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夏目 漱石 作
読み手:みきさん(2022年)
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大刀老人は亡妻の三回忌までにはきっと一基の石碑を立ててやろうと決心した。けれども倅の痩腕を便に、ようやく今日を過すよりほかには、一銭の貯蓄もできかねて、また春になった。あれの命日も三月八日だがなと、訴えるような顔をして、倅に云うと、はあ、そうでしたっけと答えたぎりである。大刀老人は、とうとう先祖伝来の大切な一幅を売払って、金の工面をしようときめた・・・