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夏目 漱石 作
読み手:みきさん(2021年)
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風が高い建物に当って、思うごとく真直に抜けられないので、急に稲妻に折れて、頭の上から、斜に舗石まで吹きおろして来る。自分は歩きながら被っていた山高帽を右の手で抑えた。前に客待の御者が一人いる。御者台から、この有様を眺めていたと見えて、自分が帽子から手を離して、姿勢を正すや否や、人指指を竪に立てた。乗らないかと云う符徴である。自分は乗らなかった・・・