宮沢 賢治 作 ひのきとひなげし読み手:佐久間 史江(2021年) |
ひなげしはみんなまっ赤に燃えあがり、めいめい風にぐらぐらゆれて、息もつけないようでした。そのひなげしのうしろの方で、やっぱり風に髪もからだも、いちめんもまれて立ちながら若いひのきが云いました。
「おまえたちはみんなまっ赤な帆船でね、いまがあらしのとこなんだ」
「いやあだ、あたしら、そんな帆船やなんかじゃないわ。せだけ高くてばかあなひのき。」ひなげしどもは、みんないっしょに云いました。
「そして向うに居るのはな、もうみがきたて燃えたての銅づくりのいきものなんだ。」・・・