小川 未明 作 ものぐさじじいの来世読み手:堀口 直子(2021年) |
あるところに、ものぐさじいさんが住んでいました。じいさんは、若いときから、手足を動かしたり、人にあって話をしたりすることを、ひじょうにものぐさがって、いつもじっとしていることが好きでありました。
花が咲いても、どこかへ見物に出かけるでなし、お祭りがあっても、わざわざいってみるという気持ちにもならず、一日、じっとして背中を円くしてすわっていました。
年をとってからは、ますますものぐさになって、倒れている火ばしを直すのもめんどうがったのであります。けれど、おじいさんは徳人とみえて、みんなから愛されていました。また暮らしにも困らずに、終日、日のよく当たるところに出て、ひなたぼっこをしていました。
おじいさんは、あまり口数はきかなかったけれど、それは根がいい人でありました・・・