録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

法治国家日本を破壊するのは、SARVH

2009-11-11 22:22:21 | B-CAS&規制撤廃運動
昨日、ほんのちょっと書いただけなのだけど、やっぱり反応が大きいし、いろいろ記事も出てきているので改めて取り上げるとしよう。


「日本は法治国家なのか」
SARVH、「私的録画補償金」不払いで東芝を提訴 - Culture First 推進91団体が会見


「メーカーの主張は子どものわがまま」 SARVHの東芝提訴受け権利者団体が会見


「補償金制度で訴訟が起こされるのは初めてのこと。一つの節目となる出来事と言えるだろう」
この一言には賛成だ。これ以上、お互いに自分たちの解釈をもとめて要求を突き詰めるばかりではラチが空かない。ここらで判例の一つも作ってもらったほうが具合がいいというものである。なお、わたしは私的録画補償金には反対の立場をとっているため、彼らの主張を否定することを基本として記事を書く。それはご了承願いたい。

「我々の主張が認められなければ文化が成り立たない。そのような結論が成されることはあり得ないと考えている」との自信がどこから来るのか謎だ。文化とは著作権が存在し、使用料が発生するものが100%だと言わんばかりだ。それはありえないように、彼らの主張がそのまま受け入れられることは絶対にあり得ないのである。なかでも一番心に残る発言がこれであろう。

「メーカーは義務を果たさないで権利だけを主張しており、子どものわがままと同じレベル。是正するには、親が子を叱るように、言って聞かせてあげなくてはならない」
すばらしい発言だ。過去にもこの連合は、歴史に残すべき発言を繰り返してきた。
権利者こそが消費者重視、JEITAは見習うべき
補償金制度を廃止し、私的複製も権利者とユーザー間の契約で処理するとすれば、メーカーの負担はゼロになり、その分を消費者のみなさんが支払うことになる。本当にそれでいいのか
普通一般のユーザーから見れば、10回という幅は、何とか不自由なくコピーができる回数、つまり事実上のコピーフリーと同じなんじゃないかと思います
これらに匹敵する、あるいはそれ以上の歴史に残る暴言であろう。なにせ、彼らのいう「言って聞かせ」是正させて実現したいものとは何かとまとめれば
「メディアはもちろん、あらゆるレコーダー、パソコンやメディアにも補償金は付ける」「将来に渡って、新しい技術が出、主流が移るたびに、補償金の対象を移動させる(事実上誰も使わなくなったものは対象外とする)」「補償金は付けるが、それで自由や権利を与えることはしない。よって、規制は続ける」「規制を決める話し合いには一切関与していないことにする」
ようするに、"二者択一ではなく、全部もらう"、"権利は最大にしてもらう"、"主張は全て受け入れさせる"、"責任は一切放棄する"というわけだ。これのどこが大人の対応だと言うのだろうか。これと比べればはるかに「補償対象か否かが明確でない状況で補償金の徴収を行ない、その後、当該機器が補償金徴収の対象外とされた場合、商品購入者に対する補償金の返還が事実上不可能。そのため、当該商品のご購入者から補償金を徴収できないと考える」という東芝の考えの方が何百倍も大人である。この発言からは、「万が一、補償金の対象内と判断された場合、メーカーが支払いに責任を持つ」という態度が感じられるからだ。「払わない」ではなく、「徴収できない」と言っているわけなのだから。

