「さかなクン」に「さんをつけろ」という近頃の若者の日本語感覚の異常さと、それを認めたNHKのバカさ加減
NHKの広報局がツイッターで、絶滅種の魚「クニマス」の発見者を「さかなクン」と書いたことに対し、読者から「さんづけで呼べ」という苦情が殺到した、と「J-CASTニュース」(12月16日発信)が伝えていたが、〝さかなクンチ〟を本名で呼ぶときは、「宮澤正之さん」と呼べばいいのであって、そうでないときは「さかなクン」だけでいいのである。
「殿様」というニックネームの人がいるとして、これに「さん」をつけたり、「氏」をつけたりしたらおかしくなってしまうのと同様、「さなかクンさん」は日本語としておかしい。
先生にさんをつけてもいけない。「山田先生さん」というのは、かえって失礼になる。
「さかなクン」にはすでに「君」を連想させる「クン」という敬称がついている。したがって、さらに「さん」をつけると、日本語としておかしいだけでなく、敬称としても滑稽である。
「さかなクンちゃん」と呼ぶのもおかしい。
「アグネス・チャン」の例もある。親しみをこめたつもりで、「アグネス・チャンちゃん」と呼ぶのは日本語としておかしく、からかっているかのような印象を与えかねないので、「アグネス・チャンさん」と呼ぶのが普通。
そういうこともわからずに、文句をいう日本人(おそらく若者だろう)がいるということが、おそろしい。
J-CASTニュースには、「さんをつけろよ、デコ助野郎」「さかなクンさんは芸人じゃねーし」などというクレームの言葉が引用されている。
自分の知識のなさ、常識の欠如を棚にあげて、こういう下品な言葉づかいで、匿名で批判する非礼で最低な輩が増えている。
文句をつけたり、相手を名指しで批判したりする場合は、匿名ではなく、堂々と名乗って論を張るのが礼儀であり、責任というものである。
一方、NHKの広報局も、直ちに謝罪したとは情けない。日本語の放送にかかわる仕事をしていながら、どういう日本語のセンスをしているのか、と疑いたくもなろうというものだ。
(城島明彦)
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