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宮沢 賢治

銀河鉄道の夜
三、家

読み手:北野 由美(2022年)

銀河鉄道の夜 三、家

著者:宮沢 賢治 読み手:北野 由美 時間:5分32秒

 ジョバンニが勢よく帰って来たのは、ある裏町の小さな家でした。その三つならんだ入口の一番左側には空箱に紫いろのケールやアスパラガスが植えてあって小さな二つの窓には日覆いが下りたままになっていました。
「お母さん。いま帰ったよ。工合悪くなかったの。」ジョバンニは靴をぬぎながら云いました。
「ああ、ジョバンニ、お仕事がひどかったろう。今日は涼しくてね。わたしはずうっと工合がいいよ。」
 ジョバンニは玄関を上って行きますとジョバンニのお母さんがすぐ入口の室に白い巾を被って寝んでいたのでした。ジョバンニは窓をあけました。
「お母さん。今日は角砂糖を買ってきたよ。牛乳に入れてあげようと思って。」
「ああ、お前さきにおあがり。あたしはまだほしくないんだから。」
「お母さん。姉さんはいつ帰ったの。」・・・

「青空文庫」には「銀河鉄道の夜」は4つのテキストが掲載されています。
本朗読は、底本「新編 銀河鉄道の夜」(新潮文庫)を使用していますが、一部原稿が欠落している部分は「銀河鉄道の夜」(岩波文庫)のテキストを使用しています。

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