新美 南吉 作 お母さん達読み手:中田 真由美(2021年) |
お母さんになつた小鳥が木の上の巣の中で卵をあたためてをりました。するとまた今日も牝牛がその下へやつて來ました。
「小鳥さん、今日は。」と牝牛がいひました。
「まだ卵は孵りませんか。」
「まだ孵りません。」と小鳥は答へていひました。
「あなたの赤ちやんはまだですか。」
「だん/\お腹の中で大きくなつてまゐります。もう十日もしたら生れませう。」と牝牛はいひました。
それから小鳥と牝牛はいつものやうにまだ生れてゐない自分たちの赤ん坊のことで、自慢をしあひました。
「牝牛さん、聞いて下さい。私の可愛いい坊や達はね。きつと美しい瑠璃色をしてゐて、薔薇の花みたいによい匂がしますよ。そして鈴をふるやうなよい聲でちる/\と歌ひますよ。」・・・