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オー・ヘンリー  山本 ゆうじ

魔女のパン

読み手:野見山 丹李(2021年)

魔女のパン

著者:オー・ヘンリー/山本 ゆうじ 訳 読み手:野見山 丹李 時間:12分54秒

  ミス・マーサ・ミーチャムは、街角の小さなパン屋をやっている。とんとんとんと、階段を三段上がって扉を開けると、ベルがちりんちりんと鳴る、そんな店だ。
 ミス・マーサは四十歳で、通帳には二千ドルの預金があり、差し歯を二つと、いわゆる同情心を持ち合わせていた。もっと結婚運に恵まれない女性でさえ結婚していく中で、彼女はずっと独身でいた。
 ミス・マーサは、このところ、週に二、三度店に来る、ある客に興味をひかれていた。眼鏡をかけた中年の男で、とび色のあごひげは、先まで丁寧に刈り込まれている。
 言葉には強いドイツ語なまりがあった。ところどころすり切れた服には、つくろいがしてあり、しわが寄って、だぶだぶのところもある。けれど身ぎれいにしていて、とても礼儀正しかった・・・

・この作品は青空文庫に提供されています。

◇翻訳者:山本 ゆうじ
・本作品の翻訳上の著作権は翻訳者に属します。
・この翻訳に関するお問合せは訳者本人までお願いします。

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