さらに言えば、SARVH側の発言には少なくと三つの嘘が存在する。

1.「権利者に与えられている権利を事実上否定して、その上で話し合いを行おうという姿勢が、果たして正当なものと言えるのか」「法が存在する以上は法を尊重すべきで、将来の制度に対する意見は、見直しに関する議論の中で述べられるべきだ」「このような現行法を無視するような行為を黙過したままでは、日本は本当に法治国家なのかというような危機感さえ覚える」 この三つの発言は連続して行われたもののようだが、まず「与えられている権利」ではなく、経緯はともかく「要求して得た権利」である。まぁそれくらいは目を瞑るとしても、最初の発言で言った"権利"が次の発言ではいつの間にか"法"になっている。団体・業界間の権利の存在は、彼らの言葉を借りれば一種の紳士協定。勝手に法に昇格させないで欲しい。デジタル放送に対し録画・録音補償金を保証する法律などどこに存在するのか。日本全国で適用される法を作ることができるのは国会だけである。"紳士協定"を破ったからといって法治国家の前提が崩れることはない。まして、それが実質"談合"ならば、破る方が他者から見れば正しいとすら言える。
(注:過去に書いたものなのでこのままにしておきますが、著作権法の中にはして記録が補償金に関する項目が存在し、そういう意味では法的根拠は存在します。ですが、法の定義する「録画」とデジタル放送の「保存」は別物であるため、やはりデジタル放送に対し録画補償金を保証する法律など存在しないという解釈で間違っていないよぅです)

2.「これを容認した場合、2011年に地上デジタル完全移行した時点で、これまでの補償金制度の見直しに関する議論が決着しなくても、事実上、補償金制度が機能を停止することを意味しており、到底容認できない」
今回東芝が補償金の支払いを拒否したのは「ハードディスクレコーダー」に対してのみであり、DVDやBDと言ったメディアに対してではない。そもそも最初のうちは補償金はDVDメディアに対してのみ適用されたものであり、それがいつの間にかDVDレコーダーに、ハードディスクレコーダーに、BDにとどんどん拡大されて言ったわけだ。初期のアナログ放送しか扱えなかったDVDレコーダーは、録画補償金対応のメディアでなくとも録画あるいは録画番組のコピーが行えた。現在はCPRM対応のメディアしかレコーダー上ではそれを記録することができなくなっており、事実上録画補償金から逃れることはできない。つまり、昔より絶対に補償金の収入は増えているのだ。さらに、移動壱規制の時代にくらべれば、ダビ10によって、な、なんと10倍もメディアに焼けるようになっており、なんとなーんと10倍もの補償金収入が期待できるではないの! しかも、それを支払わないと言っているメーカーは存在しない。にもかかわらず、「補償金制度の停止を意味する」というのはいったいどこをどう解釈すればそういう結論に達するのか。もちろんわたしは補償金制度は停止すべきと思っているが、メーカーはそう思っていない。今回の訴訟で東芝が勝った場合でも、ハードディスクレコーダーにまで拡大解釈させた補償金分だけが将来廃止へ向かうだけに過ぎない。決して停止を意味していないのだ。

3.「メーカーがコピー制限がかかっているから補償が必要ないというのなら、現在無制限に行われている音楽CDからのコピーにこそ補償の必要性が存在すると言えるが、対象機器に関する制度と実体との乖離が進んだ結果、現在崩壊寸前にある私的録音補償金制度の見直しに応じないのはなぜか」
嘘というよりも、飛躍的論理のすり替えとしかいいようがない。すさまじいこじつけである。そもそも、メディアへの録画と録音では、字面はほぼ同じでも意味が全く違う。録画は放送されている番組を保存するものであるのに対し、この場合の録音は「お金を払って購入したCDなどからダビングして、別の環境で活用するもの」である。録音補償金など、そもそも必要ない。損害はどうやろうとも出ていないのだから。

結局のところ、録画規制の「著作権の保護」が実際には著作権の保護ではなく、商売とその元を自分たちの独占物として保護する「コンテンツ権利の保護」でしかないように、録画・録音補償金も「複製物が氾濫することによって被害が生じる」からなどではなく「著作物をさまざまな形で活用できるほど技術が発達した今、その全てからお金を集めれば莫大な収入になる」という、楽して儲かる金のなる木を生やそうとしているに過ぎない。そもそもの目的は違ったのかも知れないが、今はそうでしかない。だから、
「(ダビ10によって権利者への不利益は発生しないという)そういうことを主張するなら、不利益が生じないことを証明しうる、客観的なデータを示すべきでないか」
などという、俗に言う「悪魔の証明」をしろ、などという絶対不可能なことを言ってくるわけだ。証明できなければ不利益は存在するなどという発言自体子供じみている。先にすでに存在するデータを使って不利益が存在することを証明する方が、どう考えても先だし、説得力も生ずる。それができないのだから、「不利益などそもそも生じていない」そう考えるのが妥当ではないだろうか。


