宮沢 賢治 作 めくらぶどうと虹読み手:齋藤 こまり(2021年) |
城あとのおおばこの実は結び、赤つめ草の花は枯れて焦茶色になり、畑の粟は刈られました。
「刈られたぞ」と言いながら一ぺんちょっと顔を出した野鼠がまた急いで穴へひっこみました。
崖やほりには、まばゆい銀のすすきの穂が、いちめん風に波立っています。
その城あとのまん中に、小さな四っ角山があって、上のやぶには、めくらぶどうの実が虹のように熟れていました。
さて、かすかなかすかな日照り雨が降りましたので、草はきらきら光り、向こうの山は暗くなりました。
そのかすかなかすかな日照り雨が霽れましたので、草はきらきら光り、向こうの山は明るくなって、たいへんまぶしそうに笑っています・・・