鳩山・新連立政権を支える民主・社民・国民新3党の連立政権政策合意文を、下記に転載しておきます。
この政策合意文ですが、確かに私から見れば不満や曖昧な点は多々あります。例えば、消費税率据え置きを「今期限り」でお茶を濁している点や、日米地位協定・米軍基地問題についても「改定提起、見直し検討」に止めている点、教育・農業再生の課題を「子ども手当」や「戸別所得補償制度」だけに矮小化してしまっている問題など、言い出せばキリがありません。
しかし、それらの不十分さを認めた上でも尚且つ、政策合意文の内容は今までになく革新的なものだと思います。郵政民営化・骨太方針・後期高齢者医療制度・障害者自立支援法の凍結・廃止や、労働者派遣法の抜本改正、生活保護母子加算復活、核廃絶・温室効果ガス大幅削減などの政策が実施されるだけでも、これまでの自公政治からは大きな進歩です。
その中でもとりわけ私が感動したのは、最終章にわざわざ憲法の項目を設け、これまで自民党・保守政権によってずっと蔑ろにされてきた<日本国憲法の理想実現>を、初めて真正面に掲げた事です。そういう意味では、この政策合意文は、改憲派の小沢・鳩山の思惑をも超えて、日本の民衆が勝ち取った「第二の憲法前文」であり、戦前の宣言に続く「戦後初めての人権宣言」とも言えるものではないでしょうか。その合意に魂を吹き込むのは、偏に我々民衆の力にかかっている事を、痛切に感じました。
(転載開始)
連立政権樹立に当たっての政策合意
2009年9月9日 民主党・社会民主党・国民新党
国民は今回の総選挙で、新しい政権を求める歴史的審判を下した。
その選択は、長きにわたり既得権益構造の上に座り、官僚支配を許してきた自民党政治を根底から転換し、政策を根本から改めることを求めるものである。
民主党、社会民主党、国民新党は連立政権樹立に当たって、2009年8月14日の「衆議院選挙にあたっての共通政策」を踏まえ、以下の実施に全力を傾注していくことを確認する。
小泉内閣が主導した競争至上主義の経済政策をはじめとした相次ぐ自公政権の失政によって、国民生活、地域経済は疲弊し、雇用不安が増大し、社会保障・教育のセーフティネットはほころびを露呈している。
国民からの負託は、税金のムダづかいを一掃し、国民生活を支援することを通じ、我が国の経済社会の安定と成長を促す政策の実施にある。
連立政権は、家計に対する支援を最重点と位置づけ、国民の可処分所得を増やし、消費の拡大につなげる。また中小企業、農業など地域で支える経済基盤を強化し、年金・医療・介護など社会保障制度や雇用制度を信頼できる、持続可能な制度へ組み替えていく。さらに地域温暖化対策として、低炭素社会構築のための社会制度の改革、新産業の育成等を進め、雇用の確保を図る。こうした政策を展開することによって、日本経済を内需主導の経済へと転換を図り、安定した経済成長を実現し、国民生活の立て直しを図っていく。
記
1.速やかなインフルエンザ対策、災害対策、緊急雇用対策
●当面する懸案事項であるインフルエンザ対策について、予防、感染拡大防止、治療について、国民に情報を開示しつつ、強力に推し進める。
●各地の豪雨被害、地震被害、また天候不順による被害に対し速やかに対応する。
●深刻化する雇用情勢を踏まえ、速やかに緊急雇用対策を検討する。
2.消費税率の据え置き
●現行の消費税5%は据え置くこととし、今回の選挙において負託された政権担当期間中において、歳出の見直し等の努力を最大限行い、税率引き上げは行わない。
3.郵政事業の抜本的見直し
●国民生活を確保し、地域社会を活性化すること等を目的に、郵政事業の抜本的な見直しに取り組む。
「日本郵政」「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」の株式売却を凍結する法律を速やかに成立させる。日本郵政グループ各社のサービスと経営の実態を精査し、「郵政事業の4分社化」を見直し、郵便局のサービスを全国あまねく公平にかつ利用者本位の簡便な方法で利用できる仕組みを再構築する。
郵便局で郵便、貯金、保険の一体的なサービスが受けられるようにする。
株式保有を含む日本郵政グループ各社のあり方を検討し、国民の利便性を高める。
●上記を踏まえ、郵政事業の抜本的見直しの具体策を協議し、郵政改革基本法案を速やかに作成し、その成立を図る。
4.子育て、仕事と家庭の両立への支援
安心して子供を産み、育て、さらに仕事と家庭を両立させることができる環境を整備する。
●出産の経済的負担を軽減し、「子ども手当(仮称)」を創設する。保育所の増設を図り、質の高い保育の確保、待機児童の解消につとめる。学童保育についても拡充を図る。
