小川 未明 作 手風琴読み手:上田 あゆみ(2022年) |
秋風が吹きはじめると、高原の別荘にきていた都の人たちは、あわただしく逃げるように街へ帰ってゆきました。そのあたりには、もはや人影が見えなかったのであります。
ひとり、村をはなれて、山の小舎で寝起きをして、木をきり、炭をたいていた治助じいさんは自然をおそれる、街の人たちがなんとなくおかしかったのです。同じ人間でありながら、なぜそんなに寒い風がこわいのか。それよりも、どうして、この美しい景色が彼らの目にわからないのかと怪しまれたのでありました。
「これからわしの天地だ。」と、じいさんはほほえみました
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