小泉 八雲 作 林田 清明 訳 橋の上で読み手:福井 慎二(2021年) |
お抱え車夫の平七が、熊本の町の近郊にある有名なお寺院へ連れて行ってくれた。
白川に架かっている、弓のように反った、由緒ありそうな橋まで来たとき、私は平七に橋の上で停まるように言った。この辺りの景色をしばし眺めたいと思ったのである。夏空の下で、電気のような白日の光に溢れんばかりに浸されて、大地の色彩は、ほとんどこの世のものとは思われないほど美しく輝いていた。足下には、浅い川が灰色の石の河床の上を、さざめきながら、また音を立てて流れていて、さまざまな濃淡の新緑の影を映していた・・・