●「子どもの貧困」解消を図り、2009年度に廃止された生活保護の母子加算を復活する。母子家庭と同様に、父子家庭にも児童扶養手当を支給する。
●高校教育を無償化する。
5.年金・医療・介護など社会保障制度の充実
●「社会保障費の自然増を年2200億円抑制する」との「経済財政運営の基本方針」(骨太方針)は廃止する。
●「消えた年金」「消された年金」問題の解決に集中的に取り組みつつ、国民が信頼できる、一元的で公平な年金制度を確立する。「所得比例年金」「最低保障年金」を組み合わせることで、低年金、無年金問題を解決し、転職にも対応できる制度とする。
●後期高齢者医療制度は廃止し、医療制度に対する国民の信頼を高め、国民皆保険を守る。廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援する。
医療費(GDP比)の先進国(OECD)並みの確保を目指す。
●介護労働者の待遇改善で人材を確保し、安心できる介護制度を確立する。
●「障害者自立支援法」は廃止し、「制度の谷間」がなく、利用者の応能負担を基本とする総合的な制度をつくる。
6.雇用対策の強化-労働者派遣法の抜本改正-
●「日雇い派遣」「スポット派遣」の禁止のみならず、「登録型派遣」は原則禁止して安定した雇用とする。製造業も原則的に禁止する。違法派遣の場合の「直接雇用みなし制度」の創設、マージン率の情報公開など、「派遣業法」から「派遣労働者保護法」にあらためる。
●職業訓練期間中に手当を支給する「休職者支援制度」を創設する。
●雇用保険の全ての労働者への適用、最低賃金の引き上げを進める。
●男・女、正規・非正規間の均等待遇の実現を図る。
7.地域の活性化
●国と地方の協議を法制化し、地方の声、現場の声を聞きながら、国と地方の役割を見直し、地方に権限を大幅に委譲する。
●地方が自由に使えるお金を増やし、自治体が地域のニーズに適切に応えられるようにする。
●生産に要する費用と販売価格との差額を基本とする戸別所得補償制度を販売農業者に対して実施し、農業を再生させる。
●中小企業に対する支援を強化し、大企業による下請けいじめなど不公平な取引を禁止するための法整備、政府系金融機関による貸付制度や信用保証制度の拡充を図る。
●中小企業に対する「貸し渋り・貸しはがし防止法(仮称)」を成立させ、貸付け債務の返済期限の延長、貸付けの条件の変更を可能とする。個人の住宅ローンに関しても、返済期限の延長、貸し付け条件の変更を可能とする。
8.地球温暖化対策の推進
●温暖化ガス抑制の国際的枠組みの主要排出国の参加を求め、政府の中期目標を見直し、国際社会で日本の役割を果たす。
●低炭素社会構築を国家戦略に組み込み、地球温暖化対策の基本法の速やかな制定を図る。
●国内の地球温暖化対策を推進し、環境技術の研究開発・実用化を進め、既存技術を含めてその技術の普及を図るための仕組みを創設し、雇用を創出する新産業として育成を図る。
●新エネルギーの開発・普及、省エネルギー推進等に、幅広い国民参加のもとで積極的に取り組む。
9.自立した外交で、世界に貢献
●国際社会における我が国の役割を改めて認識し、主体的な国際貢献を明らかにしつつ、世界の国々と強調しながら国際貢献を進めていく。個別的には、国連平和維持活動、災害時における国際協力活動、地球温暖化・生物多様性など環境外交、貿易投資の自由化、感染症対策などで主体的役割を果たす。
●主体的な外交戦略を構築し、緊密で対等な日米関係をつくる。日米協力の推進によって未来志向の関係を築くことで、より強固な相互の信頼を醸成しつつ、沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む。
●中国、韓国をはじめ、アジア・大平洋地域の信頼関係と協力体制を確立し、東アジア共同体(仮称)の構築をめざす。
●国際的な協調体制のもと、北朝鮮による核兵器やミサイルの開発をやめさせ、拉致問題の解決に全力をあげる。
●包括的核実験禁止条約の早期発効、兵器用核分裂性物質生産禁止条約の早期実現に取り組み、核拡散防止条約再検討会議において主導的な役割を果たすなど、核軍縮・核兵器廃絶の先頭に立つ。
●テロの温床を除去するために、アフガニスタンの実態を踏まえた支援策を検討し、「貧困の根絶」「国家の再建」に主体的役割を果たす。
10.憲法
●唯一の被爆国として、日本国憲法の「平和主義」をはじめ「国民主権」「基本的人権の尊重」の三原則の遵守を確認するとともに、憲法の保障する諸権利の実現を第一とし、国民の生活再建に全力を挙げる。
(転載終了)
http://www.dpj.or.jp/news/?num=16994
