英語よりも便利。「39個」のアイコンから成る“全世界共通言語”を作った男が日本人に伝えたいこと

Text: Asuka Yoshida

2017.2.8

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海外旅行先で、言葉が通じなくて困った経験はないだろうか。そんなとき、あなたはどうするだろう?なんとかジェスチャーを組み合わせて伝えようとするか、はたまた聞かなくて済むように、前もって完璧な準備をしておくか。

今回Be inspired!は、旅行先で言葉が通じなくて困ったことをきっかけに“あるビジネス”を始めたゲオルク・ホルンさんにインタビューにした。そのビジネスとは、絵を指すことによって誰とでもコミュニケーションが図れるTシャツ、『ICONSPEAK』の開発。どのようなトラブルがあって、なぜこのTシャツを作ろうと思ったのか。ゲオルクさんにこのアイデアが生まれるまでの道のりを根堀り葉掘り聞いてみた。

異国のトラブルから生まれた、コミュニケーションツール

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たくさんのアイコンがプリントされているTシャツ、その名も『ICONSPEAK』。このTシャツの製作者の一人であるスイス出身のゲオルクさん。

彼は友達と一緒にベトナム旅行に出かけていた時、アジア独特の雰囲気をもっと満喫するべく、バイクで田舎へ向かってみることにした。だが、アクシデントはそこで起こった。道中で、ゲオルクさんの友達のバイクが壊れてしまったのだ。しかしここは田舎の村。助けを呼びたくても英語は全く通じない。そこで生まれたアイデアが紙とペンを使って絵を書き、今の状況を説明することだった。

ゲオルクさんは当時の様子をこう語る。

他のアジアの国を旅していたときも、ジェスチャーや絵を書くことで自分たちの言いたいことを伝えていたから、今回も同じように絵を書くことで伝えたんだ。たまたま現地にいた村人に絵を書いて見せて、今の状況を伝えたんだけど、バイクが壊れて助けが必要だと理解してくれたよ。我々がふざけているように捉えた人はいなかったんじゃないかな。むしろ、みんな真剣に僕たちと向き合ってくれたよ。

そしてこう続けた。

絵で伝えることは、時に話し言葉よりも互いの想いを分かり合えると思ったね

「世界共通」のアイコン完成

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ゲオルクさんらはこの時の経験を活かし、海外で使えるような絵をアイコンとしてつくることにした。そしてそれをTシャツにして、そのアイコンを指すだけで誰とでも話ができる『ICONSPEAK』Tシャツの制作に取りかかった。とは言え、Tシャツに載せることができるアイコンの数には限界がある。単に多すぎて見にくくなっては意味がないのだ。

そこで彼らはまず膨大なアイコンのリストを作成し、それぞれのアイコンが本当に有効か、他にもっといいアイコンはないのか頭を悩ませたという。そして苦労に苦労を重ね、「矢印」などの簡単なものは取り除き、なんとか「39種類」に絞り切ったという。
 

今、我々のTシャツは世界78ヶ国で発売されているよ。アイコンを選択するときにはかなりデリケートな部分にも気を遣ったかな。分かりやすだけではダメなんだよ。どの国でも使えるような配慮も必要だと思ったんだ。例えば宗教的な意味を連想させるものは取り除くことにしたね。それが原因で誤解されたり誰かを怒らせるようなことはしたくなかったんだ。こちらは悪気はなくても相手にとっては崇高なものってこともあるからね。

現在、最も多い販売先はアメリカやカナダであるという。英語圏である彼らにとっては英語圏以外の国で母国語が通じにくいという苦労がきっとあるのだろう。

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「心のオープン」さが、相手の理解度をより「高める」

これは、着ている人が指を指すだけで十分さ。伝えたいという意思があれば、指先一つで伝わるよ。

そう語る彼は今、Tシャツの販売エリアの拡大を計画中だが、世界共通のアイコンを見つけることが制作での課題だという。そして、やりがいはなんといっても、『ICONSPEAK』グッズを手にした世界を旅した人々からの日々届く「喜びの声」だそう。

多くの人たちが意思疎通に成功していて、その声が届くのはとても嬉しいことだよ。例えば、カザフスタン、ボリビア、中国と言った国からね。『ICONSPEAK』を手にした彼らは、自分たちの想いを伝えるだけではなく、相手がアイコンを指さして返答してくることもあると言っていたよ。言葉がなくても分かりあえているようだね。

ゲオルクさんに、コミュニケーションにおいて最も大切なことは何か聞いてると、こんな答えが返ってきた。

まず、心をオープンにして、相手と、そして自分としっかり向き合うことかな。

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日本人が英語を話すときに忘れている大事なこと。

僕らは自分たちのアイデアをすごく気に入っているんだ。ある一定の人たちだけではなくて、国はもちろん、年齢や宗教や性別を超えて、すべての人にとって便利なものであるからね。

そう言った彼の言葉が忘れられない。そして最後に「シャイだ」と言われることの多い日本人に対してもらったメッセージもシンプルで印象的だ。

それは簡単なことだよ。恥ずかしがらずに、礼儀正しくいること。

先進国の中でも低いと言われている日本人の英語力。ここ数年、小学生から英語を授業に取り入れるなど、外国人とのコミュニケーションをとるための語学教育に力を入れているが、ゲオルクさんの話を聞いていると他者と意思疎通を図るときに必要なものは「言語のスキル」だけではないことに気づかされる。

拙くてもいいから、年齢や宗教、性別に関わらず相手を敬う姿勢を忘れないこと。そんな言葉の通じない相手とコミュニケーションする上で、日本人がどこか忘れていた本質的な作法をゲオルクさんは伝えたかったのかもしれない。

世界でより多くの人に通じるような商品『ICONSPEAK』をつくり、人々の距離を近づけていく彼の活動にこれからも目が離せなそうだ。

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日本での『ICONSPEAK』取り扱い店はKakehashi Sports

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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