閉じる

閉じる

小林 多喜二

北海道の「俊寛」

読み手:福井 慎二(2021年)

北海道の「俊寛」

著者:小林 多喜二 読み手:福井 慎二 時間:5分28秒

 十一月の半ば過ぎると、もう北海道には雪が降る。(私は北海道にいる。)乾いた、細かい、ギリギリと寒い雪だ。――チヤツプリンの「黄金狂時代」を見た人は、あのアラスカの大吹雪を思い出すことが出来る、あれとそのまゝが北海道の冬である。北海道へ「出稼」に来た人達は冬になると、「内地」の正月に間に合うように帰つて行く。しかし帰ろうにも、帰れない人達は、北海道で「越年(おつねん)」しなければならなくなるわけである。冬になると、北海道の奥地にいる労働者は島流しにされた俊寛のように、せめて内地の陸の見えるところへまでゞも行きたいと、海のある小樽、函館へ出てくるのだ・・・

Copyright© 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.