短い文で書くということ
文章術さんは
「一文を短く書け」という。文章術さんの主張の中では、ポピュラーなもので、多くの本に登場するアドバイスである。
ちかごろ「短い文で書けブーム」みたいで、タイトルにそう謳った本が何冊も出ている*1。
ブログ関係の文章術さんにも、このアドバイスは、たくさん登場する。
1つの文が長いと非常に読みにくく、何を書いているのかわかりにくくなってしまいます。
石崎秀穂『とっておきの秘技 人とお金が集まるブログ作りの秘伝書』(C&R研究所・2005年・P128)
とにかく一文を短く書くことを心がけてください。目安は40〜60文字。
栗原明則『伝わる、WEBテキストのつくりかた 知っておきたい文字情報デザインテクニック』(BNN・2005年・P71)
何も考えずに長くなってしまった文は、時として読み手、そして書き手へ結果的に悪影響を及ぼします。
高瀬賢一『ウケるブログ Webで文章を“読ませる”ための100のコツ』(技術評論社・2005年・P144)
たしかに、ぼくもいったん書いた後に、文を分けてセンテンスを短くすることもある。
*1:っても、「短い文を書け」ってアドバイスは、昔から定番だ。35年以上も昔の本、加藤秀俊『自己表現—文章をどう書くか』(中公新書・1970年)でも「ひとつのセンテンスは、できることなら四十字」とアドバイスしている。
玉ねぎ文は分かりにくい
だらだらと長い文章は読みづらい場合が多い。また「言葉のつながり」が見えにくくなったり、不明確になったりする可能性が高い。
たとえば、「主題1,主題2,述部2、述部1」という語順になっていて「言葉のつながり」が分かりにくい文がある。こういった文章を
「玉ねぎ文」と言う*2。
例文を示そう。
姉はぼくが宮藤官九郎が「吾輩は主婦である」という昼ドラの脚本を書くことを知らなくて驚いた。
分かりにくい!
最初の「姉は」は、最後の「驚いた」につながる。こういった文章を読む場合、以下のような苦労を読み手に強いることになる。
1・まず「姉は」を脳にストック
2・それに続く文章を読む
3・ぼくが? 宮藤官九郎? いろいろ考える
4・最後の「驚いた」に来たときにストックしていた「姉は」と結びつける
5・その他の主述の結びつきを理解する
たいへんである。
こういった「たまねぎ文」は、主述のねじれをほどいてやるといい。つながる言葉同士は、近くに配置し、ひとつの塊にまとめると、読みやすくなる。が、そもそも短い文を書いていれば、このような分かりにくい文にはならない。
「言葉のつながり」*3を明確にするためにも「短い文で書け」というアドバイスは、「読みやすい文章」の書き方として有効だろう。
*2:なんて、えらそーに書いているけど、この名称は、つい最近、柴田元幸『翻訳教室』(新書館・2006年・P19)を読んで知った。
*3:主述だけでなく、修飾する言葉と修飾される言葉のつながりが混乱することもある。
数珠つなぎ文は読みにくい
また、「何々が何々して、何々が何々したら、何々が何々すると、何々が何々した」のように数珠つなぎになった文も読みにくく、幼稚な印象を受ける。
宮藤官九郎が昼ドラの脚本を書くって、姉に教えてもらって、はじめて知ったんだけど、姉は「何で知らないの!」って驚いてるぐらいだから、けっこうみんな知ってるんだろうけど、知らなくて、しかも「吾輩は主婦である」ってタイトルで、金の心配をしすぎて夏目漱石が宿ってしまった主婦が家庭やご近所トラブルを解決するって設定らしくて、吾輩は期待で胸がドキドキである。
一文がダラダラと長い。こういった文章は、ひとつの文を短くすると、分かりやすい文章になる。
特に小学生は、この「〜て、〜て、〜て、〜た。」タイプのダラダラと長い文章を書くので、短くしようというアドバイスがよく行われているらしい*4。
<文を短くする3つのコツ>
1・複文・重文*5をやめて単文にする*6。
2・長い修飾の言葉を使わない。
3・不必要な部分を削る。
また一文に情報量が多いと、人は一気に情報処理できないから、ワンセンテンス・ワンアイデアにすべきだというアドバイスも多い。
だが!
以下、ブログ文章術・第十三回「一文を短くって言うけどさ2」に続きます。
*4:
「500円玉をかせごう」で一文を短くという授業法がある。「『。』一個500円です。500円玉をかせごう。」と小学3年生に教えているそうです。えええええええーーーーー。どんな、授業だよッ!
*5:「主題」+「述部」が一組で構成される文を単文と呼ぶ。例:ぼくは元気だ。単文を順に並べたものを重文と呼ぶ。例:ぼくは元気だが、祖父は元気じゃない。単文が入れ籠式になったものを複文と呼ぶ。例:ぼくは祖父が元気じゃないことを知っている。
*6:実際に某大手出版社のWEB記事でも、原稿依頼の際に、複文をやめて単文にしてくださいと指示するそうだ。
課題
さて、「文を短くする」を実践してみよう。
お皿ひとつひとつに、それぞれ、ハムや卵や、パセリや、キャベツ、ほうれんそう、お台所に残って在るもの一切合切、いろとりどりに、美しく配合させて、手際よく並べて出すのであって、手数は要らず、経済だし、ちっとも、おいしくはないけれども、でも食卓は、ずいぶん賑やかに華麗になって、何だか、たいへん贅沢な御馳走のように見えるのだ。
長い文だ。160文字もある。
さて、次回までの課題。
センテンスを分けて、読みやすくしてみよう。
っていうか、ぼくも次回までにやってみます。
では。