おそらくこの裁判、東芝が勝つ。ただし、それによって録画規制の是非にまで論議が展開することはないだろう。唯一SARVHに狡猾な点を見るとしたら訴訟相手に東芝というただの一企業を選び、JEITAのような同等の連合団体を相手にしなかったことである。勝てば官軍・負けてもあくまで裁判の参考となる個別の対応の例ができたに過ぎず、将来逆転の要素を残すからだ。完全に明文化するより、拡大解釈や間接的主張によって認めさせたほうが、総合的に得になることくらいは知っているようである。「日本は法治国家なのか」などといいながら、この件の法治を一番望んでいないのは、ほかならぬSARVHであろう。
ただ、この件が泥沼化すれば、膿がボロボロ出てくる可能性はありうる。後は、その汚さを国民に知ってもらうだけだ。市橋身柄確保などという大物に虜になっているマスコミ業界だが、是非こちらも大きく取り上げてもらいたい。十分一般大衆の目を引く、面白いニュースになるはずであるが。

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14 コメント

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相手は東芝? (フリオ・イグレシアス)
2009-11-11 22:56:26
たしか来年の春頃にはパナソニックも補償金の支払い時期が来るのですよね?
それまでに今回の裁判が決着しているとも思えず、
SARVHは支払いを拒んだ企業を個別に訴えていくのでしょうか
愚かなことです
あと課長におかしな見解を出された文化庁と、

議論継続を反故にされた経済産業省に動きがないのも気になります
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良い世の中になることを期待 (str)
2009-11-12 08:41:37
私は東芝側の意見に賛成です。
こういった団体は天下りと関係がありそうなので、民主党の改革に期待しています。

書いた内容に不備(スキ)があるといけない、と思ったので、誰か下記のリンクが法律なのかどうか調査をお願いします。
ttp://www.hirokiazuma.com/copyright/law5.html
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Unknown (Unknown)
2009-11-12 11:08:06
B-CASでさえ無意味だった青カードの登録制を廃止したりして悪あがきしてるのに、こいつらときたら・・・・
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Unknown (ATX5000)
2009-11-12 11:12:15
支離滅裂な理不尽な事を強く言って相手を混乱させ、対応を模索してる間に譲歩案を出して手打ちにするやり方。SARVHや著作権団体の連中って経済393だね。口だけ出して金が降ってきたらそりゃ美味しい商売か。
もちろん全員がそうではないだろう。新しい時代にあったコンテンツビジネスを模索し創造する人達もいるわけでそんな人達は今回の件をどう見ているんだろう。
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Unknown (krmmk3)
2009-11-12 22:03:45
>フリオ・イグレシアスさん
東芝とパナソニックを同時に相手にしないためでしょうね。勝てば半自動的にパナソニックは折れるという判断でしょう。巻けたら、個別対応となるでしょうが。文化庁としては、第二のPSEとなることを恐れて「われ関せず」の立場をつらぬくのでは。

>strさん
さすがにSARVHは天下りとは直接関係がなさそうですが。
ありゃ~、これ法律みたいですね。これはまずいなぁ。該当部分は一時保留、後で修正します。

>2009-11-12 11:08:06さん
そもそも青カードで登録する意味は全くなかったので、面倒な作業を省略しただけではないでしょうか。

>ATX5000さん
全く法的根拠がないわけではなかったようです。ただ、解釈があまりに身勝手すぎるところに問題があるようです。
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Unknown (enagoya)
2009-11-13 14:33:24
メーカーの主張は子供のわがまま、ですか。何とまあ。
東芝にはぜひ言い返して欲しかった。
「あなた方に言われたくはない。」
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Unknown (krmmk3)
2009-11-14 01:28:06
>enagoyaさん
どう聞いてもSARVH代表者側のほうが我がままな発言ですからね。せめてもっと言葉を選ぶべきですよね。
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Unknown (Unknown)
2009-11-14 02:25:21
まったくキチガイじみてますね。
日本の法律は推定無罪と言って犯罪の確固たる証明がなされなければ無罪とすると言う立場に立っています。
被害がある(だろう)から補償しろと言うのは本来は通りません。更に被害がまだ起こっていない物の補償をしろとは客観的に見て狂っています。

