原 民喜 作 誕生日読み手:堀口 直子(2021年) |
雄二の誕生日が近づいて来ました。学校では、恰度その日、遠足があることになっていました。いい、お天気だといいがな、と雄二は一週間も前から、その日のことが心配でした。というのが、この頃、毎日あんまりいいお天気ばかりつづいていたからです。このまま、ずっとお天気がつづくかしら、と思って雄二は、校庭の隅のポプラの樹の方を眺めました。青い空に黄金色の葉はくっきりと浮いていて、そのポプラの枝の隙間には澄みきったものがあります。その隙間からは、遠い遙かなところまで見えて来そうな気がするのでした。
雄二は自分が産れた日は、どんな、お天気だったのかしら、としきりに考えてみました・・・