特定失踪者問題調査会顧問 梅原克彦(元仙台市長)
(荒木注)10月10日から11月4日までジュネーブで開催される国連自由権規約委員会136セッションに調査会として初めてNGO意見書を提出しました。今回は台北にお住まいの梅原克彦調査会顧問(元仙台市長)に全面的に作業をお願いし、意見書の提出を終えましたので梅原さんからの報告を掲載します。ご協力いただいた山本優美子・国際歴史論戦研究所所長にもこの場をお借りして御礼申し上げます。
(追記)※本文最後に以下の梅原顧問の「追記」があったのですが、全体が長文なので「追記」のまま前に載せておきます。
最後に、私事に亘りますが、私は2018年7月より、勤務地の台湾に在住しているため、とりわけ、この2年半余り、コロナ禍の影響を受け、日本への一時帰国もままならない状況が続いておりました。このため、調査会・家族会の各種会議や街頭署名、各地での現地調査をはじめとする諸活動には、なかなか直接参加出来ず、大変申し訳なく思っておりました。今回、久しぶりに、調査会の活動に、ささやかではありますが貢献出来たことに感謝しております。
■国連・自由権規約委員会の対日本審査会に向け調査会として初のNGO意見書を提出■
来る10月10日から11月4日、スイス・ジュネーブにおいて、「国連・自由権規約委員会136セッション」(International Covenant on Civil and Political Rights 136th Session)が開催される予定です。
今回のセッションの中で、10月13日から14日の二日間、「対日審査会」(Consideration of the seventh report of Japan)が行われます。
これは、同委員会が、締約国における各般の「人権上の問題」について、「審査」を行い、それぞれの締約国の政府に対して「勧告」(Recommendation)を行うというものです。
従来から、この各締約国に対する「審査会」には、世界各国の多くのNGO等が「意見書」を提出するとともに、現地での会議にはオブザーバーとして参加することが認められてきていて、日本からも毎回、多くのNGOが、そういったかたちで参加しているとの事です。
この度、当調査会として初めて、同委員会に対し「北朝鮮による日本人拉致と『特定失踪者問題』(“Abductions of Japanese Citizens by North Korea and Issue of Missing Japanese Probably Related to North Korea”)と題する、「NGO意見書」を提出しましたので、事後となりましたが、皆様に御報告します。
まず、上記委員会のスケジュールを御覧下さい。
(国連・自由権規約委員会136セッションのスケジュール)
https://tbinternet.ohchr.org/Treaties/CCPR/Shared%20Documents/1_Global/INT_CCPR_POW_136_34307_E.pdf
(※)10月13日(木)15:00~18:00、14日(金)10:00~13:00の二日間に亘り、「対日審査会」(Consideration of the seventh report of Japan (public))が開催される予定であることが記載されています。
次に、調査会として今回提出した「NGO意見書」が下記のサイトで公開されていますので、以下の要領で御覧下さい。
(同委員会136セッション関連文書まとめサイト)
https://tbinternet.ohchr.org/_layouts/15/treatybodyexternal/SessionDetails1.aspx?SessionID=2575&Lang=en
(※)上記のURLをクリックして頂き、「Consideration of States Report」(=各国別の(人権に関する状況に関して提出された)レポートの一覧)の「Japan」のところに記載のある、6種類の「Document Type」のうち「Info from Civil Society Organizations(for the session)」をクリックして下さい。すると、日本のNGOの名前がアルファベット順にズラリと並んでいますので、下から7番目の「The Investigation Commission on Missing Japanese Probably Related to North Korea (COMJAN)」(=調査会の英文呼称)の行の一番右にある「View document」をクリックして頂き、最後に「pdf」のマークをクリックすると、調査会が提出した「NGO意見書」本体に到達します。
御覧頂くとお判り頂けますように、「意見書」本文は表紙も入れて17ページ、そして「Attachment」(≒参考資料)として、竹下珠路・特定失踪者家族会事務局長から御提供頂いた、特定失踪者全員の名簿(本年5月12日現在)を添付しています。
今回の意見書のポイントは以下の通りです。
・まず、国際法上の論点の整理として、北朝鮮による拉致が、「国連人権規約(自由権規約)の中の「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の各条文のうち、第12条(移動、居住及び出国の自由)に明白に「違反」するということを記しています。(2ページ上から2段目、“We strongly believe abductions of Japanese citizens by North Korea are absolutely against the Article 12-2,12-4 of the International Covenant on Civil and Political Rights.”)