そりゃ確かに違法コピー被害はあるでしょう。
しかしそう言う事は事後に行うべきことであり,一軒一軒根気強く立件し証拠を集め裁くべき事です。逆にですよ,こうやって被害前の補償を行っていくと,仮に(法的に)違法性のない方法でコピーが行われればそれで良しと言う事になり,権利者側もお金が入ってくるのだから放置と言う事態になりかねません。

これは社会的影響も大きいのですが一番困るのが創造者側です。なぜなら会計処理が明確ではなくまともに当の製作者に支払われているのか不明だからです。権利者と製作が一致している場合は問題は起きないでしょうが,殆どの場合はそうではなく,音楽にしても映画にしても出演者やアーティストはどこかの事務所に所属しそこから支払われているわけで不明瞭です。

先の件にしてもデジタルコピーと言う観点から見るとエンコードを施したものは完全なコピーではなく極めてアナログ的に処理されたものです。これはビデオからビデオにコピーして劣化するのと本質的には何も変わりません。ストリーム記録ではないキャプチャなどもアナログコピーでありデジタルコピー(完全一致)ではありません。プログラムならば一部でも特徴的な同じコードが見つかればデジタルコピーだと断言できますが,映像や音声はそうではなく劣化していても何万何十万フレームの中には一致する部分が存在する可能性があり,プログラムで適用できる一部でもと言う範疇では測れません。

つまりは簡単に解決できる問題ではないのです。本来ならもっと長い時間をかけ議論され,施行されるべき物ですが,完全地デジ移行がいきなり公に晒されるようになり,権利者も消費者もバタバタしつつも移行までの短い時間に解決せざるを得なくなり,議論している時間がありません。要するに難しい問題なので折衝案が必要でそれは消費者利益に反してはなりません。不便を強いて取り返しが付かない方法であってもなりません。

レンタルCDにしても元々はフリーでコピーされていたものをそれではやっていけない。だからレンタル店から一定の使用料をと言うなら,誰しも納得しますし借りているのは自分ですからコピーするもの自分であり支払うのは当然とも考えます。実際には最近も報道されましたがコピーする人の方がそのもの自体に興味が高いため,一般より多くのお金をそのコンテンツに投入しています。考えれば当たり前の事です。興味のない人はそもそも観たり聞いたりしないし,触れる機会がないのですから買うことはしません。ここに来ている人たちもそうでしょう。興味があるのことなので一般の人たちから見れば湯水のごとくお金を使っているはずです。しかし放送は受動的なものでありこの方法は取れません。それを同じようにやろうとするから歪みが生じるのです。

私の結論としては取り合えずは地デジの一般放送はフリーとし,映画やそれに類する作品にはコピー制御を設け被害状況を調べ上げて検討してから補償額を取り決める方法を採るべきだと思います。しかしこの間全く支払われないのでは不都合が生じる可能性もありますから最低補償額程度を支払い後で帳尻を合わせると言うのが妥当かと思います。

なんにせよコピーされる可能性のあるものについては全て補償を前払いせよ。そしてコピー対策も全てのコンテンツに対して万全にせよ。これらの主張は言い換えればチンピラやヤクザのやる事です。敵がいつ来るか分からないから俺が守ってやる。その代わりみかじめ料をよこせ。常軌を逸しています。
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Unknown (aetos)
2009-11-14 12:00:54
> 録音は「お金を払って購入したCDなどからダビングして、別の環境で活用するもの」である。録音補償金など、そもそも必要ない。損害はどうやろうとも出ていないのだから。

出ていますよ。
たしか彼らの主張は「異なる環境で使いたかったらその都度買え」じゃありませんでしたっけ。
家庭用、車載用、ポータブルプレイヤー用と3枚買うのが模範的な消費者のあり方というものですw
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Unknown (arpus)
2009-11-14 13:59:17
そのうち耳から入って記憶されて鼻歌を歌うのもコピーだとか言いかねませんね。人の脳みそやオウムにも補償額を払えとか。

そういえば海外では既に鼻歌に対する著作権の使用料要求が出ているとかいないとか。
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