「他人に暴行を加えた」という理由で行う懲戒解雇の相当性
大阪地裁昭和49年5月28日労働判例205号35頁は、次のように判示しています。
右の申請人の暴行に至る動機、態様、労務委員会当時における会社側の結果の認識および前認定の申請人の酩酊の状況等から考えると、申請人の所為は、会社創立記念日の祝宴における所為としては全く相応しくない非常な行為であるとの非難を免れないが、しかし酒に酔ったうえでの行為であり、意図的に暴行を加えようとしたものとは認めがたく、かつその傷害の結果も偶発的なものと認められるから、申請人に対し、会社就業規則第七四条二号にいう「他人に暴行を加えた」という理由で懲戒解雇に至ることは、その処分に至る事実の評価が苛酷に過ぎ、その情状の判定、処分の量定等の判断を誤ったものというべきであり、結局その処分が客観的妥当性を欠くが故に、就業規則適用の誤りとして、懲戒解雇は無効と解するのが相当である。
まあ、脚本家だの漫画家だのという通常であれば多様な人格の存在を肯定しそうな人たちが特定の他人に対してやたら特定の品位だの品格だのを求めてそれを欠くことを理由にその他人が解雇され又は自主退職に追い込まれるべきことを叫ぶ組織においてその特定の他人が起こした不祥事であるが故にこれ幸いと「懲戒解雇か、自主退職か」を迫られたことは想像に難くない気はしますが(以前にも、格闘技を真剣に行うには十分でない健康状態において、チャリティということで請われてさほど真剣でないサッカーゲームに参加しただけで、長期間の休職処分が科せられた前科がありますし。まあ、チャリティで子どもたちとサッカーに興じられるくらいなら、トッププロとして真剣勝負をすることができたはずだとその競技団体が断言できてしまうほど、その格闘技がお気楽なものだというのなら、そのような処分が下されるのもわからなく有りませんが。)、文科省傘下の財団法人がそんなことでよいのかという気がしなくはありません。
少なくとも、その脚本家や漫画家は、自らが委員を務める組織に属する特定の労働者に対し、解雇権を振りかざして執拗に特定の「品位」を押しつけようとしたことによって、不要なストレスをその労働者に与え続けたことを反省し、二度とそのようなある種のパワハラをしないようにして貰いたいものです。単独でではないにせよ、解雇権を行使できる立場の人が、特定の労働者との関係で「天敵」と呼ばれることの異常さに気付いていただきたいものです。
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