http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/other/090909_3party.htm
http://jcjkikansh.exblog.jp/12261281/
このエントリーで、鳩山連立政権が政策合意で憲法三原理に基づく政治を行う旨宣言した事について評価しましたが、そうであるなら尚更、鳩山自身が依然として改憲議連の顧問を務めている事については、一体どちらの立場を選択するのか、早晩決断を迫られる運命にあると言えるでしょう。
我々の方は、それに対して護憲の立場から、「改憲議連から脱退しろ、もはやそんな反人権派とは手を切れ」と、上記の様な要請活動などを通して、鳩山政権に不断に圧力を加え続けていかなければならないのでしょうが。
・鳩山さんの憲法9条観を見てみる(2)(Afternoon Cafe)
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-347.html
しかし、彼の憲法観を上記記事で読む限りでは、それも限界があると思います。彼の憲法観というのは、一言で言えばネオコン(つまり今の自民党)のそれと、何ら変わりません。
鳩山もネオコン自民も、口では今も憲法三原理(国民主権・平和主義・人権尊重)を言うものの、その実質においては、憲法三原理を踏みにじる政治を推進してきたのですから。
「口先では侵略戦争の禁止を言いつつ、国際貢献や国際協調の名目で、海外派兵や集団自衛権も積極的に認める」というのが、彼の憲法観なのですから。
たとえ、その「国際貢献」や「国際協調」が、第三世界をも含めた言葉本来の意味での貢献や協調なんかでは全然なくて、単に米国一国への追従にしか過ぎなかったとしても。それを誤魔化す為に、「国際貢献」「国際協調」や「テロとの戦い」などの言辞を弄んでいるだけなのですから。
つまり、鳩山政権というのは、一事が万事この調子なのです。今までの小泉・安倍政治の様な露骨な改憲・新自由主義路線には、流石に彼らもついて行けず、それらとは一応は一線を画すものの、改憲・新自由主義そのものを根底から批判し乗り越える立場には立てていないので、少しオブラートに包まれると、もう簡単にそちらの方に靡いてしまうのです。
これは経済政策においても然り。小泉改革を批判し郵政民営化や後期高齢者医療制度の廃止・凍結を掲げつつも、それらの背景にあるグローバル資本主義そのものへの批判がないから、WTO・日米FTA推進などの矛盾した公約も、平気で口に出来るのです。
(ただ、この階級的視点の欠如という弱点も、決して悪い事ばかりとは言えず、これは裏返せば従来の左翼ドグマからも自由であるという事であり、北朝鮮難民支援策に見られる如く、そのドグマの限界を乗り越える可能性も秘めているという事も言えるのですが、この点についてはまた別の機会に書いてみようと思っています)
鳩山政権には、その様な二面性がある事は確かです。その二面性が、ただ純粋に「階級的視点の欠如」や「無知」から来るものなのか、それとも「第二自民の本性を今は隠しているだけ」なのかは、今はまだ何とも言えませんが。
いずれにしても、そういう、どっちに転ぶか分からない脆さを抱えた政権である事だけは確かです。
だから対処が難しいのです。徒に追い詰めて改革の芽を摘んでしまっては元も子もないし、かと言って、過度に期待した挙句に裏切られたのでは、何の為の政権交代だったのか、という事にしかならないし。
いずれにしても、そういう政権だという事だけは、心しておかなくてはならないでしょう。
・<障害者自立支援法>廃止へ 厚労相、新制度に着手(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090919-00000079-mai-pol
・八ツ場ダム問題 中止表明の前原国交相、23日現地入り(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090918-00000648-san-pol
・直嶋経産相、温室ガス25%削減を国際公約に(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090918-00000513-san-soci
・長妻厚労相 年金記録問題で新たな調査指示(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090918-00000000-maip-soci
・母子加算、10月にも復活…長妻厚労相(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090917-00001074-yom-pol
