小川 未明 作 赤いえり巻き読み手:まあき、マナミン、ジョン酒巻(2021年) |
お花が、東京へ奉公にくるときに、姉さんはなにを妹に買ってやろうかと考えました。二人は遠く離れてしまわなければなりません。お花は、まだ見ないにぎやかな、美しいものや、楽しいことのたくさんある都へゆくことは、なんとなくうれしかったけれど、子供の時分から、親しんだ、林や、野や、自分の村に別れることが悲しかったのです。
姉は、かつて、自分も一度、都へいってみたいと心にあこがれたことがありました。しかし、ついに出る機会がなくてすぎてしまいました。そして、もう奉公に出るには、あまり年をとってしまったので、自分は、村に残って圃に出て、くわをとって働くことにいたしました。
「なにを妹に、買ってやったらいいだろう。」
姉は、ひとりで働きながら思ったのです・・・