世界変動展望

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崩壊・STAP論文:/上(その2止) サインだけの共著者 チーム内も議論少なく

2013-02-28 23:06:53 | ç¤¾ä¼š

<1面からつづく>

 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)は、全国9カ所に散らばる理研の研究エリアの中 でも「理想的な研究所」として知られる。若手や女性の研究リーダーを積極的に採用し、有名科学誌に数多くの論文が発表されてきた。中でも、研究室間の風通 しの良さが特徴だ。CDB出身で、若手登用の「成功例」とも言われる斎藤通紀・京都大教授は「いろんな分野の人とオープンに議論でき、共同研究もしやす い」と語る。だが、STAP細胞研究は例外だった。

 小保方(おぼかた)晴子・理研研究ユニットリーダー(30)は2010年、若山照彦・CDBチームリー ダー(当時、現山梨大教授)の研究室の客員研究員としてCDBにやってきた。11年末、若山教授が、小保方氏が作製した細胞を使い、万能性証明の決め手と なる全身にSTAP細胞由来の細胞が散らばるマウス(キメラマウス)作りに成功したとなると、CDBの幹部は色めき立った。「これは面白い」

 iPS細胞に代わりうる新たな万能細胞の登場であれば、ノーベル賞級の衝撃を与える可能性を秘める。 CDBは、この研究の将来性を見込んで小保方氏を研究ユニットリーダーに採用するなど、特別な位置付けのプロジェクトになっていった。別の共著者は振り返 る。「小保方氏がCDBへ行ってから、研究に関する情報が入らなくなった」

 さらに、研究チーム内でも、研究内容やデータを議論する機会が少なかったとみられる。発表されたSTAP細胞の論文2本には14人の研究者が名を連ねるが、中には論文の実験や解析に全くかかわっていない「共著者」がいたことが、取材で明らかになった。

 その研究者は「自分はSTAP細胞研究には携わっていず、論文中のデータにも一切貢献はしていない。草 稿も見ていない。共著者の一人に頼まれて(論文投稿に必要な著者としての)サインをした」と明かす。疑惑だらけの論文になってしまった今、後悔する。 「(サインを)迷うべきだったかもしれない」

 「オープンな議論」が売りだったはずのCDBの共著者らは、ずさんな論文を見逃した経緯について取材に 応じていない。再生医療に詳しい研究者は「若手研究者を育てるため、論文の原稿を仕上げる部分は協力していたものの、データのチェックが十分でなかった可 能性がある」と話す。

 

  研究倫理に詳しい御園生誠・東京大名誉教授は「共同研究者は当然、生データをベースに議論すべきだし、 それを怠ったとすれば問題だ。不正行為に直接手を出していなくても、指導的立場にあったシニアの研究者たちの責任は、小保方さんと同等以上に重い」と話 す。【須田桃子、斎藤広子、八田浩輔】

 ◇新法人指定目指しスピード報告

 「調査の中身を世の中の人がどう受け止めるかだ」

 理研のSTAP細胞論文に関する最終報告発表の前夜、文部科学省幹部の表情は明るくはなかった。

 文科省は、理研の「特定国立研究開発法人」指定のため、今回の論文疑惑について早期の決着を目指してい た。新法人は国家戦略に基づき世界トップレベルの研究成果を生み出すことを狙ったもので、海外からも優秀な人材を確保する柔軟な給与設定ができる制度。理 研も指定候補だが、STAP細胞の論文疑惑が世間の関心を集め、政府内からも理研の指定に「国民の理解が得られるのか」との疑問が相次いだ。

 このため文科省は4月中旬までの閣議決定を目指し、下村博文文科相は先月20日、理研に対し「4月中旬 までに最終報告を出す」ことを要請。その結果、中間報告からわずか半月というスピードで、1日に最終報告が公表された。文科省幹部は「新法人指定を意識し て、理研も頑張った」と語る。だが同日夕、下村文科相は理研の野依良治理事長と面会した際、「今月中(の閣議決定)は難しい」と告げた。

 菅義偉官房長官も同日、新法人指定について「理研のガバナンス(組織運営力)面を見極めた上で対応したい。再発防止策も含めて判断しなくてはまずいだろうと思う」と語った。

 「レーバー(労働者)からリーダーへ」。昨年4月の同省の審議会で、野依理事長は、研究者が労働力とし てではなく、研究を自ら主導できる環境を整える施策の推進を強く訴えた。山本一太科学技術担当相もその後の記者会見で「今の制度では、野依先生の言葉のよ うな環境はなかなか生まれない。新しい研究開発法人が必要だ」と応じた。

 しかし、自民党行政改革推進本部などは、現在の独立行政法人制度とは別に「特例」を設けるやり方に難色 を示した。昨年末、新法人指定は「極力少数に限定する」などの条件付きで進めることになり、産業技術総合研究所(産総研)とともに2015年度からの移行 を目指す段取りだった。

ところが、そこへ飛び込んできたSTAP論文の不正疑惑。文科省幹部は「STAP問題はタイミングが悪すぎる」と吐き捨て、別の幹部も「新法人の制度をつくろうと文科省が汗をかいたのに、最後に経済産業省所管の産総研だけが指定される事態は避けたい」と語気を強めた。

 下村文科相は野依理事長と会談後、「問題が理研の体質的な部分から起きたのか、外部の第三者の有識者による調査をして、新たな法人に該当するかどうかをみたい」と述べ、新法人指定へのこだわりを見せた。【斎藤有香、大場あい、三木陽介】

毎日新聞 2014年04月02日 大阪朝刊