【2013年ベスト本】本当におすすめしたい15冊をまとめたよ


 2013年は、例年以上にたくさんの本を読むことができた。理由はいくつか考えられるけれど、最も大きな要因は、間違いなく、Kindle Paperwhiteを購入したこと。

 電子書籍端末があることで、主に外で本を読む時間が増えた。これまでは、外出時の移動時間といえば、だらだらとスマホやiPadをいじっているばかり。

 けれど、読書の専用端末を持ったことで、無為なネットサーフィンの時間が減ったように感じる。加えて、端末ひとつで、何十冊もの本を持ち歩けることも大きい。

 そんな電子書籍で読んだ本も含めて、今年、特に印象的だった本、おもしろかった本、為になった本を15冊、選んでみました。本選びの参考になりましたら幸いです。

『自分を愛する力』乙武洋匡

 『五体不満足』でおなじみ、乙武洋匡(@h_ototake)さんによる「自己肯定感」の話。子育てをしている親御さんはもちろん、まだ「子供」である学生などにも薦めたい作品。

 もっと自分を認めてあげたい、好きになりたい、と思うと同時に、周りの身近な人間をもっと好きになりたい、とも思えた。僕らはもっともっと、素直になってもいいのかもしれない。

『「ひらがな」で話す技術』西任暁子

 一時間くらいで読み終えた。思わず「分かる分かる!」と頷いてしまう例が多く、自分の意思を話すことに対して不安を感じている身としてはは、読んでいてとても元気付けられた。

 何よりも大切なことは、「相手」を意識した話し方。話すことは「音」を出すことだという意識が普段は全くなかったので、「話す」という行為そのものを見直すきっかけとしたい。

『知的複眼思考法』苅谷剛彦

 タイトルのように、ものに対する「考え方」を養う本であるが、情報の受け取り方やものの見方、問題提起の手段など、非常に広い示唆に富んでいる。何かを論ずるに当たって、このような思考法は知っておけば間違いなく力になると思う。

 そんな内容を鑑みれば、自分なりの視点から、物事に関する考えを日常的に綴っているような、ブロガー向けの内容でもあるかもしれない。

『中の人などいない@NHK広報のツイートはなぜユルい?』NHK_PR1号

 Twitterの「軟式アカウント」代表、NHK_PR1号(@NHK_PR)さんによる手記。ツイートと同じく非常にユルい文章で、すらすらと読むことができる。 

 内容は、積極的に参考にできるようなものではないが、Twitterの本質を捉えているように感じた。Twitterだけでなく、メディアの在り方や、組織と人の関係性などについても考えさせられる、なかなかに刺激的な著作。

『ニートの歩き方』pha

 「ニート」について語るとき、たびたびメディアなどでも取り上げられるphaさん。彼による、「だるい」人のための考え方の指南書。

 単なるニートの生活記録かと思いきや、現代日本社会における「当たり前」に真っ向から突っ込んだ内容。普段の生活に息苦しさを感じている人に、「無理すんな」と語りかけているような、そんな印象。世代や職業など関係なしに、自分を見つめ直す機会を与えてくれる本だと思う。

『脱社畜の働き方』日野瑛太郎

 本書が勧めるのは、社畜として諦めるのでもなく、立ち向かうのでもなく、さっさと辞めてしまうのでもなく、会社とうまく「付き合う」ための、「脱社畜」という考え方。そのような意味では、「社畜」であることが辛い人や、それに疑問を感じている人にとっての、処方箋となり得るのでは。

『ナリワイをつくる』伊藤洋志

 普段の生活の中から仕事を生み出し働く、「ナリワイ」という価値観を提供してくれる。「ナリワイ」という在り方を積極的に薦めてはいるが、どちらかと言えば、「本当にそれでいいの?」といった風の、示唆に富んでいるように感じた。

 会社に属してひとつの仕事を続けることのリスクや、起業時の「常識」など、一般的には「当たり前」だと考えられてきたことに対して疑問を投げかける部分も。『ニートの歩き方』『ノマドと社畜』などと同じく、それまでの仕事観の「当たり前」とは異なる可能性を示しており、とても有意義な内容であると思う。

『とんび』重松清

 男手一つで息子を育て上げた、父と子の半生を描いた物語。作者は、僕の大好きな作家の一人である、重松清さん。今年の始め頃、ドラマもやっていましたね。

 これこれ。この、読んでいてあったかくなる感じが、重松さんの作品なんすよ。2人を見守る和尚の言葉が、いちいち胸に染みて憎い。実家に帰ったら、もっと親孝行しよう。そんなことを思わせてくれる。