すなわち、同条第2項では「すべての者は、いずれの国(自国を含む。)からも自由に離れることができる。」( “Everyone shall be free to leave any country, including his own.”)、また、同条第4項では「何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない。」( “No one shall be arbitrarily deprived of the right to enter his own country.)と規定されおり、北朝鮮による拉致は、まさに、最も典型的な「違反」事由となります。いわば、当然の事なのですが、本「意見書」のいわば「法律的な意味での骨格」を成すことから、表紙(1ページ)にもその旨を記載しています。
・日本政府が公式に認定している「拉致被害者17名」とは、いわば「氷山の一角」であり、間違いなく、多くの拉致被害者が、現在なお北朝鮮に捕らわれの身になったままであり("We strongly believe that there must be larger number of Japanese citizens abducted North Korea and still being captured in North Korea .”)、この事は多くの物的証拠や証言によって、既に明らかになっていること(“This situation has been brought to light by a lot of pieces of physical evidence as well as testimonies.” )を強調しています。(本文2ページ最下行~3ページ)
・2018年1月のICCへの申し立て文書においても記載した、「特定失踪者のうち23人の事例」について、概略を記載しました。(本文7ページ~13ページ)
・最後に、この「意見書」における一番のコアの部分である「結論と勧告」(“Conclusion and Recommendation”)ですが、ここの部分は、「特定失踪者問題調査会として、同委員会が、後日、日本政府に対して行う『勧告』の内容について意見を述べ、我々の意見を日本政府に対する『勧告』に盛り込むよう(我々が同委員会に)要請する。」という形式をとっています。
ここに、何を書き込むかは、なかなか難しいところでしたが、荒木代表と打ち合わせた結果、今回の意見書においては、日本政府に対し「直ちに一連の情報公開を求める」という内容に絞りました。(本文16ページから17ページ)
すなわち、本意見書の「結論と勧告」(Conclusion and Recommendation)として、 「従って、我々(=調査会)は、CCPRに対して、以下のような勧告を日本政府に対して行うよう要請する。」( “Therefore we strongly request the CCPR to issue recommendations as follows to the Government of Japan.”として、以下の3点を記載しました。
・日本政府は、この意見書において氏名に言及している日本人失踪者(=特定失踪者)について、政府が持っている全ての関連情報を直ちに公開すべきである。
(“The Government of Japan should immediately disclose/release all the related information about missing Japanese citizens whose names are referred in this report.”)
・日本政府は、政府認定された17人の拉致被害者以外に、概ね何人が北朝鮮に拉致されていると認識しているのか、直ちに情報を公開すべきである。
(“The Government of Japan should immediately disclose/release the total approximate number of abducted Japanese citizens by North Korea (whom the Government of Japan actually “recognize” as abductions by North Korea.)apart from the 17 abductees officially identified by the Government of Japan.”)
・日本政府は、日本国籍以外の拉致被害者について(日本国内で拉致された外国籍の被害者を含め)直ちに全ての情報を公開すべきである。
(“The Government of Japan should immediately disclose/release all the information about abducted citizens who do not have the nationality of Japan including “foreign” citizens who were abducted in Japan.”)