・中井国家公安委員長 取り調べ全面可視化に意欲(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090917-00000018-maip-pol
・北沢防衛相 「インド洋給油延長せず」と明言 近く沖縄へ(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090917-00000007-maip-pol
・「アニメの殿堂は建てません」…川端文科相(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090917-00000356-yom-soci
・岡田外相 日米密約 11月末めどに調査結果報告を命令(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090917-00000005-maip-pol
・日本郵政の西川社長辞任、原口総務相も要求(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090917-00000117-yom-pol
・<経済財政諮問会議>民間メンバー4人が辞任 事実上廃止へ(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090915-00000024-mai-pol
・連立3党、郵政グループ抜本再編案(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090917-00000663-yom-bus_all
・選挙区全敗…「党内バラバラ」 自民総裁選“しらけムード”(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090918-00000602-san-pol
・<東国原知事>「僕の座右の銘は『友愛』」 新政権誕生に大きく国が変わると期待(毎日新聞)
※ついこの間まで「俺を自民党総裁にさせろ」とか言っていた男がよく言うよな。橋下と言いコイツと言い、ただひたすら自己の栄達の為に、権力に媚びる事しか頭にない。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090917-00000004-maiall-pol
この点ではついこの間まで「自民も民主も同じ穴のムジナ」的な批判を繰り返していた共産党をはじめとする左派の多くも「同じ穴のムジナ」ですwww
イタリア共産党などのいくつかの左翼政党が今日では既に完全に変質してしまっているという事実もあるように、物事は現象面だけで無く「本質」さえもが良くも悪くも変化するとみるのが弁証法的なものの見方です。
有権者・国民の突き上げさえ存在し続ければ、民主党は更に「左」に変わる可能性だってあります!(もちろん「右」に先祖帰りしてしまう可能性も)
http://www.geocities.jp/sazanami_tsushin/dc01/situation2/s09092.html
というのも、「二面性」であれ「過渡的な性格」であれ、民主党新政権の「変化」や「発展(または後退)」の可能性、蓋然性についての考察が曖昧だからですよ。
民主党新政権が「二面」的な性格をもつ存在であるならば、その「二面性」はいわゆる「不変の本質」的な永続的・宿命的な二面性なのか否かという点がまず問題になります。
また、もし民主党政権の「二面性」や「過渡的な性格」が、変化・発展の中で解消されて行くような性格のものであるならば、共産党が言う「過渡的な性格」は、必ずしも他の政権によって取って代わられる必要さえないものになるんじゃないでしょうか?
少なくとも、共産党の目標とする「資本主義の枠内での改革」戦略から見て、民主党政権では「絶対に不可能」な政策領域が存在するということをその根拠ともども鮮明に暴露しなければ、この「過渡的」の正確な意味内容は示されませんよ。
どうでしょう?
現在の世界政治の動向を見ていると、「オバマの限界」や「民主党政権の限界」を論証し、それを乗り越える方向やそのための政治勢力の必要性を提示するのがなかなか困難になっているように思えてならないのですよ。(つまり、修正資本主義的改革と現存左翼勢力の改革や改良の政治路線的差別化に限界が露呈し始めているんじゃないか?という意味です)
やはり、深刻な事態が到来しているようですよ!
http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/3ab7789eb11d31f7413725891e526943