小川 未明 作 南方物語読み手:石川 あけみ(2022年) |
一
北の方の町では、つばめが家の中に巣をつくることをいいことにしています。いつのころからともなく、つばめは、町の人々をおそれなくなりました。このりこうな鳥は、どの家が、朝早く起きて、戸を開けるか、またどの家には、どんな性質の人が住んでいるか、また、この家は、規律正しいかどうかということを、よく見ぬいていました。それでなければ、安心して、家の中に、巣はつくれなかったからです。また、大事な自分たちの子どもをも育てられなかったからです。
つばめのいいと思った家は、ほんとうにいい家であったから、巣をつくるのは、無理もなかったのでしたが、もう一つこれには、町の人が、なぜこんなにつばめを愛するかという話があります・・・