中谷 宇吉郎 作 大阪人と科学精神読み手:成 文佳(2022年) |
今のことはよく知らないが、一昔前のいわゆる大阪商人は朝、人に会うと「おはようございます」の代りに「もうかりまっか」と言ったそうである。それには「いやあきまへんで」という受言葉がある。
東京の実業家の中には、この例をひいて大阪商人を軽べつする人がある。しかし私は、そういう大阪人をひどく尊敬している。というのは、われわれの仲間のうちで、朝、人に会った時に、最初に「実験は巧く行っていますか」と聞く人は、滅多にないからである。
戦争前の話であるが、日本の繊維工業が、ランカシャーを打倒した陰には、女工哀史もあるが、そればかりではない・・・