。
そのための以下の2点が盛り込まれています。
●家庭用電気料金の値上げ
●柏崎刈羽原発の再稼働
この2つはワンセットです。値上げした上で、原発再稼働なのです。
だけどこれは、東電が「やりたい」といったところで、世論が強く反発することでしょう。つまり、見通しが全く立たないワンセットなのです。
この2つをワンセットにして行うことで、東電の経営を立ち直らせる「見通しが立たない見通し」を立て、その上で、国や銀行から資金を援助してもらう算段です。これを行わなければ東電は、再建できないというわけです。
原 発事故の収束もままならず、未だ事故原因の解明も出来ていない状況で、原発再稼働を経営方針としようとしているわけです。そのために、西沢社長は、理解を 得られるまで何度でも柏崎刈羽原発再稼働について説明に行く、と表明しています。そんな余裕があるなら、事故の謝罪のために毎日でも被災地に足を運んでい ただきたいものです。
賠償もろくに行っていない状況で、原発再稼働の理解をえようと説明に伺うなどとうそぶく西沢社長、東京電力の経営陣の考え方を今一度私たちは、強く批判する時期にあるのではないか、と僕は思っています。
そんな、状況の中で、東電と政府の対立が起きています。
事業計画策定後の、国から東電への資金注入の量のついてです。
全く馬鹿げた事です。なぜなら、この資金注入は、
●家庭用電気料金値上げ
●柏崎刈羽原発の再稼働
をワンセットにして「事業計画」に盛り込むことが前提のことだからです。
そんな、見苦しい国と東電の戦いを見ていきましょう。
報道の差異まとめ
▼「焦点は「議決権」、東電経営めぐる対立」 News i - TBSの動画ニュースサイト
『東京電力が発表した大口契約の電気料金の値上げに対し、企業や自治体などから反発が広がっています。さらに、今後の東電の経営をめぐって、政府や関係者の間で対立が浮き彫りとなっています。焦点は「議決権」です。』
まずは最初のポイント、2月14日に関する内容です。
大口契約の電気料金の値上げは、何の説明もなく突然行われました。その際の西沢社長の発言「当然の権利」に経済界、そして政府は反発を強めているというわけですね。それが、10日の国から東電への6900億円の資金援助の先送りに繋がっているというわけです。
『10日、経済産業省を訪れた東京都の猪瀬副知事。東電が決めた大口契約の電気料金の値上げについて、「根拠や経営合理化の具体的内容が示されなければ安易には容認できない」という要望書を、神奈川県や埼玉県などと連名で提出』
『「(東電のあり方を)きちんとしていただかないと、こちらとしてはなかなか値上げを受け入れることはできません」(東京都・猪瀬直樹副知事)』
まあ、当然のことです。だがこれは微妙な問題をはらんでいますね。それは柏崎刈羽の原発再稼働です。東電の立場からすれば、柏崎刈羽原発をなるべく早く再稼働出来れば電気料金を下げられるので、皆様を安心させることができます、と言いたいところでしょう。
さて、ここからが、3月末の「事業計画」策定後の、国から東電への1兆円規模の資本注入の額を巡る交渉です。
『こうした中、政府は東電に対して1兆円規模の資本注入を行う方針ですが、その方法をめぐって関係者の間で対立が続いています。焦点は「議決権」です。』
資
本注入は、東電の株を国が買うことを通して、行われます。つまり買取る株の量によって、株式総会における議決において、国が占める投票数に違いが生まれま
す。つまり国が握る「東電の経営権」に違いが生まれるというわけです。たくさんの金額を国が東電に注入すれば、強い経営権を握れます。少なければ、それな
りの経営権を握ることになるわけです。
『「(国が議決権)3分の1(取得)はあり得ないことではない」(東京電力首脳)』
東電は、国が3分の1の議決権を握ることは、認めてやってもいいよ、と言っているというわけです。お金をもらう側が偉そうなことを言っているというわけです。国民からすれば、少なくとも僕は、うだうだ行ってるなら金やるなよ、と言いたいところです。
この東電の偉そうな態度に枝野経産大臣が反発しているとのことです。
『「今ごろ何を言っているんだ。あまりにも空気を読んでいない」(枝野経産相)』
『「新生東電に生まれ変わろうという意思が全く示せていないのが、今の私の東電に対する評価です」(枝野幸男 経産相)(10日17:15)』
なんだろうこの国は。こんな大事なことについて「空気を読んでいない」という言葉で大臣が批判するのですねえ。世界中の人が理解できる明確な言葉で批判していただきたいものです。
▼枝野氏Vs東電 出資比率で対立激化 (1/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)
さて、上述した、「議決権」のわかり易い説明の図がありました。
■株の保有比率と経営への影響力
●3分の1以上・・・重要決議の阻止(否決権があるにすぎない)
●過半数・・・取締の選任や解任。決算の承認(社内の経営を支配)
●3分の2以上・・・会社の分割や合併、定款変更(会社そのもののあり方を支配)
ざっくり説明するとこんな感じでしょうか。
『東電への不信を強める枝野氏は、経営トップの取締役解任などができる50%超の過半数にとどまらず、東電解体を政府単独で議決できる「3分の2以上」を譲らぬ構えだ。』
枝野経産大臣と経産省は東電を、完璧に支配して、思うようにしたいということのようです。おそらくこれが今のところ国民の多くが期待していることの