 普段はあまり意識しないけれど、子供に限らず、人はみんな周りの人間に支えられて生きている。ご近所付き合いが減ったと嘆かれる現代でも、それは変わっていないと思う。

『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子

 自分の姿は一切見せず、からくり人形を操り、チェスを指し続ける少年の物語。読み終わった瞬間、思わず、溜息がほわーっと出た。

 著者は、『博士の愛した数式』で有名な小川洋子さん。『博士の愛した数式』における数学と同じく、題材であるチェスには全く興味がなかった僕だけれど、最初から最後まで楽しく読めた。

 主人公の周りの人物がみんな暖かく、読み進める中でぽかぽかしてくる。場面場面で浮かぶ幼い日の情景が美しく、暖かく、心地良い。

『何者』朝井リョウ

 ちょっと前に就活を経験していたこともあり、「こんなヤツいたわー!ウケるわ―ww」などとニヤけながら読み進めていたところ、最後の最後に打ちのめされた。

 就活という大きな流れに相対したとき。その流れに乗って立ち向かう人がいる。避けて別の道を探す人がいる。そして、どちらにもつけずに停滞する人がいる。周りを見ながら、いつか自分が夢見た「何か」になれる日を待っている。

 でも僕は僕でしかないし、変わることなんてできっこない。だからこれは、きっと『何者』にもなれない、ぼくらのものがたり。

『南極点のピアピア動画』野尻抱介

 表紙とタイトルでお察しの通り、ボーカロイドとニコニコ動画をテーマにした作品であり、そして、その担い手であるユーザーたちの物語。SF作品を読んだのはかなーり久しぶりだったけれど、「そうだよ!この未知の世界へのわくわく感がSFだよ!」と思わせてくれるような作品。

 他方では、CGMを始めとする、インターネットコンテンツの可能性を感じさせてくれるものでもある。本書に登場する「ピアピア動画」は、現在のニコニコ動画を発展させたようなものとなっており、読んでいて「おもしろそう!」「参加したい!」と思える仕組みがたくさんあった。

『ゆめにっき』日日日

 原作は、人気のフリーゲーム、『ゆめにっき』。その小説版がこちら。小説版の著者は、日日日さん*1。原作ファンとして、「そんな解釈もありなのかー!」とびっくりさせられた。非常におもしろい。★5つをあげたいくらい。

 「夢」というキーワードから、関わりの深い心理学と夢分析を繋ぎ合わせて生み出された、「わたし」と「あなた」の物語。原作を知らない人でも読み物としては楽しめると思うが、ゲームのあの世界観を体験した上で読むのと読まないのとでは、全く違ってくると思う。

『ゴールデンタイム』竹宮ゆゆこ

 騙された。びっくりした。結構な数のラノベを読んできていると自負しているが、7巻の読後の衝撃が過去最高級でござった。分かる人にはネタバレになっちゃうけれど、まさか学園モノのラノベで、ミステリーでお馴染みの「アレ」を使ってくるとは思わなかった。

 それを抜きにしても、ラノベ好きにはもちろん、一般の青春モノが好きな人には、全力でオススメできる作品。特に、「人間関係」の話が好きな人には。なんでもない、ただの大学生の男女5人をメインにした物語なのだけれど、主人公に「記憶喪失」の設定を加えただけで、いろいろゴタゴタのドロドロになっておもしろい。

 その記憶喪失設定も、ありきたりなものではなく、「そういう使い方もありか!」と思わせるスパイスとなっており、一度読み出したら、止まらなくなること請け合い。

『サンキュー・マイフレンド』晋太郎

 電子書籍情報サイト、きんどうさんが主催していた無料キャンペーン中に、ダウンロードした電子書籍。

 「お互いの泣き顔を知ってるってことは、僕たちにとって大きな財産になるような気がする。それだけ僕たちが近くにいたってことの、心を見せあってたってことの、証になるから」

 この部分が、すっごい好き。親友っていいなあ。

『クレイジーキルト』西直、もふやま

 先日書いた記事に頂いたブックマークコメントを見て、そのまま勢いで購入、読んだ作品。はてなハイクユーザーの5人による、短編集。なんというか、著者ごとに独特の雰囲気のようなものがあって、それぞれの空気感に浸ることが出来た。

 私的には、西直さんの2作品の雰囲気がとっても好み。どこか現実感がなく、物語の世界観にふわっと意識を飛ばすことができて、たまらない。それぞれは独立した話だけれど、一気に読むと読後のふんわり感をより感じられるかも。

 

過去の年間おすすめ本まとめ

*1:代表作:『狂乱家族日記』『ささみさん@がんばらない』