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河井 寛次郎

雑草雑語

読み手:宮澤 賢吉(2021年)

雑草雑語

著者:河井 寛次郎 読み手:宮澤 賢吉 時間:13分5秒

 罌粟の花は毒薬の原料にされてから畑から追払はれてしまつた。あんな素晴らしい花や実を取られたのは子供達には何んといふ不幸なことなのだらう。毒薬なんかにはしないから畑へ返して貰ひたい。
 柿は驚くべき誠実な彫刻家だ。自分を挙げて丹念に刻つた同じ花を惜げもなく地べたへ一面にばらまいてしまふ。こんな仇花にさへ一様に精魂を尽してゐる柿。
 矢車草は子女の着物の柄に使はれて子供達をも美に染めた。着物は洗はれて柄は消えたが子供達の畑のこの花は今もなほ美事に咲いてゐる・・・

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