この3点について、同委員会が日本政府に対する「勧告」に盛り込むよう、調査会として要請を行ったわけです。この「要請」を受け、同委員会としてどのような対応をするかは、10月13日~14日の「対日審査会」での結果次第、という事のようです。
以上が、今回の意見書の概要です。
さて、今回のこの文書の提出に至った経緯について報告します。
今年の2月頃、かねてから国連の上記委員会に積極的に参加されてきた、「一般社団法人国際歴史論戦研究所」の山本優美子所長(国連対策会議担当)から、当調査会の荒木和博代表に対し、「特定失踪者問題調査会として、この秋に予定されている国連自由権規約委員会の対日審査会議に、「NGO」として「北朝鮮による拉致問題、とりわけ特定失踪者の問題についての『NG0意見書』を提出しては如何か?」との御提案がありました。
荒木代表も、山本所長の御提案に賛成し、直ちに代表から台湾在住の私宛に、本「NGO意見書」の草稿(英文)を作成してもらえないかとの要請がありました。
私も、2週間ほど前までは、「9月になったことだし、ぼちぼち、この草稿作成作業の準備に取り掛からねば・・・」などと、のんびり構えていたところ、9月5日(月)、山本優美子所長からメールで御連絡があり、この委員会の全日程が発表され、「対日審査会議」は10月13日~14日の2日間の日程で確定した事、そして「NGO意見書」の提出期限が、一週間後の9月12日(月)である旨の連絡がありました。
「さあ、大変!」ということで、急遽、作業を開始したわけですが、この意見書の作成完了、提出に至るまで、実際に費やした期間は、わずか6日間でしたから、かなり「突貫工事」に近い作業となりました。
幸い、調査会のホームページには、「特定失踪者」に関する概略や問題点の説明が判りやすく記載されており、基本的には、これを参照しつつ草稿を作成しました。また、2018年1月24日に須田洋平弁護士、大沢昭一・特定失踪者家族会前会長らのメンバーがオランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)に申し立てを行った際の文書も大変参考になり、一部はそのまま活用させて頂きました。この場を借りて御礼を申し上げます。
そして、何よりも、山本所長からは、調査会として国連の人権関連の委員会への「NGO文書」の提出という、従来、私たちが思い付きもしなかったアイディアを御提案頂いたことのみならず、実際の意見書作成作業に当たっては、連日、懇切丁寧かつきめ細かな「作戦指導」や具体的なアドヴァイスを頂きました。この場をお借りして、心よりの御礼を申し上げます。
また、特定失踪者全員の名簿(本年5月12日現在)を、常時、アップデートされ、今回の作業においても迅速に御提供頂きました、竹下珠路・特定失踪者家族会事務局長にも厚く御礼を申し上げます。
なお、上記の10月13日~14日の「対日審査会」には、国際歴史論戦研究所から、山本優美子所長はじめ何人かのメンバーが、オブザーバーとして参加する御予定との事です。山本所長の御厚意により、当日、会議場において、調査会として現在作成中の英語版の「チラシ」を配布して頂けることになりました。
このように、今回、国連の人権関連の委員会に対して、調査会としての初めての試みとして、特定失踪者問題に関する「NGO意見書」を提出したわけですが、近年における「ウイグル人権問題」の例を挙げるまでもなく、国際社会全体における当該問題についての認識を深め、国際世論を盛り上げていく、というアプローチも、時に有効な手段となり得るものかと思います。
もちろん、拉致被害者全員の救出は、言うまでもなく、我が国の全ての政治指導者や関係行政機関で行政に携わる人間、ひいては、私たち日本国民全員の重大な「責任」であることには変わりありません。
そのためには、「出来ることは、全てやってみる」という姿勢が大事かと、改めて思います。
(まもなく「あの日」から20年目の9月17日を迎えつつ、台北にて記す。)
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※事前申込み・参加費等についてはお問い合わせ先にご連絡下さい。
※記載されている参加者は調査会・特定失踪者家族会役員のみです。
★9月17日(土)10:30 拓殖大学国際講座「第一次小泉訪朝20年と拉致問題の真実」(拓殖大学海外事情研究所主催)
・拓殖大学文京キャンパス(茗荷谷駅徒歩5分 東京都文京区小日向3-4-14)
・代表荒木が参加
・問合せ:拓殖大学研究支援課(03-3947-7595)
★9月25日(日)13:00 「めぐみへの誓い」上映会 in宇部
・宇部市男女共同参画センターフォーユー(JR宇部線琴芝駅から徒歩6分 宇部市琴芝町1-2-5 0836-33-4004)
・代表荒木・幹事石原が参加
★10月2日(日)14:00 「ふるさとの風・しおかぜ共同公開収録in下関」(調査会・政府拉致問題対策本部事務局主催)
・宇部市男女共同参画センターフォーユー(JR宇部線琴芝駅から徒歩6分 宇部市琴芝町1-2-5 0836-33-4004)
・幹事長村尾・幹事石原が参加
★11月12日(土)北朝鮮人権映画祭プレイベント(同実行委員会主催)
・拓殖大学文京キャンパス(茗荷谷駅徒歩5分 東京都文京区小日向3-4-14)
・代表荒木が参加
★12月10日(土)~11日(日)北朝鮮人権映画祭(同実行委員会主催)
・オルビスホール(六甲ライナー アイランドセンター駅下車すぐ 神戸市東灘区向洋町中2-9-1)
・代表荒木・幹事三浦が参加
★12月22日(木)13:00 拉致問題を考える県民の集い(佐賀県・佐賀県教委・小城市・佐賀県拉致議連・救う会佐賀主催)
・小城市生涯学習センター「ドゥイング三日月」(大寺バス停徒歩9分・小城市三日月町長神田1845 0952-72-1616)
・代表荒木が参加
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