ように思います(もちろん違う人もいるでしょう)。つまり電力自由化、送配電部門の分離、などを可能にするためには、3分の2以上が必要となります。
『公的資金による資本増強策を盛り込む3月末の総合特別事業計画の取りまとめに向け、調整の一段の難航は必至』
まあ、そういうことですね。
『現在の株価で1兆円の公的資金を普通株で注入すれば、政府の議決権は「3分の2以上」となる。枝野氏は、「事業者としての権利」として値上げを強行する東電に不信を募らせているほか、「東電の発電と送電部門を分離させる電力制度改革につなげようとしている」(政府関係者)との見方は強い。』
『これに対し、東電は「民間であり続けたい」(首脳)とし、議決権のない優先株による注入を主張。反発覚悟の値上げ強行も、「自力で収益力を高めるという自主経営へのこだわりの表われ」(業界関係者)とみられる。』
『政府内には、安住淳財務相が9日の閣議後会見で「東電にはしっかりと責任を果たしてもらいたい」と述べたように、財務省は国の負担が膨らみかねない国有化には否定的だ。1兆円の追加融資を要請されている銀行団も「国の関与」に抵抗感が強く、東電は財務省と銀行団の意向を頼みとしている。』
●財務省・銀行団・・・3分の1の株式保有でいいじゃん。
●枝野経産大臣・経産省・・・3分の2の株式保有じゃなきゃだめだ。
という対立があるようですねえ。
『両者の隔たりがなお大きいなか、最終的には「50%超」の攻防になるとの見方も出ている。』
責任の押し付け合い、を「攻防」としているメディアの表現の、なんと馬鹿馬鹿しいことでしょうか。
時事通信が、賠償資金の支援と東電の決算の関係について報じています。
▼時事ドットコム:東電追加支援、来週認可=賠償重視、公的資金投入1.6兆円へ-政府
『 政府は10日、東京電力が福島第1原発事故の賠償資金として申請した6900億円の追加支援について、来週に認可する方向で最終調整に入った。』
来週に認可するという方向とのこと。
2月14日が、東電の決算日です。13日なのか14日なのか15日以降なのかで随分状況が変わってくるのではないかと思います。つまり、枝野経産大臣は、東電を脅しているわけですね。脅しながら、水面下で交渉を進めている、ということになります。
水面下では、
●東電と政府の思惑のぶつかり
●財務省と経産省の思惑のぶつかり
があるのではないか、ということになりますね。
『枝野幸男経済産業相は東電に一段の経営改革を促すため、同日の認可を見送ったが、被害者に対する賠償金支払いの円滑化を図ることを重視。13日以降に追加支援の前提となる東電の事業計画を認定する見込みだ。』
13日以降という表現ですねえ。
『 この認定を受けて原子力損害賠償支援機構が追加支援を実施すれば、東電に対する公的資金の投入額は昨年11月分と合わせて1兆6000億円近くに達する。』
このうち1兆2000億円が支払われず、東電の金庫に眠る、ということになります。
『東電は原発停止に伴う火力発電燃料費の増加で財務体質が著しく悪化しているが、追加支援を受けることで債務超過に迫る事態を回避する。政府の認定を受け次第、東電は2011年4~12月期連結決算を公表する。(2012/02/10-19:03)』
政府から資金援助の認定を受け次第、決算を発表するという流れです。なぜ、政府からの資金援助の認定を受ける前に、決算を公表しないのか。
公表するとマズイ決算だからです。債務超過の可能性があるから、ということになります。
つまり、使用目的が賠償金である6900億円を金庫に入れないと、債務超過を免れえないということになるわけです。東電は、支払うべき賠償金、つまり自分のお金ではないお金を財布に入れて「うちにはまだお金があるから大丈夫だ」と言い張っているというわけです。
▼東電VS政府、議決権で攻防 見えぬ妥協点 支援認定先送り (1/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)
『安住淳財務相は同日の閣議後会見で「国民負担をできるだけ少なくすると同時に、東電にはしっかりと責任を果たしてもらいたい」と東電寄りの姿勢』
『実質国有化で、賠償や廃炉などの責任を全て国が負いかねないとの警戒からだ。』
財務省は、責任を自分たちが負いたくないですよ、と逃げの姿勢ですね。
▼東京電力:資本注入で攻防続く 政府内にも慎重論 - 毎日jp(毎日新聞)
『 枝野経産相や機構は「議決権のない資本注入は単なる資金のプレゼントだ」(機構幹部)として、経営陣の刷新や事業改革を抜本的に進めるた め、定款変更など重要事項を決議できる3分の2超の議決権取得を目指してきた。東電は11年4~12月期決算の発表期限を14日に控えている。追加の賠償 支援資金約6900億円を受け取らなければ債務超過ギリギリになるが、枝野経産相は「(賠償資金は)決算対策のお金ではない」と突き放す。』
また胡散臭い表現ですねえ。「債務超過ギリギリになる」とは、債務超過にならない、という意味でしょうか、債務超過になるという意味でしょうか。つまりメディアは、このあたりの数値を把握出来ていないわけですね。だから僕と同じで、あいまいに表現せざるをえないわけです。最近こういったメディアの心理がよくわかるようになってきました(笑)
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それぞれが経験(感じたこと)を言語にし理論化してゆく事が大切かと思っています。…のでblog楽しみにさせて頂いてます。