小川 未明 作 学校の桜の木読み手:中田 真由美(2021年) |
ある、小学校の運動場に、一本の大きな桜の木がありました。枝を四方に拡げて、夏になると、その木の下は、日蔭ができて、涼しかったのです。
子供たちは、たくさんその木の下に集まりました。中には、登って、せみを捕ろうとするものがあれば、また、赤くなったさくらんぼを取ろうとするものもありました。
桜の木は、ちょうどお母さんのように、子供たちのするままに委していました。そして、子供たちの、楽しそうに遊ぶようすを見下ろしながら、いつも、にこにこと笑っているように見受けられました。
「太い木だなあ。」といって、無邪気な子供たちは、小さな両手を開いて、太い幹に抱きついて、見上げるものもあれば、・・・