夢野 久作 作 青水仙、赤水仙読み手:野見山 丹李(2020年) |
うた子さんは友達に教わって、水仙の根を切り割って、赤い絵の具と青い絵の具を入れて、お庭の隅に埋めておきました。早く芽が出て、赤と青の水仙の花が咲けばいいと、毎日水をやっておりましたが、いつまでも芽が出ません。
ある日、学校から帰ってすぐにお庭に来てみると、大変です。お父様がお庭中をすっかり掘り返して、畠にしておいでになります。そうしてうた子さんを見ると、
「やあ、うた子か。お父さんはうっかりして悪い事をした。お前の大切な水仙を二つとも鍬で半分に切ってしまったから、裏の草原へ棄ててしまった。勘弁してくれ。その代り、今度水仙の花が咲く頃になったら、大きな支那水仙を買ってやるから」・・・