ネットの一部で人気を集め、ひとつのコミュニティーを形成している「はてなブックマーク」では、ここ1、2年ほどネガティブコメントについての議論が続いている(関連記事1、2)。
こうした問題について、前編の記事でははてなブックマークの生みの親である同社執行役員CTOの伊藤直也氏が、「コミュニティーの自浄作用にまかせたい」と話した。
その一方で伊藤氏は、ネガティブコメントへの対策をまったく放棄しているわけではない。中編では「ブログの書き手がコメント群をコントロールできない」「後から出てきた反論が人の目につきにくい」といったコメントの問題点を洗い出し、取るべき対応策を探る。インタビューアーは、ジャーナリストの津田大介氏だ。
100字だからこそ、気軽にコメントできる
── 各論的な話になるんですが、僕自身ブログやニュース媒体に記事を書いて、その反応を見るためにはてなブックマークのエントリーページは見るんですよ。反応をパッと確認するのにはいいツールですし。
ただ、一方で感じるのは、はてなブックマークのコメントって反論しづらいですね。掲示板のような厳密な時制がないこともそうですし、100文字という字数制限があることも大きいんでしょうが、要するに自分の記事に対してこの人はなんか文句は付けているけど、一体何に対して批判してるのか分からないことが結構あるんです。誤読や事実誤認なのかどうかすら分からないみたいな。
システム的に、はてなブックマークってそこで議論するというより、議論のきっかけを作るためのツールなんですよね。でも、きっかけは確かに作っているかもしれないけど、逆に制限がたくさんあることで十分な議論がされず、議論を断片化させている部分もあると思います。それについては伊藤さんはどう考えていますか。
伊藤 反論がしにくいというのは、まさに先ほどのメリット/デメリットの一例ですよね。ただ、逆にエントリーページでコメントに対してコメントが付けられるようにすると、議論が議論じゃなくて、それこそ罵倒し合いになって終わらなくなっちゃうと思うんですよ。あそこで全部やるのは、火に油を注ぐようなもので、荒れる傾向が強くなってしまう。
100文字しか投稿できなくて、かつ一人1回しかコメントをつけられないからこそ、気軽にコメントが残せて、しかも残したコメントに対しての応答責任もなくなる。エントリーページはそういう場にしたいし、そうすることでコメント投稿に対するハードルも低くなるんじゃないかと。
そもそも反論できないっていう要望が来るのは、あの場で反論ができないのが問題というよりも、ブログを書いた人が、はてなブックマークのコメント群をコントロールできないっていうところに問題の本質があると思うんです。
── なるほど。確かにそれは僕もそうだと思います。
伊藤 ブログの書き手には、エントリーページという場をコントロールしたいという欲求があるんです。事実誤認のある発言を修正したいとか、「このコメントはさすがにないだろ」みたいなものをみんなに見えないようにしたいとか、そもそもブックマーク自体してほしくないみたいな。でも、現状はどれもできない。
長い間はてなブックマークを見ていて、そこに問題の本質があるということが分かったため、今後、若干ですけど、ブックマークされるブログのオーナーがコントロールできる方向に軌道修正しようかなとは思っています。もちろん、気に入らないコメントを全部削除できるとか、過激な機能を付けるつもりはないですけど。