米アップルはMacworld Expoにて、今年3月までにコンテンツ配信サービス「iTunes Store」の楽曲をすべてデジタル著作権管理なし(DRMフリー)にすると発表した(関連記事)。
このアップルの「大きな一歩」は、どのような流れの中で決断されたことなのだろうか? ジャーナリストの津田大介氏に音楽配信の最新事情を聞いた。
市場を変えたのは「Amazon MP3」だった
── DRMフリーというアップルの決断について、どう評価されますか?
津田 DRMフリー化は時間の問題だと思っていました。というのも、米アマゾンが2007年10月からDRMフリーのMP3を販売する音楽配信サービス「Amazon MP3」を始めていたからです(関連記事)。
米国の4大メジャーレコードは、今回、iTunes Storeへの提供を始める前から、DRMフリー/256kbpsの楽曲をAmazon MP3で販売していました。MP3の楽曲なら、iPodやiPhone、iTunesでも扱えるので、わざわざiTunes Storeを使う必要がない。しかもAmazon MP3は、「薄利多売」戦略を採って、同業他社より安い価格を付けて販売していましたから。
今までアップルは「FairPlay」という独自のDRMを使い、iPodやiTunesを囲い込んできたため成功してきました。しかし、そのDRMがじょじょに足かせになってきて、iTunes StoreがAmazon MP3に「食われる」ようになった。今回はそうした問題を解消しようという決断でしょう。
加えて、Macworld Expoの基調講演では、iTunes Storeのダウンロード数について触れられていましたが、この販売ペースが以前に比べて落ちてきている。iTunesは割と飽和していて、ライバルが伸びてきているという裏付けだと思います。そういう意味でも、テコ入れをしたかったということでしょうね。
今回のDRMフリー化によって高くなる音源もありますが、旧譜などは逆に安くなるものも多い。そのあたりデジタル音楽の新たなニーズの掘り起こしを狙っているのだと思います。
この連載の記事
-
第36回
トピックス
津田大介が語る、「コルシカ騒動」の論点 -
第35回
トピックス
津田大介が語る、日本版「フェアユース」とは? -
第34回
トピックス
これはひどい? 「薬のネット通販禁止」騒動の顛末 -
第33回
トピックス
どうなる出版? Google ブック検索がもたらす禍福 -
第32回
トピックス
津田大介に聞く「改正著作権法で何が変わる?」 -
第32回
トピックス
なくならないネットの誹謗中傷、どうすればいい? -
第31回
トピックス
テレビ局はなぜ負けた? 津田氏に聞くロクラク事件 -
第29回
トピックス
法律が現実に追いつかない──津田氏、私的録音録画小委を総括 -
第28回
トピックス
「小室哲哉」逮捕で露呈した、著作権の難しさ -
第27回
トピックス
ダウンロード違法化が「延期」していたワケ - この連載の一覧へ