フランス製ロボット


 『PLUTO』のお話に、ちょっとだけ付け加えます。

 この作品、秀逸だと思いますから完結したら(エプシロンもやられたし、そろそろですね)またゆっくり考えたいのですが、ふたつ非常に気になるところがあります。

 まずは、「悪」の側の大物(のひとり?)が「ダリウス」なんて名前だったりして、もろに実在のイスラム圏のあの国、ということになるのがかなり気になります。これはこれでひとつの思想を示すことになっているのかもしれませんが・・・ まあ理念的な意味での悪であって、悪というよりも「影」みたいなものなのですけど・・・ これが究極的に妥当、ということが分かってしまったりしたら怖いんですが・・・ ただトラキアってのがアメリカなので・・・ ま、完結まで待ちましょう。

 もうひとつ気になるのは、もちろん「フランス語系人のBO-YA-KI」ブログですもの 
(^_^;) :

この作品には、どうもフランス製高性能ロボットって登場させにくい感じがする

ということです。

なぜでしょうね?・・・

 なんか「背負ってる」ものがないとこの作品には入れてもらえないのでしょうか?
 フランスのハイテクには信用がない、ってことでしょうか? (^_^;)
 それとも「ロボット」という概念が、なんか「フランス」のステレオタイプ・イメージと相いれないところがあるということでしょうか?

 でてくる7つの高性能ロボットの製造国はスイス、イギリス、ドイツ、トルコ、ギリシャ、オーストラリア、日本、ですね。これは手塚治虫の原作も同じだったと思います。

 スイスのは「モンブラン」て名前なので、地理的に言えばスイスというより半分フランス、半分イタリアってことになりますが(どういう意味だ?)、このロボットはあんまり人間の顔はしてません。明らかに出自は万年筆ですね。(^_^;)
 イギリスの「ノース二号」っていうのはずいぶん異様な格好でどうでもよさそう。人間というより「執事」か「従僕」なんでしょうか。

 あとの5人(体)が全く人間型です。
 トルコ・ロボットもあんまりトルコ的なところを感じさせませんが、これはギリシャとペアにして非常に古代的な戦士(トロイア戦争の?)をイメージさせるための登場でしょう。ギリシャ・ロボットはそのものずばり「ヘラクレス」ですもんね。

 ドイツはロボット出身国としても非常に存在感持っちゃいますね。この作品でゲジヒトがアトム以上に活躍したのはもっともです。
 もうひとつ(ひとり?)はエプシロンです。この人(? でも他に言いようがない・・・)がオーストラリア出身とは最近まで知りませんでしたが、「徴兵忌避」(などというのは「人間」がやるのでなければ意味がない?ような判断ではないでしょうか)を行う彼は、たしかにそういうポジションの存在なのでしょう。

 他の作品を探せば、フランスの高性能ロボット(に近い存在)としては石ノ森章太郎のサイボーグ003がいますけどね。ただ彼女(というのはいちおう元々人間なのだからいいですね)はわたしにはあんまりフランス「人」という感じがしないです・・・ (フランスということだけど全然フランスに見えない、という経験としては他に竹宮惠子の『風と木の詩』の登場人物がわたしにはとてもフランス「人」とは思えないので20ページも読めなかった記憶があります・・・ 一般にはずいぶん評価の高い作品だと思うので残念ですが)

 Wikipediaで知ったんですが、石ノ森作品では主役の009以外では003だけが生殖能力が確認されてるんですね。 (^_^;) この設定って、「フランス」のステレオタイプ・イメージと無縁とは思えません・・・

 とにかく、一般読者向けマンガという、なんでもできそうでいて意外と拘束の強いジャンルのもつ大限界のひとつだと思いますが、ステレオタイプ・イメージをはずれるキャラクターというのはなかなか登場させられないし、下手に出すと作品が成立しなくなってしまうように思います。

 ステレオタイプ・イメージというのは、弊害は大きいですが、あるだけましということもある意味で言えるかもしれません。「アルジェリア・ロボット」なんてものが日本人の想像界の中に現れるのはいつの日か。 (^_^;)
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コメント
 
 
 
トーマの心臓 (raidaisuki)
2008-07-25 12:32:00

 『風と木の詩』が読めなかった、という話を書きましたが、たとえば『トーマの心臓』はよく読めましたですね。わたしドイツあんまり知らないし。

 こういうのは、単にその舞台となっている土地と人の気質になじみがあるかないかで決定的に変わると思います。
 
 
 
フランス製ロボット (umeboshi)
2008-07-29 11:36:09
フランス製高性能ロボットといえば、ほら、ヴィリエ・ド・リラダン『未来のイヴ』のアダリーがあるではないですか?
『PULUTO』のこれからの展開も気になるところですが、『イノセンスというアニメ映画』(何と「アダリー型アンドロイド」なんていうのが出てくるのです!)をきっかけに、私今いい年をして『攻殻機動隊S.A.C.』にはまっています。
 
 
 
11月のギムナジウム (あるてんべるく)
2008-07-31 14:03:25
そういえば私の場合『トーマの心臓』は原型の『11月のギムナジウム』も含めて今は読めません。なるほど。昔はあんなに熱心に読んだのに。
今にして思うと、1970年代の少女マンガに出てくる外国イメージって、万博のパビリオンや外国映画の切り貼りなんではないかと思ってみたりします。
『天使のセレナーデ』だったかな?東西ドイツをモデルにした「ライン国」が舞台だったんですよ~。そういえばラストシーンでは統一してましたが・・
 
 
 
すみません・・・ (raidaisuki)
2011-01-31 17:10:17
umeboshiさま、アルテンベルクさま

コメントをいただいていたのに今頃(2011年1月31日)気づきました。失礼いたしました。
m(_ _)m

マンガ、アニメのキャラクターって、実写映画の登場人物以上に「大衆的形象」なんだと思います。
umeboshiさんの言われる通りリラダンのイヴがフランスにありますが・・・うーんあれは19世紀のフランスという感じでしょうか。モーパッサンが「オルラ」を怖がってたような(あれはエイリアンもののはしりですね)時代のフランスです。
 
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