片山 廣子 作 鷹の井戸読み手:アン荻野(2022年) |
今は世にないアイルランドの詩人イエーツが書いた舞踊劇の一つに「鷹の井戸」といふのがある。その鷹の井戸がこの世にあるとしたら、どの辺にあるのだらうか? 詩人の言葉を借りてみよう。
「はしばみの枝々うごき 日は西にしづむ
風よ 潮かぜよ 海かぜよ
いまは眠るべき時なるを
なにを求めてさまよひ歩く」
その西に沈む夕日も見られて、潮風に吹きさらされた小さい島である。岩と石の険しい道をのぼつて行くと、三本の榛の樹がどんぐりを落し枯葉をおとす井戸があつた・・・